チートスキル【万物育成】を授かったので、追放先の辺境で気ままな農業スローライフを始めたら、無愛想だったはずの領主様からの溺愛が止まりません。

黒崎隼人

文字の大きさ
8 / 21

第7章:特産品開発と交易の始まり

 アッシュベリー領の食糧事情は、セレスティーナの活躍によって劇的に安定した。領民たちはもう飢える心配はなく、食卓には彩り豊かな料理が並ぶようになった。しかし、人々の暮らしを本当に豊かにするためには、次のステップに進む必要があった。

「カインさま、領地に現金収入をもたらすための事業を始めませんか?」

 ある日、セレスティーティーナはカインにそう提案した。

「農具を新しく買うにも、傷んだ家を修繕するにも、お金が必要です。私たちが育てた素晴らしい作物を加工して、『アッシュベリー領の特産品』として、他の領地に売り出すのです」

 カインも、領地の財政が常に火の車であることは痛感していた。彼女の提案は、まさに彼が望んでいたことでもあった。

「具体的に、何か案があるのか?」
「はい。三つの商品を考えています」

 セレスティーナがまず目を付けたのは、大量に収穫できるようになったトマトだ。彼女はこれを煮詰めて作った「瓶詰めトマトソース」を提案した。長期保存が可能で様々な料理に使えるこのソースは、食文化がまだ発展途上にあるこの国では画期的な商品になるはずだった。
 次に、ジャガイモを原料とした強い「蒸留酒」。前世でウォッカと呼ばれていたものだ。高品質なジャガイモから作られる蒸留酒は、雑味がなくクリアな味わいで、寒冷な北方の国々では特に高く売れる可能性がある。これもまた、この国ではまだ作られていない新しい酒だった。
 そして最後に、領内に自生していた様々なハーブや交易で手に入れた香辛料を彼女独自の配合でブレンドした「アッシュベリー・ミックススパイス」。一振りするだけで、どんな料理も格段に風味豊かになる魔法の粉だ。

 カインは彼女の先見の明に舌を巻き、すぐに試作品の製作に取り掛からせた。セレスティーナは領民の中から手先の器用な者たちを選び、衛生管理を徹底しながら製造方法を指導していく。

 数週間後、見事な試作品が完成した。美しいルビー色のトマトソース、水晶のように透き通った蒸留酒、そして香り高いスパイス。カインは、古くから付き合いのある数人の信頼できる行商人を領地に招き、これらの新商品を披露した。
 最初は、辺境の産物と侮っていた商人たちも、その品質の高さに度肝を抜かれた。

「なっ……なんだこの赤いソースは! パンにつけただけでこんなに美味いとは!」
「この酒……喉を焼くように強いのに、後味が驚くほど澄んでいる! こんな酒は飲んだことがない!」
「このスパイス、我が隊商の干し肉に使えば、とんでもない価値がつきそうだ!」

 彼らは、これらの商品が市場で高く売れることを即座に確信した。すぐにでも取引したいと、その場でカインに契約を申し出てきたのだ。

 初めての交易は大成功を収めた。数週間後、アッシュベリー領には、領民たちが今まで見たこともないような量の金貨がもたらされた。金貨の入った袋がいくつも館に運び込まれると、領民たちは歓声を上げ、自分たちの働きが確かな富に変わったことを実感した。
 この成功は、セレスティーナがただ農業の知識があるだけでなく、非凡な経営の才覚をも持つことを、領地のすべての人々に示した。

 夜、カインは執務室で帳簿を眺めながら、深い感嘆のため息をついた。

「セレス、君は本当にすごいな。君が来てから、この領地は何もかもが生まれ変わったようだ」

 カインからの素直な賞賛の言葉に、セレスティーナは頬を赤らめながらも、誇らしい気持ちで胸がいっぱいになった。彼女はもはや、カインにとって単なる「居候」ではない。この領地の未来を共に築いていく、かけがえのない「パートナー」として深く認識されるようになっていた。二人の関係は恋心だけでなく、事業を共にする強い信頼によって、新たなステージへと進んだのだった。

あなたにおすすめの小説

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

追放された落ちこぼれ令嬢ですが、氷血公爵様と辺境でスローライフを始めたら、天性の才能で領地がとんでもないことになっちゃいました!!

