2 / 24
第1話:役立たずの烙印
「カイ、お前はもう用済みだ。このパーティから追放する」
冷たく、一切の情を含まない声が、薄暗い洞窟に響き渡った。
声の主は、まばゆい聖剣を腰に下げた勇者アレク。その瞳は、まるで道端の石ころを見るかのように、俺――カイを、見下していた。
俺の持つスキルは【生態鑑定】。
その名の通り、生物の情報を鑑定する能力だ。
しかし、俺のスキルで表示されるのは、『スライム:ぷるぷるしている魔物』『ゴブリン:棍棒を持った小鬼』といった、誰でも知っているような簡単な説明だけ。
戦闘において、何の役にも立たない。仲間たちからは、いつしか「ゴミスキル」と蔑まれるようになっていた。
つい先ほど、俺たちは高難易度のダンジョン「深淵の迷宮」の攻略に失敗したばかりだった。
強力なミノタウロスの奇襲を受け、パーティは壊滅寸前に追い込まれたのだ。
「そもそも、お前の鑑定が役に立たないのが悪いんだ! 敵の位置や弱点くらい、まともに表示させられないのか!」
アレクの怒声が飛ぶ。
そんなこと、できるはずがない。俺のスキルは、そういうものなのだから。
だが、敗走の苛立ちをぶつける格好の的として、俺が選ばれた。
「アレクの言う通りよ。あなたのせいで、私の大事な法衣が泥だらけじゃない!」
回復役の聖女リリアが、扇子で顔を隠しながら甲高い声で俺を責める。
「カイ、すまない。だが、これ以上お前をパーティに置いておくことはできない」
パーティの盾役である大柄な戦士、ゴードンまでもが、申し訳なさそうな顔をしながらもアレクに同調した。
誰も、俺をかばってはくれない。
パーティ結成からずっと旅をしてきた仲間だと思っていたのは、俺だけだったらしい。
「待ってくれ! 俺だって、頑張ってきたじゃないか! 荷物持ちも、野営の準備も、全部……!」
必死に食い下がる俺の言葉を、アレクは鼻で笑った。
「雑用なら、金で雇えばいい。俺たちに必要なのは、戦える力だ。お前にはそれがない。分かるか?」
アレクは俺が背負っていた荷物袋を奪い取ると、中から数枚の銅貨を抜き取り、地面に放り投げた。
「これは手切れ金だ。装備はパーティの共有物だから、置いていってもらう。これで文句はないな?」
俺がわずかな金で買った革鎧や、唯一の武器だったショートソードまで、彼らは取り上げるつもりらしかった。
それはあんまりだと抗議しようとした。しかし、ゴードンの巨大な手が俺の肩を掴み、動けなくさせられた。
なすすべもなく、俺は装備を剝ぎ取られ、文字通り着の身着のままでパーティから追い出された。
背後からは「せいせいした」「これで次のダンジョンはうまくいく」という仲間たちの声が聞こえてくる。
雨が降り始めていた。
冷たい滴が、ぼろ布のような服を通して体温を奪っていく。
銅貨を拾う気力も湧かず、俺はふらふらとした足取りで、王都へと続く道を歩いた。
しかし、王都に戻ったところで、俺に居場所などなかった。
勇者パーティを追放された役立たず。そんな噂はすぐに広まるだろう。誰も俺を雇ってなどくれない。
絶望が、冷たい雨と共に心に染み込んでいく。
「どこへ行けばいいんだ……」
独り言は、雨音にかき消された。
行く当てもなく、ただひたすらに歩き続ける。王都の明かりを背に、俺はいつしか人々が足を踏み入れないという、辺境の森へと向かっていた。
もう、どうなってもいい。そんな投げやりな気持ちだけが、俺の足を前へ前へと進ませていた。
冷たく、一切の情を含まない声が、薄暗い洞窟に響き渡った。
声の主は、まばゆい聖剣を腰に下げた勇者アレク。その瞳は、まるで道端の石ころを見るかのように、俺――カイを、見下していた。
俺の持つスキルは【生態鑑定】。
その名の通り、生物の情報を鑑定する能力だ。
しかし、俺のスキルで表示されるのは、『スライム:ぷるぷるしている魔物』『ゴブリン:棍棒を持った小鬼』といった、誰でも知っているような簡単な説明だけ。
戦闘において、何の役にも立たない。仲間たちからは、いつしか「ゴミスキル」と蔑まれるようになっていた。
つい先ほど、俺たちは高難易度のダンジョン「深淵の迷宮」の攻略に失敗したばかりだった。
強力なミノタウロスの奇襲を受け、パーティは壊滅寸前に追い込まれたのだ。
「そもそも、お前の鑑定が役に立たないのが悪いんだ! 敵の位置や弱点くらい、まともに表示させられないのか!」
アレクの怒声が飛ぶ。
そんなこと、できるはずがない。俺のスキルは、そういうものなのだから。
だが、敗走の苛立ちをぶつける格好の的として、俺が選ばれた。
「アレクの言う通りよ。あなたのせいで、私の大事な法衣が泥だらけじゃない!」
回復役の聖女リリアが、扇子で顔を隠しながら甲高い声で俺を責める。
「カイ、すまない。だが、これ以上お前をパーティに置いておくことはできない」
パーティの盾役である大柄な戦士、ゴードンまでもが、申し訳なさそうな顔をしながらもアレクに同調した。
誰も、俺をかばってはくれない。
パーティ結成からずっと旅をしてきた仲間だと思っていたのは、俺だけだったらしい。
