追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

第13話：村の発展と二人の絆

　ロックボアの特産品がもたらした富は、アッシュフィールド村の姿を劇的に変えていった。
　まず、村長は俺に相談し、その資金で村のインフラ整備を始めた。
　ぬかるんでいた道は石畳で舗装され、雨漏りしていた家々の屋根は修繕された。俺もスキルを使い、頑丈な資材を【創造】して作業を手伝った。
　村は日を追うごとに綺麗になり、活気づいていく。以前の、どこか諦めに満ちた寂しい雰囲気は、もうどこにもなかった。村人たちの顔には笑顔が戻り、未来への希望が満ち溢れていた。
　俺は、村の英雄として、誰もが尊敬と親しみを込めて接してくれた。子供たちは俺を見かけると、「レオ兄ちゃん！」と駆け寄ってくる。
　そんな日々に、俺は今まで感じたことのない充実感を覚えていた。

　俺とミリアの関係も、日に日に深まっていった。
　彼女は俺の助手として、いつも隣で俺を支えてくれる。俺がスキルで何かを作る時、彼女は目を輝かせてそれを見つめ、「レオ様はすごいです！」と素直に賞賛してくれた。その言葉が、俺にとっては何よりの力になった。
　二人で森へ散策に行ったり、村の子供たちと遊んだり、夜には暖炉の前で語り合ったり。
　穏やかで、満たされた時間。
　パーティーにいた頃は、常に誰かの顔色を窺い、自分を押し殺して生きてきた。
　でも、今は違う。ミリアの前では、俺はありのままでいられた。俺が気弱な部分を見せても、彼女は決して馬鹿にしたりせず、優しく受け止めてくれる。
　彼女の存在が、追放によって負った俺の心の傷を、ゆっくりと癒してくれていた。

　ある晴れた日の午後、俺とミリアは村を見下ろせる小高い丘の上にいた。
　眼下には、生まれ変わったアッシュフィールド村の美しい風景が広がっている。
「綺麗ですね……」
　ミリアが、うっとりと呟いた。
「ああ。みんなが笑ってる。いい村になったな」
「はい。これも全て、レオ様のおかげです」
「俺一人の力じゃないさ。ミリアや、ガルドさん、村長、村のみんながいたからだ」
　しばらく、二人で心地よい沈黙に身を委ねる。
　不意に、ミリアが俺の顔をじっと見つめてきた。その翠色の瞳が、真剣な光を宿している。
「レオ様」
「ん？」
「私……ここに来られて、本当によかったです。レオ様に出会えて、本当によかった」
　彼女はそう言うと、はにかむように微笑んだ。
　その笑顔が、あまりにも眩しくて、俺は心臓が大きく跳ねるのを感じた。
　俺も同じ気持ちだった。
　追放された時は、人生の全てが終わったと思った。でも、あの絶望があったからこそ、今、この場所にたどり着けた。
　この村が、俺の居場所だ。
　そして、隣にいるミリアが、俺にとってかけがえのない、大切な存在になっている。
　俺は、初めて「幸せだ」と、心の底から感じていた。
　この穏やかな日々を、何としても守り抜きたい。
　そう強く誓いながら、俺はミリアの隣で、眼下に広がる愛しい故郷を眺め続けた。