悪役令嬢は辺境で農業革命を起こす~追放された私が知識チートで会社を作り、気づけば国ごと豊かにしちゃいました~

黒崎隼人

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第13章:過去との対峙、決別の舞台

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 アルフレッド王子の正式な協力要請を受け、リリアーナは王都へと招かれた。議題は、彼女の会社「アースガルディア・アグリカルチャー・カンパニー」を中核とした、国家規模の食糧問題対策プロジェクトの発足について。王宮の最も大きな会議室には、国の重鎮である大臣や有力貴族たちが顔を揃えていた。彼らの視線は、かつて追放した令嬢が、今や国の救世主として迎えられるという、皮肉な状況を静かに見守っていた。

 リリアーナは、物怖じすることなく壇上に立つと、辺境で成功させた農業技術を全国に普及させるための具体的な計画を、理路整然と語り始めた。彼女のプレゼンテーションは、明確なデータと、揺るぎない自信に裏打ちされており、居並ぶ貴族たちを唸らせるのに十分な説理力を持っていた。会議は、リリアーナのペースで進み、プロジェクトへの賛同の声が多数を占めようとしていた。

 その時だった。
「お待ちください! 皆様、騙されてはいけませんわ!」

 会議室の扉が勢いよく開かれ、セシリアが息を切らして駆け込んできた。偽造品事件の後、王子の婚約者としての立場は風前の灯火だったが、彼女はまだその地位を剥奪されてはいなかった。これが、彼女にとって最後の足掻きだった。

「その女は、かつてアルフレッド殿下を裏切り、王家を貶めようとした大罪人です! 今また、その悪魔のような舌で皆様を誑かし、この国を乗っ取ろうとしているのですわ!」

 セシリアは、涙ながらにリリアーナの過去の「悪行」を並べ立て、彼女がいかに危険な存在であるかを訴えた。一部の保守的な貴族たちの間には、再び疑念の空気が広がる。

 しかし、その空気を一変させたのは、これまで静かに成り行きを見守っていたアルフレッド王子だった。彼は静かに立ち上がると、セシリアの前に立ちはだかった。

「もうやめるんだ、セシリア。その嘘は、もう誰にも通用しない」
 彼の声は、氷のように冷たかった。
「リリアーナ殿が『悪役令嬢』を演じていたのは、他ならぬ私と、王家のためだった。全ては、未熟だった私に次期国王としての自覚を促すための、苦渋の策だったのだ。それを知らず、私は彼女を断罪し、追放した。過ちは、全て私にある」

 アルフレッドの衝撃的な告白に、会議室は水を打ったように静まり返った。王子自らが、過去の真相と己の過ちを認めたのだ。

「それに引き換え、君はどうだ?」
 王子の視線が、セシリアを射抜く。
「君は、己の嫉妬心を満たすため、リリアーナ殿の名を騙って偽造品を流通させ、民の健康を危険に晒した。その罪、決して許されるものではない」

 そこへ、待っていたとばかりにエリックが前に進み出た。彼は、衛兵に連行されてきた偽造品業者の男を指し示し、セシリアとの金の受け渡しや、具体的な指示内容を記した新たな証拠の数々を、貴族たちの前に提示した。

 言い逃れのしようがない事実を突きつけられ、セシリアは顔面蒼白となり、その場にへたり込んだ。「違う……違うの……」と繰り返す声は、もはや誰の耳にも届かなかった。

 アルフレッドは、セシリアに向かって厳かに言い渡した。
「セシリア嬢。本日をもって、君との婚約は破棄する。そして、国と民を欺いた罪により、貴族の位を剥奪し、王都からの永久追放を命じる」

 それは、彼女がリリアーナに望んだ運命よりも、遥かに重い結末だった。

 全ての決着がついた時、リリアーナは初めて、アルフレッドに視線を向けた。彼女の瞳には、何の感情も浮かんでいなかった。ただ、一人の人間として、過去と向き合い、自らの過ちを正そうとする彼の姿を、静かに見届けているだけだった。

 この日、リリアーナの潔白は、王国の全ての人々の前で完全に証明された。そして、彼女の過去は、もはや彼女を縛る鎖ではなくなった。長きにわたる因縁が清算されたこの舞台は、リリアーナが、そしてアースガルディア王国が、新たな未来へと踏み出すための、華々しい序幕となったのである。
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