「待ってくれ! 俺だって、頑張ってきたじゃないか! 荷物持ちも、野営の準備も、全部……!」
必死に食い下がる俺の言葉を、アレクは鼻で笑った。
「雑用なら、金で雇えばいい。俺たちに必要なのは、戦える力だ。お前にはそれがない。分かるか?」
アレクは俺が背負っていた荷物袋を奪い取ると、中から数枚の銅貨を抜き取り、地面に放り投げた。
「これは手切れ金だ。装備はパーティの共有物だから、置いていってもらう。これで文句はないな?」
俺がわずかな金で買った革鎧や、唯一の武器だったショートソードまで、彼らは取り上げるつもりらしかった。
それはあんまりだと抗議しようとした。しかし、ゴードンの巨大な手が俺の肩を掴み、動けなくさせられた。
なすすべもなく、俺は装備を剝ぎ取られ、文字通り着の身着のままでパーティから追い出された。
背後からは「せいせいした」「これで次のダンジョンはうまくいく」という仲間たちの声が聞こえてくる。
雨が降り始めていた。
冷たい滴が、ぼろ布のような服を通して体温を奪っていく。
銅貨を拾う気力も湧かず、俺はふらふらとした足取りで、王都へと続く道を歩いた。
しかし、王都に戻ったところで、俺に居場所などなかった。
勇者パーティを追放された役立たず。そんな噂はすぐに広まるだろう。誰も俺を雇ってなどくれない。
絶望が、冷たい雨と共に心に染み込んでいく。
「どこへ行けばいいんだ……」
独り言は、雨音にかき消された。
行く当てもなく、ただひたすらに歩き続ける。王都の明かりを背に、俺はいつしか人々が足を踏み入れないという、辺境の森へと向かっていた。
もう、どうなってもいい。そんな投げやりな気持ちだけが、俺の足を前へ前へと進ませていた。
あなたにおすすめの小説
無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティの鑑定士アルノは、地味なスキルを理由にリーダーの勇者から追放宣告を受ける。
古代迷宮の深層に置き去りにされ、絶望的な状況――しかし、それは彼にとって新たな人生の始まりだった。
これまでパーティのために抑制していたスキル【万物鑑定】。
その真の力は、あらゆるものの真価、未来、最適解までも見抜く神の眼だった。
隠された脱出路、道端の石に眠る価値、呪われたエルフの少女を救う方法。
彼は、追放をきっかけに手に入れた自由と力で、心優しい仲間たちと共に、誰もが笑って暮らせる理想郷『アルカディア』を創り上げていく。
一方、アルノを失った勇者パーティは、坂道を転がるように凋落していき……。
痛快な逆転成り上がりファンタジーが、ここに開幕する。
婚約破棄&濡れ衣で追放された聖女ですが、辺境で育成スキルの真価を発揮!無骨で不器用な最強騎士様からの溺愛が止まりません!
黒崎隼人
ファンタジー
「君は偽りの聖女だ」――。
地味な「育成」の力しか持たない伯爵令嬢エルナは、婚約者である王太子にそう断じられ、すべてを奪われた。聖女の地位、婚約者、そして濡れ衣を着せられ追放された先は、魔物が巣食う極寒の辺境の地。
しかし、絶望の淵で彼女は自身の力の本当の価値を知る。凍てついた大地を緑豊かな楽園へと変える「育成」の力。それは、飢えた人々の心と体を癒す、真の聖女の奇跡だった。
これは、役立たずと蔑まれた少女が、無骨で不器用な「氷壁の騎士」ガイオンの揺るぎない愛に支えられ、辺境の地でかけがえのない居場所と幸せを見つける、心温まる逆転スローライフ・ファンタジー。
王都が彼女の真価に気づいた時、もう遅い。最高のざまぁと、とろけるほど甘い溺愛が、ここにある。
過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました
黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」
ブラック企業で過労死した俺、相川大地。
女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!?
右も左もわからない荒野でのサバイバル。
だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに!
美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。
これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。
農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!
【解析眼】をゴミだと追放された俺、辺境で神獣と美少女たちに囲まれ最強の領地を築く~今更戻ってこいと言われても、もう遅い~
黒崎隼人
ファンタジー
Sランクパーティ「神聖なる光刃」に所属していたレオンは、スキル【解析眼】を「ただの鑑定の劣化版」と見なされ、リーダーの勇者ガイアスから理不尽な追放を言い渡される。
しかし、レオンの【解析眼】は、万物の構造、弱点、未来予知までをも可能にする神スキルだった!
