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第二章「最強になった俺と聖女様、世界の真の黒幕を倒しに行きます。」
第52話「大砂蟲の怒り」
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族長の案内で、俺たちはオアシス都市シルティスの中心にある古びた神殿へとやってきた。
都市の美しい景観とは不釣り合いなほどに風化し、半分砂に埋もれたその神殿が地下遺跡への入り口だという。
「ここから先は我らも未知の領域じゃ。くれぐれも気をつけてくだされ」
族長は心配そうに俺たちを見送ると、神殿の入り口を固く閉ざした。
神殿の内部はひんやりとした空気に満ちていた。
壁には古代の文字や巨大な虫のような生物を描いた壁画がびっしりと刻まれている。
「この壁画……サンドワームかしら」
「ああ。どうやらこの都市の民は、大昔からサンドワームを神として崇めて共存してきたみたいだな」
壁画に描かれたサンドワームは決して恐ろしい怪物ではなく、人々と共に作物を育て外敵から都市を守る慈愛に満ちた存在として描かれていた。
そんな守り神が、なぜ。
俺たちはらせん状に地下へと続く階段を慎重に下りていった。
進むにつれてラスク鉱山で感じたのと同じ、邪悪な瘴気が濃くなっていくのを感じる。
階段を下りきるとそこは広大な地下空洞になっていた。
天井は高く所々に光る苔が群生しており、ぼんやりと周囲を照らしている。
空洞の中央には巨大な竜の骨が横たわっており、その肋骨の部分がまるで門のように見えた。
クリスタル・ドレイクが見せてくれたビジョンそのものだ。
俺たちが竜骨の門へ近づこうとした、その時。
ザザザザザッ!
俺たちの足元の砂が突如として激しく盛り上がった。
そして次の瞬間、巨大な口が砂の中から飛び出してきたのだ。
その口は円形で、内側には何重にも並んだ剃刀のように鋭い牙がびっしりと生えている。
体長は数十メートルはありそうだ。
まるで地獄から現れた巨大なミミズだ。
「大砂蟲(サンドワーム)!」
ルミナが叫ぶ。
壁画に描かれていた慈愛に満ちた姿とは似ても似つかない、狂気と憎悪に満ちた瞳が俺たちを睨みつけていた。
「シャアアアアアッ!」
サンドワームは甲高い叫び声を上げると、その巨大な身体を鞭のようにしならせ俺たちに襲いかかってきた。
「危ない!」
俺はルミナを突き飛ばし、自分も横へ転がって回避する。
俺たちがいた場所をサンドワームの巨体が通り過ぎ、竜骨の一部に激突して骨を粉々に砕いた。
「カイ、あいつの口から酸を吐き出すわ! 気をつけて!」
ルミナの警告通り、サンドワームは口から強酸性の消化液を霧状に噴射してきた。
酸の霧が触れた岩盤がジュウジュウと音を立てて溶けていく。
俺たちはサンドワームの猛攻を必死でかわし続ける。
だが相手は砂の中を自由自在に移動し、どこから現れるか予測がつかない。
完全に地の利は相手にあった。
「くそっ、このままじゃジリ貧だ!」
攻撃を仕掛けようにも、その巨体は常に砂の中に隠れており狙いが定められない。
「カイ! 私が動きを止める! あなたはあいつを正気に戻す方法を考えて!」
ルミナは意を決したように詠唱を始めた。
「聖なる大地よ、我が声にこたえよ! その足枷となりて、邪なる者を縛めたまえ! アース・バインド!」
彼女が地面に手を触れると地下空洞の床から光る鎖が無数に出現し、砂の中から顔を出したサンドワームの身体に絡みついていった。
「シャアアアアッ!」
サンドワームは激しく暴れるが、聖なる力で編まれた鎖は簡単にはちぎれない。
「ぐっ……! でも、長くはもたないわ!」
ルミナの額に大粒の汗が浮かぶ。
巨大なサンドワームを一体で押さえつけるのは、彼女にとっても相当な負担のようだった。
『正気に戻す方法……!』
俺はクリスタル・ドレイクの時を思い出す。
あの時は鉱山そのものと繋がり、守護獣との関係性を再構築することで彼を正気に戻すことができた。
だが今回はどうだ?
この遺跡と繋がる?
