「え、俺なんかしました?」無自覚チート《概念編集》で石ころを魔石に、なまくらを聖剣に書き換えて、国を追われた聖女様と世界を救う

黒崎隼人

文字の大きさ
63 / 87
第一章「無自覚チート《概念編集》と訳あり聖女の逃避行」

第30話「影の教団、襲来」

しおりを挟む
 警鐘の音はエルドラナの穏やかな空気を引き裂いた。
 都のあちこちから人々の緊張した声が聞こえ、武装したエルフの援軍たちが慌ただしく持ち場へと散っていく。

 俺とルミナはソフィアラやエリアスと共に、都を見下ろす最も高い見張り台へと駆け上がった。

「来たか……!」

 エリアスが忌々しげに吐き捨てる。
 彼の視線の先、虹の飛泉が作り出す結界の外側に、おびただしい数の黒い影が集結していた。
 その数百は下らないだろう。
 影の教団がその総力を挙げて押し寄せてきたのだ。

 軍勢の中心には禍々しい紫色のオーラを放つ、巨大な攻城兵器のようなものが鎮座している。
 それは捻じくれた枯れ木と、おぞましい魔物の骨を組み合わせて作られた巨大な破城槌だった。

「あれは……『邪神の鉄槌』! 古文書にあった、聖なる結界を破壊するためだけの兵器……!」

 ルミナが顔を青ざめさせて叫ぶ。

「まずいわ。今の世界樹の結界では、あの一撃を防ぎきれないかもしれない……!」

 ソフィアラの言葉に緊張が走る。

「教団の連中、どこから我らの場所を……?」

 エリアスの疑問に、教団の軍勢の中から一人の人物がゆっくりと前に進み出た。
 その人物を見て俺は息をのんだ。
 以前俺たちを追い詰めた『影の双刃』のシンとレン。
 そしてその二人に付き従うように、リムベルの町で遭遇した顔に傷のある男の姿もあった。
 だが彼らの中心に立つ人物は、明らかに格が違った。

 漆黒のローブをまとい、顔は銀色の仮面で覆われている。
 その全身から放たれるプレッシャーは、これまで俺たちが戦ってきたどんな敵とも比較にならないほど強大で邪悪だった。

「久しぶりだな、聖女の末裔よ」

 仮面の男の声が魔力によって増幅され、結界の内側まで響き渡る。

「そしてイレギュラーの小僧。お前たちのつまらない逃避行も、これで終わりだ」

「お前は……誰だ!」

 俺が叫ぶと仮面の男は、クツクツと喉の奥で笑った。

「我は影の教団を束ねる大司教、ザルヴァーク。偉大なる邪神様の忠実なる僕よ」

 ザルヴァークと名乗った男は、ゆっくりと片手を上げた。

「全軍、攻撃を開始せよ! 聖域を穢し、聖女を我らが手に! 邪神復活の礎となせ!」

 その号令を合図に、教団の兵士たちから一斉に雄叫びが上がった。
 そして巨大な破城槌『邪神の鉄槌』が、おびただしい量の黒い魔力を溜め込み不気味な光を放ち始める。
 大地がごごごと揺れた。

「総員、防御態勢! 何としても結界を守り抜け!」

 エリアスがエルフの戦士たちに檄を飛ばす。
 ルミナとソフィアラも残された一族の者たちと共に、世界樹に向かって祈りを捧げ結界の力を最大限に高めようとしていた。

 俺も剣を抜き放ち、見張り台の縁に立つ。
 今こそ修行の成果を見せる時だ。

 この見張り台を、エルドラナの城壁を、『どんな攻撃にも耐えうる金剛石の砦』に!
 俺の《概念編集》によって、白亜の都の壁が淡い光を帯びてその強度を増していく。
 だが、それでも足りるかどうか。

 ドクン、と邪神の鉄槌が大きく脈動し、その先端に凝縮された黒い魔力が一点に収束していく。

「来るぞ!」

 次の瞬間、漆黒の破壊光線が轟音と共に放たれた。
 光線は虹の飛泉の結界に激突する。
 ズゥゥゥゥゥゥン!
 世界が揺れた。
 耳をつんざくような衝撃音と共に結界がガラスのように激しくきしみ、おびただしい数の亀裂が走る。

「ぐっ……!」

 結界を維持していたルミナやソフィアラが、苦悶の声を上げて膝をついた。
 結界はかろうじて持ちこたえた。
 だが完全に破壊されるのは、時間の問題だった。

「次弾、放て!」

 ザルヴァークの非情な声が響く。
 絶望的な戦いの火蓋が、今切って落とされた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~

御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。 異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。 前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。 神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。 朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。 そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。 究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

転生したら無自覚に世界最強になっていた件。周りは僕を崇めるけど、僕自身は今日も日雇い仕事を探しています。

黒崎隼人
ファンタジー
トラックに轢かれ異世界に転生した元サラリーマンの星野悠。 彼に与えられたのは「異常な魔力」と「無自覚に魔術を使う能力」。 しかし自己評価が低すぎる悠は、自分のチート能力に全く気づかない。 「困っている人を助けたい」――その純粋な善意だけで、魔物を一撃で消滅させ、枯れた大地を蘇らせ、難病を癒してしまう。 周囲が驚愕し、彼を英雄と崇めても、本人は「たまたまです」「運が良かっただけ」と首を傾げるばかり。 これは、お人好しな青年が、無自覚なまま世界を救ってしまう、心温まる勘違いと奇跡の物語。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...