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5 神様とのやり取り
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しばらく口を開く者はいなかった。
誰もが混乱の極みにあった。目の前で起こったことなのに、理解がどうしても追いつかない。
「…みんな、死んじゃったの……?」
呆然とした口調と表情で美南が呟いた。
「それはわからないな。彼らは、自ら望んで元の世界に帰っただけだから」
薄笑いを浮かべた神様は、軽い口調で言った。
「そんなっーー」
反射的に詰め寄ろうとした美南は、一歩を踏み出す寸前に後ろから抱きすくめられ、おまけに口までふさがれた。
「!?」
「今は騒いじゃダメだ」
耳許で鋭く言われ、美南は動きを止めた。
青木くん!?
またしても青木が美南を制してくれたのだ。
「その娘は何か言いたいことがあるのかな?」
「きっと命を救ってもらったお礼を言いたいんだと思いますよ」
神様の視線を受けても、青木が怯むことはなかった。言葉は丁寧だったが、口調は不敵なものだった。
返答を受け、神様は面白そうに笑った。
「今回はそういうことにしておこうか」
「ありがとうございます。命を救ってもらったことも含めて」
「それは気にしなくていいよ。こちらとしても、君たちにやってもらいたいことがあって呼んだわけだからね」
「それは、異世界を救うため、ってことでいいんですか?」
「そんなに大袈裟なことじゃないよ。ただ、今魔族が幅を利かせていてね。その調子の乗り方が気に入らないからお灸を据えてやろうってことさ」
この人ホントに神様か?
メンタルが木村あたりと大差ないように思えてならない。
結構な不安を感じながら、青木はできるだけ情報を引き出すために会話を続ける。
「そうは言っても、僕らがやるべきことは魔王を倒すってことになるんですよね」
「まあ、そういうことになるかな」
「わかりました。微力ですが、全力を尽くしたいと思います」
「青木くん!?」
さっさと結論を出してしまった青木に、他の面子が驚きの声をあげる。
「ひとつお訊きしたいんですが、よろしいでしょうか?」
「なんだい?」
神様は機嫌よく質問を許した。
「僕らが首尾よく魔王を倒したとして、その後はどうなってしまうんですか?」
その質問に、神様はニヤリと唇を歪めた。
「元の世界に戻りたいかい?」
神様の意地悪な質問返しに、抱きしめられたままの美南は息を呑んだ。
ここで下手な答え方をしたら、青木までが死んでしまうことになりかねない。
だが、青木にその心配は無用だった。
「帰りたいですよ。でも、それは使命を果たした後のことです。先ほど僕は全力を尽くすと言いました。その言葉を違えるつもりはありません」
それを聞いた神様は、大きく頷いた。
「君は賢いなーーいいだろう。考えておくとしよう」
「ありがとうございます」
「ところで、いつまでその娘を抱いているんだ? だいぶ困っているようだぞ」
「え? あ、ごめん、栗原さん」
慌てて青木は美南を解放した。神様とのやり取りに必死過ぎて、わかっていなかったのだ。
「ごめん! 本当にごめん。悪気があったわけじゃないんだ」
「そんなに必死にならなくても大丈夫だよ。青木くんがそんな人じゃないのはわかってるから。それに、命の恩人なわけだし」
あの時青木が止めてくれていなければ、自分は元の世界に戻されて命を落としていただろう。それくらいのことは美南にもわかっていた。
「だから、ありがとう、青木くん」
「あ、う、うん」
神様とのやり取りとは真逆の自信なさそうな表情で、青木は頷いた。
「よければ転送するぞ」
神様が言い、誰も返事をしないうちに、一行は眩い光に包まれた。
誰もが混乱の極みにあった。目の前で起こったことなのに、理解がどうしても追いつかない。
「…みんな、死んじゃったの……?」
呆然とした口調と表情で美南が呟いた。
「それはわからないな。彼らは、自ら望んで元の世界に帰っただけだから」
薄笑いを浮かべた神様は、軽い口調で言った。
「そんなっーー」
反射的に詰め寄ろうとした美南は、一歩を踏み出す寸前に後ろから抱きすくめられ、おまけに口までふさがれた。
「!?」
「今は騒いじゃダメだ」
耳許で鋭く言われ、美南は動きを止めた。
青木くん!?
またしても青木が美南を制してくれたのだ。
「その娘は何か言いたいことがあるのかな?」
「きっと命を救ってもらったお礼を言いたいんだと思いますよ」
神様の視線を受けても、青木が怯むことはなかった。言葉は丁寧だったが、口調は不敵なものだった。
返答を受け、神様は面白そうに笑った。
「今回はそういうことにしておこうか」
「ありがとうございます。命を救ってもらったことも含めて」
「それは気にしなくていいよ。こちらとしても、君たちにやってもらいたいことがあって呼んだわけだからね」
「それは、異世界を救うため、ってことでいいんですか?」
「そんなに大袈裟なことじゃないよ。ただ、今魔族が幅を利かせていてね。その調子の乗り方が気に入らないからお灸を据えてやろうってことさ」
この人ホントに神様か?
メンタルが木村あたりと大差ないように思えてならない。
結構な不安を感じながら、青木はできるだけ情報を引き出すために会話を続ける。
「そうは言っても、僕らがやるべきことは魔王を倒すってことになるんですよね」
「まあ、そういうことになるかな」
「わかりました。微力ですが、全力を尽くしたいと思います」
「青木くん!?」
さっさと結論を出してしまった青木に、他の面子が驚きの声をあげる。
「ひとつお訊きしたいんですが、よろしいでしょうか?」
「なんだい?」
神様は機嫌よく質問を許した。
「僕らが首尾よく魔王を倒したとして、その後はどうなってしまうんですか?」
その質問に、神様はニヤリと唇を歪めた。
「元の世界に戻りたいかい?」
神様の意地悪な質問返しに、抱きしめられたままの美南は息を呑んだ。
ここで下手な答え方をしたら、青木までが死んでしまうことになりかねない。
だが、青木にその心配は無用だった。
「帰りたいですよ。でも、それは使命を果たした後のことです。先ほど僕は全力を尽くすと言いました。その言葉を違えるつもりはありません」
それを聞いた神様は、大きく頷いた。
「君は賢いなーーいいだろう。考えておくとしよう」
「ありがとうございます」
「ところで、いつまでその娘を抱いているんだ? だいぶ困っているようだぞ」
「え? あ、ごめん、栗原さん」
慌てて青木は美南を解放した。神様とのやり取りに必死過ぎて、わかっていなかったのだ。
「ごめん! 本当にごめん。悪気があったわけじゃないんだ」
「そんなに必死にならなくても大丈夫だよ。青木くんがそんな人じゃないのはわかってるから。それに、命の恩人なわけだし」
あの時青木が止めてくれていなければ、自分は元の世界に戻されて命を落としていただろう。それくらいのことは美南にもわかっていた。
「だから、ありがとう、青木くん」
「あ、う、うん」
神様とのやり取りとは真逆の自信なさそうな表情で、青木は頷いた。
「よければ転送するぞ」
神様が言い、誰も返事をしないうちに、一行は眩い光に包まれた。
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