いや、この遺跡自体が瘴気の発生源になっている可能性がある。
下手に繋がれば俺が逆に汚染されかねない。
何か、別の方法を……。
その時、俺の目にサンドワームの頭部の一部が不自然に黒く変色し、禍々しいオーラを放っているのが見えた。
まるで何かの寄生虫に取り憑かれているかのようだ。
『あれだ!』
瘴気の根源はサンドワーム自身の体内にあるのではない。
外部から何者かによって植え付けられたものだ。
「ルミナ、あいつの頭を見てくれ! 黒くなっている部分がある!」
「ええ、見えるわ! あれが呪いの本体……!」
「そうだ! あれをあいつの身体から引き剥がす!」
だがどうやって? あの巨体に近づくだけでも命がけだ。
『いや、直接触る必要はない。《概念編集》はイメージの力。俺の意志が届けば……!』
俺は剣を構え、意識を集中させた。
『あの「サンドワームに寄生する、邪悪な呪い」と、「サンドワーム本体」との「繋がり」を……断ち切れ!』
俺が強く念じると剣の切っ先から金色の光の糸が放たれた。
糸は一直線にサンドワームの頭部、黒く変色した部分へと向かっていく。
それは物理的な攻撃ではない。
概念的な「関係性」に直接干渉する俺だけの力。
「シャ……ギ……!?」
光の糸が触れた瞬間サンドワームの動きがぴたりと止まった。
そして黒い部分がまるで生き物のように蠢きだし、サンドワームの身体からずるりと剥がれ落ちたのだ。
地面に落ちた黒い塊は不定形のスライムのような姿に変わり、俺たちに敵意を向けてきた。
「あれが正体……!」
サンドワームを操っていたのは、邪神の眷属、呪いを植え付けることに特化した魔物の一種だったのだ。
正気を取り戻したサンドワームは、自らを苦しめていた元凶を怒りに満ちた瞳で睨みつけると、その巨大な口で一瞬のうちにスライム状の魔物を飲み込んでしまった。
「……終わったのか?」
俺が息をつくとサンドワームは静かに俺たちの方へ向き直った。
その瞳にはもう狂気の色はない。
代わりにあったのは深い感謝と敬意の色だった。
彼は深々と頭を下げると、竜骨の門の奥をその顎で示した。
『……ユケ……勇者タチヨ……我ガ、主ノ眠ル場所ヘ……』
サンドワームの心の声が聞こえた。
俺とルミナは顔を見合わせ、うなずき合う。
守り神の導きを受け、俺たちはついに第三の楔が眠る遺跡の最深部へと足を踏み入れるのだった。
都市の美しい景観とは不釣り合いなほどに風化し、半分砂に埋もれたその神殿が地下遺跡への入り口だという。
「ここから先は我らも未知の領域じゃ。くれぐれも気をつけてくだされ」
族長は心配そうに俺たちを見送ると、神殿の入り口を固く閉ざした。
神殿の内部はひんやりとした空気に満ちていた。
壁には古代の文字や巨大な虫のような生物を描いた壁画がびっしりと刻まれている。
「この壁画……サンドワームかしら」
「ああ。どうやらこの都市の民は、大昔からサンドワームを神として崇めて共存してきたみたいだな」
壁画に描かれたサンドワームは決して恐ろしい怪物ではなく、人々と共に作物を育て外敵から都市を守る慈愛に満ちた存在として描かれていた。
そんな守り神が、なぜ。
俺たちはらせん状に地下へと続く階段を慎重に下りていった。
進むにつれてラスク鉱山で感じたのと同じ、邪悪な瘴気が濃くなっていくのを感じる。
階段を下りきるとそこは広大な地下空洞になっていた。
天井は高く所々に光る苔が群生しており、ぼんやりと周囲を照らしている。
空洞の中央には巨大な竜の骨が横たわっており、その肋骨の部分がまるで門のように見えた。
クリスタル・ドレイクが見せてくれたビジョンそのものだ。
俺たちが竜骨の門へ近づこうとした、その時。
ザザザザザッ!
