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番外編「ギルド『方舟』の、とある休日」
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アークライトに平穏が訪れてから初めての、ギルドメンバー全員が揃った休日。
リアムは日頃の疲れを癒やすため、皆をピクニックに誘うことにした。
「よし、今日は俺が腕によりをかけて最高のランチを作ってやる!」
リアムの宣言にギルドハウスの談話室が沸いた。
「わあ、本当ですか、リアムさん! 楽しみです!」
「リアムの料理か。そりゃ期待できるな!」
「ほっほっほ。若造の手料理、とくと味わわせてもらおうかの」
「……おれ、手伝うよ」
リリア、ボルガン、エルミナ、そしてフィンがそれぞれ期待の声を上げる。
普段はリリアが料理を担当することが多いが、リアムもまた鑑定スキルを応用した料理が得意だった。
「それじゃあ、まずは市場に買い出しだ!」
五人は連れ立って活気にあふれるアークライトの中央市場へと向かった。
市場は新鮮な野菜や果物、獲れたての魚や肉を売る店で溢れかえっている。
「さて、と……」
リアムはニヤリと笑うと【真理の瞳】を発動させた。彼の目には市場に並ぶ全ての食材の隠された情報が見えていた。
【名称:太陽トマト】
【状態:完熟まであと一歩。だがこの株の隣にある、少し小ぶりなものの方が糖度と栄養価が三倍高い『奇跡の一粒』】
「おばちゃん、こっちの小さい方を全部くれ!」
【名称:森イノシシのロース肉】
【状態:鮮度抜群。特にこのブロックの右端の部分は、通常よりも脂肪の融点が低く口に入れた瞬間に溶けるほどの極上の霜降り】
「肉屋の親父さん! このブロックの、ここからここまでを頼む!」
リアムは次々と見た目では到底判断できない、最高品質の食材だけをピンポイントで選んでいく。
その様子を八百屋のおばちゃんも肉屋の頑固親父も、目を丸くして見つめていた。
「坊主……お前、一体何者なんだ……。わしが三十年この道でやってきて、一番いい品を的確に選びおって……」
「ははは、まあ、ちょっとしたコツですよ」
リアムは笑顔でごまかしながら最高の食材を次々と買い集めていく。
フィンは鑑定スキルで見つけた川魚を釣りに行き、リリアはパン屋で焼きたてのパンを受け取ってきた。
ギルドハウスに戻るといよいよ調理開始だ。
「よし、メインは『森イノシシの月光鋼プレート焼き』だ!」
リアムはボルガンに特注で作らせた月光鋼の分厚い鉄板を取り出した。
これを熱すると遠赤外線効果で、肉が内側からふっくらと最高の状態で焼き上がるのだ。
ジュウウウウウ、という食欲をそそる音と共に極上のイノシシ肉が焼かれていく。
鑑定スキルで導き出した最高の塩コショウの配合と完璧な焼き加減。仕上げに星降り芋の蒸留酒でフランベすると、芳醇な香りがキッチンに立ち込めた。
リリアは『奇跡の一粒』トマトを使って色鮮やかなサラダを作る。
フィンが釣ってきた川魚はエルミナが秘伝のハーブを使って絶品の香草焼きに仕上げた。
全ての料理がテーブルに並ぶと、そこはまるでおとぎ話に出てくる晩餐会のようだった。
「「「いただきます!」」」
全員で声を合わせ料理に手をつける。
「んんんっ!? なんだこの肉は! 口の中で、とろけたぞ!?」
ボルガンが目を見開いて絶叫する。
「このトマト、信じられないくらい甘いです……!」
「魚のハーブの香りも、素晴らしい……」
「うむ、これは王宮の料理長でもここまでのものは作れんじゃろうな」
仲間たちが次々と感嘆の声を上げる。その顔は全員が満面の笑みだった。
リアムはその光景を見ているだけで胸がいっぱいになった。
美味しいものを、大切な仲間たちと一緒に食べる。これ以上の幸せがあるだろうか。
食事の後、彼らは談話室の暖炉の前でエルミナが淹れた薬草茶を飲みながらゆっくりと語り合った。
ボルガンは新しい武器の設計について熱く語り、フィンは森で見つけた珍しい動物の話をした。リリアは診療所での微笑ましい出来事を話し、エルミナは昔の宮廷での失敗談を披露してみんなを笑わせた。
リアムはそんな仲間たちの話をただ黙って、微笑みながら聞いていた。
追放、絶望、そして再起。色々なことがあった。
だがその全ての出来事がこの温かくて、かけがえのない時間へと繋がっている。そう思うと過去の辛い経験さえも悪くなかったと思えるから不思議だ。
窓の外ではアークライトの街に優しい夜の帳が下り始めていた。
ギルド「方舟」の穏やかで幸福な休日は、仲間たちの笑い声と共にゆっくりと更けていくのだった。
リアムは日頃の疲れを癒やすため、皆をピクニックに誘うことにした。
「よし、今日は俺が腕によりをかけて最高のランチを作ってやる!」
リアムの宣言にギルドハウスの談話室が沸いた。
「わあ、本当ですか、リアムさん! 楽しみです!」
「リアムの料理か。そりゃ期待できるな!」
「ほっほっほ。若造の手料理、とくと味わわせてもらおうかの」
「……おれ、手伝うよ」
リリア、ボルガン、エルミナ、そしてフィンがそれぞれ期待の声を上げる。
普段はリリアが料理を担当することが多いが、リアムもまた鑑定スキルを応用した料理が得意だった。
「それじゃあ、まずは市場に買い出しだ!」
五人は連れ立って活気にあふれるアークライトの中央市場へと向かった。
市場は新鮮な野菜や果物、獲れたての魚や肉を売る店で溢れかえっている。
「さて、と……」
リアムはニヤリと笑うと【真理の瞳】を発動させた。彼の目には市場に並ぶ全ての食材の隠された情報が見えていた。
【名称:太陽トマト】
【状態:完熟まであと一歩。だがこの株の隣にある、少し小ぶりなものの方が糖度と栄養価が三倍高い『奇跡の一粒』】
「おばちゃん、こっちの小さい方を全部くれ!」
【名称:森イノシシのロース肉】
【状態:鮮度抜群。特にこのブロックの右端の部分は、通常よりも脂肪の融点が低く口に入れた瞬間に溶けるほどの極上の霜降り】
「肉屋の親父さん! このブロックの、ここからここまでを頼む!」
リアムは次々と見た目では到底判断できない、最高品質の食材だけをピンポイントで選んでいく。
その様子を八百屋のおばちゃんも肉屋の頑固親父も、目を丸くして見つめていた。
「坊主……お前、一体何者なんだ……。わしが三十年この道でやってきて、一番いい品を的確に選びおって……」
「ははは、まあ、ちょっとしたコツですよ」
リアムは笑顔でごまかしながら最高の食材を次々と買い集めていく。
フィンは鑑定スキルで見つけた川魚を釣りに行き、リリアはパン屋で焼きたてのパンを受け取ってきた。
ギルドハウスに戻るといよいよ調理開始だ。
「よし、メインは『森イノシシの月光鋼プレート焼き』だ!」
リアムはボルガンに特注で作らせた月光鋼の分厚い鉄板を取り出した。
これを熱すると遠赤外線効果で、肉が内側からふっくらと最高の状態で焼き上がるのだ。
ジュウウウウウ、という食欲をそそる音と共に極上のイノシシ肉が焼かれていく。
鑑定スキルで導き出した最高の塩コショウの配合と完璧な焼き加減。仕上げに星降り芋の蒸留酒でフランベすると、芳醇な香りがキッチンに立ち込めた。
リリアは『奇跡の一粒』トマトを使って色鮮やかなサラダを作る。
フィンが釣ってきた川魚はエルミナが秘伝のハーブを使って絶品の香草焼きに仕上げた。
全ての料理がテーブルに並ぶと、そこはまるでおとぎ話に出てくる晩餐会のようだった。
「「「いただきます!」」」
全員で声を合わせ料理に手をつける。
「んんんっ!? なんだこの肉は! 口の中で、とろけたぞ!?」
ボルガンが目を見開いて絶叫する。
「このトマト、信じられないくらい甘いです……!」
「魚のハーブの香りも、素晴らしい……」
「うむ、これは王宮の料理長でもここまでのものは作れんじゃろうな」
仲間たちが次々と感嘆の声を上げる。その顔は全員が満面の笑みだった。
リアムはその光景を見ているだけで胸がいっぱいになった。
美味しいものを、大切な仲間たちと一緒に食べる。これ以上の幸せがあるだろうか。
食事の後、彼らは談話室の暖炉の前でエルミナが淹れた薬草茶を飲みながらゆっくりと語り合った。
ボルガンは新しい武器の設計について熱く語り、フィンは森で見つけた珍しい動物の話をした。リリアは診療所での微笑ましい出来事を話し、エルミナは昔の宮廷での失敗談を披露してみんなを笑わせた。
リアムはそんな仲間たちの話をただ黙って、微笑みながら聞いていた。
追放、絶望、そして再起。色々なことがあった。
だがその全ての出来事がこの温かくて、かけがえのない時間へと繋がっている。そう思うと過去の辛い経験さえも悪くなかったと思えるから不思議だ。
窓の外ではアークライトの街に優しい夜の帳が下り始めていた。
ギルド「方舟」の穏やかで幸福な休日は、仲間たちの笑い声と共にゆっくりと更けていくのだった。
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