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第01話「理不尽な宣告と、最高の追放生活」
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それは、あまりにも理不尽な宣告だった。
「エリナ・クラウゼンバーグ! 貴様との婚約を、この場をもって破棄する!」
王宮のきらびやかな夜会、その喧騒を切り裂いて、第一王子アルフォンス殿下の声が響きわたる。集まっていた貴族たちのざわめきが、一瞬で凍りついた。
私の名はエリナ。クラウゼンバーグ公爵家の令嬢で、つい今しがたまで、目の前の殿下の婚約者だった。巷で言うところの、悪役令嬢という役回りらしい。自分ではそんなつもりは毛頭なかったのだけれど。ただの人見知りで口下手な性格が、あらぬ誤解を招きやすいだけなのだ。
殿下の隣には、庇護欲をそそる可憐な少女――子爵令嬢のソフィアが寄り添っている。彼女こそが、この物語のヒロインなのだろう。
「貴様はソフィアを虐げた! 王家の血を引く私に、貴様のような女はふさわしくない! よって、辺境への追放を命じる!」
雷鳴のような宣告に、貴族たちがひそひそと囁きを交わす。「まさか、公爵令嬢を…」「やりすぎではないか…」。そうでしょう、そうでしょう! 私もそう思います! 心の中で激しく同意しながらも、反論の言葉は出てこない。そもそも、ソフィアさんをいじめた覚えなどない。口下手な私が勇気を出して話しかけたら、なぜか怯えられてしまっただけなのに。
怒りに顔を歪めたアルフォンス殿下が、私の目の前に立つ。
「公爵令嬢の身分を剥奪する。今すぐこの王都を去るがよい」
「――はい、かしこまりました」
思わず、安堵の混じった声が出た。相手は国の王子。ここで反論したところで、良いことなど何もない。それに、この展開、どこかで見たことがあるような……。
そうだ。これは、前世で読んでいたライトノベルの冒頭シーンにそっくりだ。日本のどこにでもいる普通の女子大生だった私は、ある日突然、この物語の悪役令嬢に転生してしまったのだ。
(ああ、これで、ついに自由になれる……!)
内心でガッツポーズをする。もちろん、寂しさがないと言えば嘘になる。けれど、公爵令嬢という立場は、人見知りの私には想像以上に窮屈だった。終わりのない礼儀作法の授業、気の進まない社交。それが「追放」の一言で全て終わるのだ。しかも行き先は、人がほとんどいないという辺境。最高じゃないか!
王都を離れる馬車に揺られること数日。たどり着いたのは、深い森の奥にある小さな村だった。
村長らしい老人に案内されたのは、今にも朽ち果てそうな小さな家。
「お前さんは今日からここに住め。それと、あの畑だ。畑仕事でもして生きていくんだな」
老人が指さしたのは、腰の高さまで雑草が生い茂る、ただの荒れ地だった。
「……はい!」
私は、満面の笑みで答えていた。
畑仕事! なんて素晴らしい響きだろう!
前世の私は、植物を育てるのが大好きだった。特に、自分で育てた野菜を食べるのが何よりの幸せだったのだ。
そして、今の私には秘密のスキルがある。植物に触れるだけで、その成長を何十倍にも加速させられる、規格外のギフト『豊穣の祝福』。前世の知識とこのスキルがあれば、どんな荒れ地も宝石のような畑に変えられる自信があった。
「やったー!」
ボロボロの家に荷物を放り込むと、私はすぐに荒れ地へと向かった。
「よーし、やるぞー!」
意気込んで雑草を抜き始めた、その時だった。
「ひゃうっ!」
足元の草むらから、小さな白い毛玉が飛び出してきた。
「え? なにこれ、もふもふ……」
それは子犬ほどの大きさで、純白の毛に覆われた不思議な生き物だった。つぶらな瞳が、じっと私を見つめている。
「まさか、魔物?」
この世界には魔物がいると聞く。けれど、目の前のもふもふからは、恐ろしさの欠片も感じられない。むしろ、とてつもなく可愛い。
私がそっと手を伸ばすと、白い毛玉は警戒する素振りもなく、掌に頭をすり寄せてきた。
「くぅ~ん」
かわいすぎる! これはもう犯罪的な可愛さだ!
