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5 弟子入り志願
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砂ぼこりが晴れた後、そこに広がるのは驚愕の光景だった。
「ド、ドラゴン!?」
偶々上空を遊泳中だったのだろう。そこへインフェルノの直撃を食らったと。何とも運の悪いドラゴンだ。
それにしても、割りと大きめサイズのドラゴンを一撃で仕留めるとは、中々の破壊力だ。やはり俺の目に狂いはなかった。
そんなことを考えていると、校舎の方から人がわらわらとやってきた。その中から声をかけてきたのは、先ほど授業を見ていた女性教師だった。
「ミ、ミサキさん、無事なの?」
この娘ミサキっていうのか。そう言えばまだ自己紹介もしてなかったな。麒麟児と呼べる才能を前にして、俺も少々興奮していたようだ。
「こ、これ、あなたが……?」
訊かれたミサキは困ったように俺を見上げてきた。
「ええ、間違いないです。このドラゴンを仕留めたのはこの娘のインフェルノですよ」
「イ、インフェルノ……」
凶悪極まりない魔法名に教師陣一同絶句する。
「でもどうしてミサキさんがインフェルノなんて使えるの? あなた、魔力はほとんどないはずじゃーー」
「それは違う」
そこははっきり言ってやった。
「はっきり言って、この娘の魔力量は英雄クラスだ。初級魔法に全力突っ込ませるなんて、拳銃でバズーカの弾を発射しようとするようなもんだ。拳銃の方が壊れるに決まってる」
遠回しに無能と言われた女性教師は見るからにへこんで引き下がった。
代わりに前に出てきたのは、偉そうな小太りのおっさんだった。
「いやいやいや、それにしても素晴らしい。これから我が学園は特待生として君を遇しようではないか」
言われたミサキは喜ぶどころか警戒感を露にして、俺の背中に逃げ込んだ。
「どうした?」
「嫌です。あたし、ここには居たくないです」
小声ではあったが、ミサキはきっぱり言い切った。
「そんなこと言ってどうする気なの?」
ミサキはすがるような目で俺を見つめてきた。
「あたしを弟子にしてください!」
「ちょーーミサキさん、何言ってるの!?」
周りの教師たちが驚いた声を上げる。
「あたし、このお兄さんに魔法を教えてもらいたいです!」
おお、今のは何気にポイント高いぞ。気を使った風ではない、ナチュラルなお兄さん呼びは、俺のように微妙なお年頃の男には嬉しいものだ。まあ、せめて独身のうちはお兄さんと呼ばれたいものだな。
閑話休題。
この娘なら弟子として不足はない。ってか、自分の手で育ててみたい。
「親御さんの承諾は得られるのか?」
「両親はいません。親戚の間で厄介者になってます」
「そうか」
それならばその親戚とやらに筋を通せば大丈夫そうだな。
「待ってください。どこの誰とも知らない人に生徒を連れて行かせるわけにはいきません」
「本人が望んでいるが? それに、親戚の許可はちゃんと取るぞ」
こいつらの魂胆は見え透いている。落ちこぼれだと思っていたのが金の卵だと知って、自分たちの手柄として育てたくなったんだろう。
「あんたたちよりよっぽど上手くこの娘は育ててみせるよ」
「素人に何ができるとーー」
「俺がオースチン・ヘイウッドと知っての台詞か、それは」
こういった時に俺の名前はハッタリが効く。
「オ、オースチン・ヘイウッド……」
「伝説の大魔導師……」
「これ以上文句はねえな」
一睨みすると、大人たちはすごすごと引き下がった。
「よし、ミサキ、最初にいいものを教えてやる。今から俺が言う通りに唱えてみろーー万物の収納庫よ、ここに開け。アイテムボックス」
「万物の収納庫よ、ここに開け。アイテムボックス」
ミサキが唱えると、ドラゴンの遺骸がアイテムボックスに収納され、跡形もなくなった。一瞬の早業に周囲は度肝を抜かれたようだ。
それにしても、やはりミサキの潜在能力は飛び抜けている。アイテムボックスのような大技は呪文を教えただけで使えるようにはならない。
