過労死した天才外科医、医療レベルが低すぎる異世界に転生。魔法と現代知識を駆使して、呪いと呼ばれた病を次々治療し聖医と呼ばれる

黒崎隼人

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第7話「王宮の診察と、蝕む呪い」

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 公開手術の成功は、ついに王宮にまで届いた。数日後、国王陛下直々の使者が俺の元を訪れ、登城を命じられた。
 荘厳な謁見の間。玉座に座る国王オルティウスは、見た目以上に衰弱しているように見えた。顔色は悪く、時折苦しそうに息をついている。

「面を上げよ、カナタとやら。そなたの噂はかねがね聞いておる」

 国王は、俺が開発した回復薬や、公開手術についていくつか質問した後、本題を切り出した。

「実は、余も原因不明の病に長年苦しめられておる。宮廷の医師や高名な神官たちも、皆そろって『呪いのせいだ』と言うばかり。そなたならば、この病の正体を見抜けるのではないかと期待しておるのだ」

 玉座から降りた国王を、別室で診察する。症状は、全身の倦怠感、食欲不振、そして時折襲ってくる激しい胸の痛み。診察を進めるうちに、俺は彼の左胸に、奇妙な痣があることに気づいた。黒く、まるで木の根のように皮膚の下を這っている。

「これは……」

 俺がその痣に触れようとした瞬間、バチッ、という音と共に、指先に鋭い痛みが走った。静電気とは違う、何か邪悪なエネルギーの奔流。
 間違いない、これは魔法的な「呪い」だ。神官たちがそう判断したのも無理はない。
 だが、俺の見立ては違った。呪いは、あくまで引き金に過ぎない。

「陛下。あなたを苦しめているのは、二つのものです」

 俺はオルティウス国王に告げた。

「一つは、確かに強力な呪いです。これが陛下の生命力を少しずつ奪っている。ですが、それだけではありません。呪いによって体の抵抗力が弱まった結果、別の病気を併発しているのです」

 詳しく調べてみると、国王の心臓に異常が見つかった。呪いの影響で心機能が低下し、慢性的な心不全に陥っているのだ。胸の痛みも、それが原因だろう。

「なんと……。では、治す手立ては?」
「二つのアプローチが必要です。まず、呪いをどうにかしなければなりません。こればかりは俺の専門外です。国で最も腕の立つ解呪師を呼んでください。そして、それと並行して、心臓の治療を俺が行います」

 俺の診断は、王宮に衝撃を与えた。「病」と「呪い」が同時に体を蝕むなど、前代未聞だったからだ。
 すぐに、国中から最も強力な力を持つとされる大司教が呼ばれ、呪いの解呪に取り掛かることになった。しかし、呪いは国王の生命力に深く根を張っており、解呪には相当な時間がかかるという。

 残された時間は少ない。俺は、呪いの力が弱まるのを待たずに、外科手術に踏み切ることを決断した。

「心臓の手術を……? 正気か!」

 宮廷医師たちは猛反対した。神聖である国王の体にメスを入れるなど、前代未聞であり、不敬極まりない行為だというのだ。

「このままでは、陛下は呪いが解ける前に心臓の病で亡くなられます。他に方法はありません」

 俺の強い説得と、俺の腕を信頼するようになった一部の者たちの後押しもあり、国王はついに手術を許可した。

「我が命、そなたに預ける。……頼んだぞ、若き聖医よ」

 いつしか俺は、人々から「聖医」と呼ばれるようになっていた。その称号の重圧を感じながら、俺は王国史上誰も成し遂げたことのない、心臓外科手術の準備に取り掛かった。それは、この国の未来そのものを背負う、あまりにも重い手術だった。
 だが、その裏で、俺の存在を快く思わない勢力が暗躍を始めていることには、まだ誰も気づいていなかった。
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