俺たちの足元の砂が突如として激しく盛り上がった。
そして次の瞬間、巨大な口が砂の中から飛び出してきたのだ。
その口は円形で、内側には何重にも並んだ剃刀のように鋭い牙がびっしりと生えている。
体長は数十メートルはありそうだ。
まるで地獄から現れた巨大なミミズだ。
「大砂蟲(サンドワーム)!」
ルミナが叫ぶ。
壁画に描かれていた慈愛に満ちた姿とは似ても似つかない、狂気と憎悪に満ちた瞳が俺たちを睨みつけていた。
「シャアアアアアッ!」
サンドワームは甲高い叫び声を上げると、その巨大な身体を鞭のようにしならせ俺たちに襲いかかってきた。
「危ない!」
俺はルミナを突き飛ばし、自分も横へ転がって回避する。
俺たちがいた場所をサンドワームの巨体が通り過ぎ、竜骨の一部に激突して骨を粉々に砕いた。
「カイ、あいつの口から酸を吐き出すわ! 気をつけて!」
ルミナの警告通り、サンドワームは口から強酸性の消化液を霧状に噴射してきた。
酸の霧が触れた岩盤がジュウジュウと音を立てて溶けていく。
俺たちはサンドワームの猛攻を必死でかわし続ける。
だが相手は砂の中を自由自在に移動し、どこから現れるか予測がつかない。
完全に地の利は相手にあった。
「くそっ、このままじゃジリ貧だ!」
攻撃を仕掛けようにも、その巨体は常に砂の中に隠れており狙いが定められない。
「カイ! 私が動きを止める! あなたはあいつを正気に戻す方法を考えて!」
ルミナは意を決したように詠唱を始めた。
「聖なる大地よ、我が声にこたえよ! その足枷となりて、邪なる者を縛めたまえ! アース・バインド!」
彼女が地面に手を触れると地下空洞の床から光る鎖が無数に出現し、砂の中から顔を出したサンドワームの身体に絡みついていった。
「シャアアアアッ!」
サンドワームは激しく暴れるが、聖なる力で編まれた鎖は簡単にはちぎれない。
「ぐっ……! でも、長くはもたないわ!」
ルミナの額に大粒の汗が浮かぶ。
巨大なサンドワームを一体で押さえつけるのは、彼女にとっても相当な負担のようだった。
『正気に戻す方法……!』
俺はクリスタル・ドレイクの時を思い出す。
あの時は鉱山そのものと繋がり、守護獣との関係性を再構築することで彼を正気に戻すことができた。
だが今回はどうだ?
この遺跡と繋がる?
いや、この遺跡自体が瘴気の発生源になっている可能性がある。
下手に繋がれば俺が逆に汚染されかねない。
何か、別の方法を……。
その時、俺の目にサンドワームの頭部の一部が不自然に黒く変色し、禍々しいオーラを放っているのが見えた。
まるで何かの寄生虫に取り憑かれているかのようだ。
『あれだ!』
瘴気の根源はサンドワーム自身の体内にあるのではない。
外部から何者かによって植え付けられたものだ。
「ルミナ、あいつの頭を見てくれ! 黒くなっている部分がある!」
「ええ、見えるわ! あれが呪いの本体……!」
「そうだ! あれをあいつの身体から引き剥がす!」
だがどうやって? あの巨体に近づくだけでも命がけだ。
『いや、直接触る必要はない。《概念編集》はイメージの力。俺の意志が届けば……!』
俺は剣を構え、意識を集中させた。
『あの「サンドワームに寄生する、邪悪な呪い」と、「サンドワーム本体」との「繋がり」を……断ち切れ!』
俺が強く念じると剣の切っ先から金色の光の糸が放たれた。
糸は一直線にサンドワームの頭部、黒く変色した部分へと向かっていく。
それは物理的な攻撃ではない。
概念的な「関係性」に直接干渉する俺だけの力。
「シャ……ギ……!?」
光の糸が触れた瞬間サンドワームの動きがぴたりと止まった。
そして黒い部分がまるで生き物のように蠢きだし、サンドワームの身体からずるりと剥がれ落ちたのだ。
地面に落ちた黒い塊は不定形のスライムのような姿に変わり、俺たちに敵意を向けてきた。
「あれが正体……!」
サンドワームを操っていたのは、邪神の眷属、呪いを植え付けることに特化した魔物の一種だったのだ。
正気を取り戻したサンドワームは、自らを苦しめていた元凶を怒りに満ちた瞳で睨みつけると、その巨大な口で一瞬のうちにスライム状の魔物を飲み込んでしまった。
「……終わったのか?」
俺が息をつくとサンドワームは静かに俺たちの方へ向き直った。
その瞳にはもう狂気の色はない。
代わりにあったのは深い感謝と敬意の色だった。
彼は深々と頭を下げると、竜骨の門の奥をその顎で示した。
『……ユケ……勇者タチヨ……我ガ、主ノ眠ル場所ヘ……』
サンドワームの心の声が聞こえた。
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