六角
恋愛
「君は公爵夫人に相応しくない」――王太子から突然婚約破棄を告げられた令嬢リナ。濡れ衣を着せられ、悪女の烙印を押された彼女が追放された先は、"氷血公爵"と恐れられるアレクシスが治める極寒の辺境領地だった。 家族にも見捨てられ、絶望の淵に立たされたリナだったが、彼女には秘密があった。それは、前世の知識と、誰にも真似できない天性の《領地経営》の才能! 「ここなら、自由に生きられるかもしれない」 活気のない領地に、リナは次々と革命を起こしていく。寂れた市場は活気あふれる商業区へ、痩せた土地は黄金色の麦畑へ。彼女の魔法のような手腕に、最初は冷ややかだった領民たちも、そして氷のように冷たいはずのアレクシスも、次第に心を溶かされていく。 「リナ、君は私の領地だけの女神ではない。……私だけの、女神だ」

追放令嬢のスローライフ。辺境で美食レストランを開いたら、元婚約者が「戻ってきてくれ」と泣きついてきましたが、寡黙な騎士様と幸せなのでお断り!

緋村ルナ
ファンタジー
「リナ・アーシェット公爵令嬢!貴様との婚約を破棄し、辺境への追放を命じる!」 聖女をいじめたという濡れ衣を着せられ、全てを奪われた悪役令嬢リナ。しかし、絶望の淵で彼女は思い出す。――自分が日本のOLで、家庭菜園をこよなく愛していた前世の記憶を! 『悪役令嬢?上等じゃない!これからは大地を耕し、自分の手で幸せを掴んでみせるわ!』 痩せた土地を蘇らせ、極上のオーガニック野菜で人々の胃袋を掴み、やがては小さなレストランから国をも動かす伝説を築いていく。 これは、失うことから始まった、一人の女性の美味しくて最高に爽快な逆転成り上がり物語。元婚約者が土下座しに来た頃には、もう手遅れです!

転生幼女の国家級チート図書館~本を読むだけで技術が進化する世界で、私だけ未来知識持ちでした~

ハリネズミの肉球
ファンタジー
目が覚めたら、私は5歳の幼女だった。 しかもそこは―― 「本を読むだけで技術が進化する」不思議な異世界。 この世界では、図書館はただの建物じゃない。 本を理解すればするほど、魔道具も、農業も、建築も“現実にアップデート”される。 だけど。 私が転生した先は、王都から見捨てられた辺境の廃図書館。 蔵書は散逸、予算ゼロ、利用者ゼロ。 ……でもね。 私は思い出してしまった。 前世で研究者だった私の、“未来の知識”を。 蒸気機関、衛生管理、合金技術、都市設計、教育制度。 この世界の誰も知らない未来の答えを、私は知っている。 だったら―― この廃図書館、国家級に育ててみせる。 本を読むだけで技術が進化する世界で、 私だけが“次の時代”を知っている。 やがて王国は気づく。 文明を一段階進めたのは――5歳の幼女だったと。 これは、最弱の立場から始まる、知識による国家再設計の物語。 ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

『無能な聖女』と婚約破棄された私、実は伝説の竜を唯一従える『真の守護者』でした。~今さら国に戻れと言われても、もう遅いです~

スカッと文庫
ファンタジー
「魔力値たったの5だと? 貴様のような偽聖女、この国には不要だ!」 聖女として国を支えてきたエルナは、第一王子カイルから非情な婚約破棄を言い渡される。隣には、魔力値を偽装して聖女の座を奪った男爵令嬢の姿が。 実家からも見捨てられ、生きては戻れぬ『死の森』へ追放されたエルナ。しかし、絶望の中で彼女が目覚めさせたのは、人間には測定不能な【神聖魔力】だった。 森の奥で封印されていた伝説の銀竜を解き放ち、隣国の冷徹皇帝にその才能を見出された時、エルナを捨てた王国は滅びの危機に直面する――。 「今さら謝っても、私の結界はもうあなたたちのために張ることはありません」 捨てられた聖女が真の幸せを掴む、逆転劇がいま幕を開ける!

聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!

碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった! 落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。 オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。 ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!? *カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております