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59 運がいいのか、悪いのか

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 これは詰んだかな……

 打つ手を何一つ思いつけない。ここから逆転があるとは思えなかった。

「だからって抵抗はやめないけどな」

 足元の石を拾い上げたケントは、サイクロプスロードの顔めがけて全力投球した。

 これが物の見事にサイクロプスロードのひとつ目を直撃した。

「ーーーーー!」

 三半規管を狂わせる、超音波めいた咆哮が耳をつんざく。

 堪らず膝をついてしまう。

 苦痛にもがくサイクロプスロードが力任せの鉄槌を地面に振り下ろす、

 ボコッと地面が陥没し、そこを起点に幾筋もの地割れが走る。

「嘘っ!?」

 またかよっ、と思う間もなく、ケントは再びの地割れに呑み込まれていった。

「ケントっ!」

 幸いと言うべきか、フローリアのところまでは崩れず、難を逃れた。反射的にケントを追って地割れに飛び込んでいこうとしたのだが、落ちてくる岩に行く手を阻まれ、断念せざるを得なかった。

 崩落が収まった後、ケントが落ちた先は見通すことができなかった。

「ケントぉっーー!」

 当然のように応えはなかった。



「…痛っ……」

 意識を取り戻したケントは、全身の痛みに苛まれた。

 痛まない箇所がないくらい、全身くまなく怪我を負ってしまったようだ。

「…それでも生きてるだけでめっけもんか」

 二度の崩落に巻き込まれて生きていられるのは、運かそれとも頑丈さのおかげなのか。

「…運が良ければ二回も落ちたりしねえか」

 苦笑いしかけたところで、ケントは傍らに転がったサイクロプスロードの屍に気づいた。こちらはケントと違って運が悪かったようだ。頑丈さで言えば、間違いなくサイクロプスロードの方が上のはずだ。

「…やっぱり運か……」

 そこでふと気づく。

「フローリアは巻き込まれなかったみたいだな」

 周りを捜しても、それらしき姿は見つからない。とりあえずその点だけは胸を撫で下ろすケントだった。

 そこでもうひとつ妙なことに気づく。

「…明るい?」

 そう。フローリアの姿を捜すことができるほど周りが明るかったのだ。地の底に落ちたはずなのに。

「どこかに出口でもあるのか?」

 希望を見つけたケントは、少し元気を取り戻した。明かりの源を探して歩き出す。

 足場はかなり悪く、歩くスピードは上がらなかったが、ケントは休むことなく歩き続けた。

「地下深くだってのに、どこまで広がってるんだ?」

 そんな疑問が浮かんできた頃、ケントの進行方向に見える明かりが強くなってきた。

「あそこか」

 自然と足が早まる。

 近づくにつれ、明るさが増してくる。

 最後の角を曲がったケントの目に映ったのは、意外な光景だった。

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