この先、楽しみしかないな。
「ド、ドラゴン!?」
偶々上空を遊泳中だったのだろう。そこへインフェルノの直撃を食らったと。何とも運の悪いドラゴンだ。
それにしても、割りと大きめサイズのドラゴンを一撃で仕留めるとは、中々の破壊力だ。やはり俺の目に狂いはなかった。
そんなことを考えていると、校舎の方から人がわらわらとやってきた。その中から声をかけてきたのは、先ほど授業を見ていた女性教師だった。
「ミ、ミサキさん、無事なの?」
この娘ミサキっていうのか。そう言えばまだ自己紹介もしてなかったな。麒麟児と呼べる才能を前にして、俺も少々興奮していたようだ。
「こ、これ、あなたが……?」
訊かれたミサキは困ったように俺を見上げてきた。
「ええ、間違いないです。このドラゴンを仕留めたのはこの娘のインフェルノですよ」
「イ、インフェルノ……」
凶悪極まりない魔法名に教師陣一同絶句する。
「でもどうしてミサキさんがインフェルノなんて使えるの? あなた、魔力はほとんどないはずじゃーー」
「それは違う」
そこははっきり言ってやった。
「はっきり言って、この娘の魔力量は英雄クラスだ。初級魔法に全力突っ込ませるなんて、拳銃でバズーカの弾を発射しようとするようなもんだ。拳銃の方が壊れるに決まってる」
遠回しに無能と言われた女性教師は見るからにへこんで引き下がった。
代わりに前に出てきたのは、偉そうな小太りのおっさんだった。
「いやいやいや、それにしても素晴らしい。これから我が学園は特待生として君を遇しようではないか」
言われたミサキは喜ぶどころか警戒感を露にして、俺の背中に逃げ込んだ。
「どうした?」
「嫌です。あたし、ここには居たくないです」
小声ではあったが、ミサキはきっぱり言い切った。
「そんなこと言ってどうする気なの?」
ミサキはすがるような目で俺を見つめてきた。
「あたしを弟子にしてください!」
「ちょーーミサキさん、何言ってるの!?」
周りの教師たちが驚いた声を上げる。
「あたし、このお兄さんに魔法を教えてもらいたいです!」
おお、今のは何気にポイント高いぞ。気を使った風ではない、ナチュラルなお兄さん呼びは、俺のように微妙なお年頃の男には嬉しいものだ。まあ、せめて独身のうちはお兄さんと呼ばれたいものだな。
閑話休題。
この娘なら弟子として不足はない。ってか、自分の手で育ててみたい。
「親御さんの承諾は得られるのか?」
「両親はいません。親戚の間で厄介者になってます」
「そうか」
それならばその親戚とやらに筋を通せば大丈夫そうだな。
「待ってください。どこの誰とも知らない人に生徒を連れて行かせるわけにはいきません」
「本人が望んでいるが? それに、親戚の許可はちゃんと取るぞ」
こいつらの魂胆は見え透いている。落ちこぼれだと思っていたのが金の卵だと知って、自分たちの手柄として育てたくなったんだろう。
「あんたたちよりよっぽど上手くこの娘は育ててみせるよ」
「素人に何ができるとーー」
「俺がオースチン・ヘイウッドと知っての台詞か、それは」
こういった時に俺の名前はハッタリが効く。
「オ、オースチン・ヘイウッド……」
「伝説の大魔導師……」
「これ以上文句はねえな」
一睨みすると、大人たちはすごすごと引き下がった。
「よし、ミサキ、最初にいいものを教えてやる。今から俺が言う通りに唱えてみろーー万物の収納庫よ、ここに開け。アイテムボックス」
「万物の収納庫よ、ここに開け。アイテムボックス」
ミサキが唱えると、ドラゴンの遺骸がアイテムボックスに収納され、跡形もなくなった。一瞬の早業に周囲は度肝を抜かれたようだ。
それにしても、やはりミサキの潜在能力は飛び抜けている。アイテムボックスのような大技は呪文を教えただけで使えるようにはならない。
この先、楽しみしかないな。
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