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3 母乳スキル

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「美南ちゃんのスキルは何だった?」

「……」

 由真に訊かれて、美南は言葉に詰まった。これを正直に告げるのは危険だと本能が警告を発していたのだ。

 できれはば隠しておきたいところだったのだが、【鑑定】持ちの由真に対してそれは不可能だった。

「どれどれ……ん?   何これ…【母乳】……?」

 思いっきり眉根を寄せた由真は、美南をマジマジと見つめた。

「…美南ちゃん、何これ?」

「あたしに訊かないで」

 美南自身が一番困惑しているのだ。答えられるはずがない。

「それもそうよねーーちょっと鑑定してみていい?」

「う、うん……」

 不安はあったものの、得体が知れないままというのも嫌だったので、美南は由真の申し出を受け入れた。

「どれどれーーえーっと、【母乳】スキル。超レアスキル。このスキルを持つ者の乳は最上級ポーションよりも遥かに高い治癒力を有する。条件が揃えば、部位欠損の治癒も可能ーーって、ムチャクチャすごいじゃない!?」

 ブッ飛んだ内容に、由真の声が裏返った。

「そうなの?」

 当の本人はまったく理解できていない。

「超レアスキルって出てるもん。間違いないわよ」

「そうなんだ……」

「反応薄いわよ」

「正直、よくわからないわ」

「駄目よ、それじゃ。超レアスキルなんだから、どういう使い方ができるのかとかしっかり把握しとかないと」

 そう言って、由真は更に深く鑑定をかける。

「ビンなどに移して摂取も可能だが、直接経口摂取するのが一番効果的」

 美南の眉が嫌あな感じに寄る。

「…ねえ、それって……」

「おっぱいを吸わせるってことよね」

「嫌よ、そんなの!」

 たまらず美南は悲鳴をあげた。

「何でそんなことしなくちゃいけないの!?」

「美南ちゃん、落ち着いて」

 由真にたしなめられたが、美南は理不尽感を拭うことができなかった。

「あたし、絶対やらないからね」

「…あー、うん。さすがにこれはねぇ……」

 苦笑と同情がない交ぜになった顔で由真は言った。

「とりあえず美南ちゃんのスキルはあまり大っぴらにしない方がいいかもね。訊かれたら適当に答えとくようにしましょ」

「うん……」

 とは言え、いつまでもごまかせるものでもないだろう。何かしらの活用法を早急に考えるべきだ、というのは美南にもわかった。

「…ホントに何なのよ…【母乳】スキルって……」

 キレるべきか泣くべきか、複雑な美南であった。

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