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第12章「未来へと続く、緑の道」
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大収穫祭から、さらに数年の歳月が流れました。
かつて「辺境の地」と呼ばれた不毛の大地は、今や大陸中で最も豊かで美しい土地として知られるようになり、「緑の楽園」という、輝かしい名で呼ばれています。私の領地は、ただ農作物が豊かなだけではありません。農業で得た富を元に、教育や医療も充実し、多くの人々が移り住んでくる、活気あふれる場所へと成長しました。
私は、領主としての仕事の傍ら、農業学校の校長として、生徒たちと共に新しい品種の開発に情熱を燃やしていました。
「先生! 見てください! 寒さに強い小麦の品種改良、成功です!」
「まあ、素晴らしいわ! これで、北部の寒冷地でも、冬を越せる食料が確保できますね」
若い生徒たちのエネルギーと探求心は、私にとって何よりの刺激です。彼らが、この世界の未来を、さらに緑豊かにしてくれることでしょう。私が蒔いた種は、作物だけでなく、人の心にも、確かに芽吹いていました。
そんなある日の午後。私が研究畑で生徒たちと土にまみれていると、見慣れた人物が、丘の上からこちらへ歩いてくるのが見えました。日に焼けた肌にも、上等な服にもすっかり馴染んだ、クラウス国王です。彼の訪問は、もはや日常の風景となっていました。
「やあ、セレスティア。また泥だらけだな」
「あら、クラウス。あなたこそ、また王都を抜け出してきたのですか?」
私たちは、昔のように軽口を叩き合います。生徒たちが、敬意と親しみを込めて「国王陛下!」と挨拶すると、彼は気さくに手を振って応えました。
「今日は、君に相談があって来たんだ。他でもない、貿易協定の話をしようと思ってな」
「貿易協定?」
「ああ。君のところで開発された新しい保存食の技術と、我が国が交易している南の大陸の香辛料。これを組み合わせれば、世界を変える商品が生まれると思わないか?」
彼の目は、少年のような好奇心と、王としての鋭い洞察力で輝いていました。
離婚、追放、農業、革命、そして同盟。私たちの物語は、一度は終わりを告げたはずでした。しかし、それは間違いでした。私たちの関係は、形を変えながら、今も、そしてこれからも続いていくのです。
「面白そうなお話ですわね。詳しく聞かせていただけますか?」
私は、泥のついた手をスカートで拭いながら、彼に微笑みかけました。
クラウスも、満足そうに笑い返します。
私たちの未来には、まだたくさんの挑戦と、新しい発見が待っている。この緑の道は、どこまでも、未来へと続いているのですから。
かつて「辺境の地」と呼ばれた不毛の大地は、今や大陸中で最も豊かで美しい土地として知られるようになり、「緑の楽園」という、輝かしい名で呼ばれています。私の領地は、ただ農作物が豊かなだけではありません。農業で得た富を元に、教育や医療も充実し、多くの人々が移り住んでくる、活気あふれる場所へと成長しました。
私は、領主としての仕事の傍ら、農業学校の校長として、生徒たちと共に新しい品種の開発に情熱を燃やしていました。
「先生! 見てください! 寒さに強い小麦の品種改良、成功です!」
「まあ、素晴らしいわ! これで、北部の寒冷地でも、冬を越せる食料が確保できますね」
若い生徒たちのエネルギーと探求心は、私にとって何よりの刺激です。彼らが、この世界の未来を、さらに緑豊かにしてくれることでしょう。私が蒔いた種は、作物だけでなく、人の心にも、確かに芽吹いていました。
そんなある日の午後。私が研究畑で生徒たちと土にまみれていると、見慣れた人物が、丘の上からこちらへ歩いてくるのが見えました。日に焼けた肌にも、上等な服にもすっかり馴染んだ、クラウス国王です。彼の訪問は、もはや日常の風景となっていました。
「やあ、セレスティア。また泥だらけだな」
「あら、クラウス。あなたこそ、また王都を抜け出してきたのですか?」
私たちは、昔のように軽口を叩き合います。生徒たちが、敬意と親しみを込めて「国王陛下!」と挨拶すると、彼は気さくに手を振って応えました。
「今日は、君に相談があって来たんだ。他でもない、貿易協定の話をしようと思ってな」
「貿易協定?」
「ああ。君のところで開発された新しい保存食の技術と、我が国が交易している南の大陸の香辛料。これを組み合わせれば、世界を変える商品が生まれると思わないか?」
彼の目は、少年のような好奇心と、王としての鋭い洞察力で輝いていました。
離婚、追放、農業、革命、そして同盟。私たちの物語は、一度は終わりを告げたはずでした。しかし、それは間違いでした。私たちの関係は、形を変えながら、今も、そしてこれからも続いていくのです。
「面白そうなお話ですわね。詳しく聞かせていただけますか?」
私は、泥のついた手をスカートで拭いながら、彼に微笑みかけました。
クラウスも、満足そうに笑い返します。
私たちの未来には、まだたくさんの挑戦と、新しい発見が待っている。この緑の道は、どこまでも、未来へと続いているのですから。
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