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18 マリアとリイナ
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新しい家族が増えて一週間が過ぎた。
結論から言うと、これは俺にとっても非常に助かる話になった。
というのも、引き取られてきた次の日から店に立って働き始めたのだ。
働いてくれるにしても、もっと落ち着いてからでいいよと言ったのだが、忙しくしていた方が気が紛れていいと言われれば、それ以上は何も言えなくなってしまった。
で、実際に働いてもらったら、これがまあ助かること、助かること。
姉のマリアちゃん十四才は愛くるしい笑顔と、燕を思わせる軽やかな立ち居振舞いで、あっという間にホールの人気者になった。これはちょっとカレンさんが嫉妬して「どうせわたしは可愛いげがないですよ」と拗ねてしまうくらいだった。
そして、妹のリイナちゃん十二才は、この年にして料理の才能を開花させていた。手順について説明すれば、説明したこと以上を理解し、それを実践してみせる。既に下ごしらえは安心して任せられるレベルだ。
この一週間で、二人ともウチの店に欠かせない戦力になってくれていた。
お客さんも二人の境遇は知っているので、優しく接してくれている。まだまだ元通りの笑顔というわけにはいかないんだろうが、少しずつ笑顔が増えているのはいい傾向だと思う。
最後のお客さんを送り出して、営業終了。今日もよく働いた。
「お疲れ様。夕食にしようか」
「はーい」
今日の賄いはハンバーグのテリヤキソースがけ。
大体リクエストで決まる賄いだが、三人ともハンバーグが大好物なので、二回に一回はハンバーグになる。
「ああ、美味しい……」
一口食べたマリアちゃんが、ほうっと息をつく。
まだ心からの笑顔を取り戻せてはいないが、ふとした時にほうっと表情が緩む時がある。俺の料理が笑顔を取り戻す一助になればいいんだけど。
リイナちゃんの方が割りきれているように見えるが、心の奥底のことはわからない。我慢しているだけかもしれないし、それがふとした拍子に決壊してしまうことがあるかもしれない。普段から気にかけていないといざそうなってしまった時に対処できなくなる、ということはカレンさんとも話し合っている。
「どうしたのかしら?」
「うん……」
いつもは旺盛な食欲を見せるリイナちゃんが、今日はハンバーグを一口食べたところで、難しい顔してフリーズしてる。
「味はおかしくないよな……」
「うん。いつも通り美味しいよ」
「リイナ、リイナ、どうしたの?」
マリアちゃんの呼びかけで、やっと再起動した。
「ご、ごめんなさい」
「どうした、不味かったか?」
リイナちゃんはおったまげた顔で首を振った。
「そんなことあるわけないです。逆です。何をどうしたらこんなに美味しくなるんだろうって思ったら、考えが止まらなくなっちゃって」
「…この年にしてそうくるか…料理バカの素養は十分だな」
「バカはひどいですぅ」
唇を尖らせたリイナちゃんだったが、続く俺の一言で、ころっと機嫌を直した。
「じゃあ本格的に修行するか?」
「教えてくれるんですか!?」
「その気があるならな」
「お願いします!」
こうして俺は異世界で弟子を持つことになった。
結論から言うと、これは俺にとっても非常に助かる話になった。
というのも、引き取られてきた次の日から店に立って働き始めたのだ。
働いてくれるにしても、もっと落ち着いてからでいいよと言ったのだが、忙しくしていた方が気が紛れていいと言われれば、それ以上は何も言えなくなってしまった。
で、実際に働いてもらったら、これがまあ助かること、助かること。
姉のマリアちゃん十四才は愛くるしい笑顔と、燕を思わせる軽やかな立ち居振舞いで、あっという間にホールの人気者になった。これはちょっとカレンさんが嫉妬して「どうせわたしは可愛いげがないですよ」と拗ねてしまうくらいだった。
そして、妹のリイナちゃん十二才は、この年にして料理の才能を開花させていた。手順について説明すれば、説明したこと以上を理解し、それを実践してみせる。既に下ごしらえは安心して任せられるレベルだ。
この一週間で、二人ともウチの店に欠かせない戦力になってくれていた。
お客さんも二人の境遇は知っているので、優しく接してくれている。まだまだ元通りの笑顔というわけにはいかないんだろうが、少しずつ笑顔が増えているのはいい傾向だと思う。
最後のお客さんを送り出して、営業終了。今日もよく働いた。
「お疲れ様。夕食にしようか」
「はーい」
今日の賄いはハンバーグのテリヤキソースがけ。
大体リクエストで決まる賄いだが、三人ともハンバーグが大好物なので、二回に一回はハンバーグになる。
「ああ、美味しい……」
一口食べたマリアちゃんが、ほうっと息をつく。
まだ心からの笑顔を取り戻せてはいないが、ふとした時にほうっと表情が緩む時がある。俺の料理が笑顔を取り戻す一助になればいいんだけど。
リイナちゃんの方が割りきれているように見えるが、心の奥底のことはわからない。我慢しているだけかもしれないし、それがふとした拍子に決壊してしまうことがあるかもしれない。普段から気にかけていないといざそうなってしまった時に対処できなくなる、ということはカレンさんとも話し合っている。
「どうしたのかしら?」
「うん……」
いつもは旺盛な食欲を見せるリイナちゃんが、今日はハンバーグを一口食べたところで、難しい顔してフリーズしてる。
「味はおかしくないよな……」
「うん。いつも通り美味しいよ」
「リイナ、リイナ、どうしたの?」
マリアちゃんの呼びかけで、やっと再起動した。
「ご、ごめんなさい」
「どうした、不味かったか?」
リイナちゃんはおったまげた顔で首を振った。
「そんなことあるわけないです。逆です。何をどうしたらこんなに美味しくなるんだろうって思ったら、考えが止まらなくなっちゃって」
「…この年にしてそうくるか…料理バカの素養は十分だな」
「バカはひどいですぅ」
唇を尖らせたリイナちゃんだったが、続く俺の一言で、ころっと機嫌を直した。
「じゃあ本格的に修行するか?」
「教えてくれるんですか!?」
「その気があるならな」
「お願いします!」
こうして俺は異世界で弟子を持つことになった。
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