「よし、今日からあなたの名前はコロよ!」
私は勝手に名付けると、コロを抱き上げて家に戻った。
こうして、もふもふの相棒と共に、私の辺境スローライフが幕を開けたのだった。
「エリナ・クラウゼンバーグ! 貴様との婚約を、この場をもって破棄する!」
王宮のきらびやかな夜会、その喧騒を切り裂いて、第一王子アルフォンス殿下の声が響きわたる。集まっていた貴族たちのざわめきが、一瞬で凍りついた。
私の名はエリナ。クラウゼンバーグ公爵家の令嬢で、つい今しがたまで、目の前の殿下の婚約者だった。巷で言うところの、悪役令嬢という役回りらしい。自分ではそんなつもりは毛頭なかったのだけれど。ただの人見知りで口下手な性格が、あらぬ誤解を招きやすいだけなのだ。
殿下の隣には、庇護欲をそそる可憐な少女――子爵令嬢のソフィアが寄り添っている。彼女こそが、この物語のヒロインなのだろう。
「貴様はソフィアを虐げた! 王家の血を引く私に、貴様のような女はふさわしくない! よって、辺境への追放を命じる!」
雷鳴のような宣告に、貴族たちがひそひそと囁きを交わす。「まさか、公爵令嬢を…」「やりすぎではないか…」。そうでしょう、そうでしょう! 私もそう思います! 心の中で激しく同意しながらも、反論の言葉は出てこない。そもそも、ソフィアさんをいじめた覚えなどない。口下手な私が勇気を出して話しかけたら、なぜか怯えられてしまっただけなのに。
怒りに顔を歪めたアルフォンス殿下が、私の目の前に立つ。
「公爵令嬢の身分を剥奪する。今すぐこの王都を去るがよい」
「――はい、かしこまりました」
思わず、安堵の混じった声が出た。相手は国の王子。ここで反論したところで、良いことなど何もない。それに、この展開、どこかで見たことがあるような……。
そうだ。これは、前世で読んでいたライトノベルの冒頭シーンにそっくりだ。日本のどこにでもいる普通の女子大生だった私は、ある日突然、この物語の悪役令嬢に転生してしまったのだ。
(ああ、これで、ついに自由になれる……!)
内心でガッツポーズをする。もちろん、寂しさがないと言えば嘘になる。けれど、公爵令嬢という立場は、人見知りの私には想像以上に窮屈だった。終わりのない礼儀作法の授業、気の進まない社交。それが「追放」の一言で全て終わるのだ。しかも行き先は、人がほとんどいないという辺境。最高じゃないか!
王都を離れる馬車に揺られること数日。たどり着いたのは、深い森の奥にある小さな村だった。
村長らしい老人に案内されたのは、今にも朽ち果てそうな小さな家。
「お前さんは今日からここに住め。それと、あの畑だ。畑仕事でもして生きていくんだな」
老人が指さしたのは、腰の高さまで雑草が生い茂る、ただの荒れ地だった。
「……はい!」
私は、満面の笑みで答えていた。
畑仕事! なんて素晴らしい響きだろう!
前世の私は、植物を育てるのが大好きだった。特に、自分で育てた野菜を食べるのが何よりの幸せだったのだ。
そして、今の私には秘密のスキルがある。植物に触れるだけで、その成長を何十倍にも加速させられる、規格外のギフト『豊穣の祝福』。前世の知識とこのスキルがあれば、どんな荒れ地も宝石のような畑に変えられる自信があった。
「やったー!」
ボロボロの家に荷物を放り込むと、私はすぐに荒れ地へと向かった。
「よーし、やるぞー!」
意気込んで雑草を抜き始めた、その時だった。
「ひゃうっ!」
足元の草むらから、小さな白い毛玉が飛び出してきた。
「え? なにこれ、もふもふ……」
それは子犬ほどの大きさで、純白の毛に覆われた不思議な生き物だった。つぶらな瞳が、じっと私を見つめている。
「まさか、魔物?」
この世界には魔物がいると聞く。けれど、目の前のもふもふからは、恐ろしさの欠片も感じられない。むしろ、とてつもなく可愛い。
私がそっと手を伸ばすと、白い毛玉は警戒する素振りもなく、掌に頭をすり寄せてきた。
「くぅ~ん」
かわいすぎる! これはもう犯罪的な可愛さだ!
「よし、今日からあなたの名前はコロよ!」
私は勝手に名付けると、コロを抱き上げて家に戻った。
こうして、もふもふの相棒と共に、私の辺境スローライフが幕を開けたのだった。
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