失意の中、辺境の村に辿り着いたレオンは、その力で村の危機を救い、伝説の神獣や訳ありエルフ、獣人の鍛冶師といった仲間たちと出会う。
彼の力によって村はみるみる発展し、やがて「辺境の楽園」と呼ばれる最強の都市へ。
一方、レオンを追放した勇者パーティは、彼のサポートを失いダンジョン攻略に失敗続き。ついにはSランクから転落し、破滅の道を歩み始める……。
「今更戻ってこいと言われても、もう遅い。俺はこの楽園で幸せに暮らすから」
これは、無能と蔑まれた男が、最強の力で仲間たちと幸せな領地を築き上げる、逆転スローライフファンタジー!
追放された聖女は、辺境で狼(もふもふ)とカフェを開く
橘 あやめ
ファンタジー
――もう黙らない。追放された聖女は、もふもふの白狼と温かい居場所を見つける――
十二年間、大聖堂で祈り続けた。
病人を癒し、呪いを祓い、飢饉のときは畑に恵みの光を降ろす。
その全てを、妹の嘘泣きひとつで奪われた。
献金横領の濡れ衣を着せられ、聖女の座を追われたアーシャ。
荷物は革鞄ひとつ。行く宛てもない。
たどり着いた辺境の町で、アーシャは小さなハーブティーのカフェを開くことに。
看板は小枝の炭で手作り。
焼き菓子は四度目でようやく成功。
常連もできて、少しずつ「自分の居場所」が生まれていく――。
そんなカフェに夜ごと現れるのは、月光のように美しい銀色の狼。
もふもふで、不愛想で、でも何かとアーシャのことを助けてくれる。
やがて、穏やかな日々を壊しに――妹が現れる。
※追放聖女のカフェ開業もの(もふもふつき)です!ハッピーエンド!
神具のクワで異世界開拓!〜過労死SE、呪われた荒野を極上農園に変えてエルフや獣人と美味しいスローライフ〜
黒崎隼人
ファンタジー
ブラック企業で過労死したシステムエンジニアの茅野蓮は、豊穣の女神アリアによって剣と魔法のファンタジー世界へ転生する。
彼に与えられた使命は、呪われた「嘆きの荒野」を開拓し、全ての種族が手を取り合える理想郷を築くこと。
女神から授かったチート神具「ガイアの聖クワ」を一振りすれば、枯れた大地は瞬時に極上の黒土へと変わり、前世の知識と魔法の収納空間を駆使して、あっという間に規格外の美味しい作物を育て上げていく。
絶品の「ポトフ」で飢えたエルフの少女を救ったことを皮切りに、訳ありの白狼族の女戦士、没落した元公爵令嬢、故郷を失った天狐の巫女、人間に囚われていた翼人族の少女など、行き場を失った魅力的なヒロインたちが次々と彼の農園に集まってくる。
蓮が作る「醤油」や「マヨネーズ」などの未知の調味料や絶品料理は、瞬く間に世界中の胃袋を掴み、小さな農園はいつしか巨大な経済網を持つ最強の都市国家へと発展していく!
迫り来る大商会の圧力も、大国の軍勢も、さらには魔王軍の侵攻すらも、蓮は「美味しいご飯」と「農業チート」で平和的に解決してしまう。
これは、一本のクワを握りしめた心優しい青年が、傷ついた仲間たちと共に美味しい食卓を囲みながら、世界一豊かで幸せな国家「アルカディア連邦」を創り上げるまでの、奇跡と豊穣の異世界スローライフ!
「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした
希羽
ファンタジー
人気ダンジョン配信チャンネル『勇者ライヴ』の裏方として、荷物持ち兼カメラマンをしていた俺。ある日、リーダーの勇者(IQ低め)からクビを宣告される。「お前の使う『重力魔法』は地味で絵面が悪い。これからは派手な爆裂魔法を使う美少女を入れるから出て行け」と。俺は素直に従い、代わりに田舎の不人気ダンジョンへ引っ込んだ。しかし彼らは知らなかった。彼らが「俺TUEEE」できていたのは、俺が重力魔法でモンスターの動きを止め、カメラのアングルでそれを隠していたからだということを。俺がいなくなった『勇者ライヴ』は、モンスターにボコボコにされる無様な姿を全世界に配信し、大炎上&ランキング転落。 一方、俺が田舎で「畑仕事(に見せかけたダンジョン開拓)」を定点カメラで垂れ流し始めたところ―― 「え、この人、素手でドラゴン撫でてない?」「重力操作で災害級モンスターを手玉に取ってるw」「このおっさん、実は世界最強じゃね?」とバズりまくり、俺は無自覚なまま世界一の配信者へと成り上がっていく。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!