役立たずと追放された俺の農業スキル、実は作物を兵器や霊薬に進化させる最強の力でした。

黒崎隼人

文字の大きさ
10 / 14

第9章:邪神復活の予兆

しおりを挟む
 隣国ガルニアとの関係が改善し、王国に束の間の平和が訪れた。俺の研究所もますます活気づき、日々、新たな作物の研究開発に勤しんでいた。
 しかし、俺の心の中には、言いようのない不安が燻り続けていた。ガルニアで感じた、大地の生命力が失われていくような感覚。それは気のせいではなかった。
 アストリア王国内でも、原因不明の現象が起こり始めていたのだ。

「耕作顧問、大変です! 南方の穀倉地帯で、作物が一斉に立ち枯れる病気が……!」
「北の森では、魔物たちが異常に狂暴化し、被害が続出しているとの報告が!」

 次々ともたらされる悪い知らせ。俺が畑の土を調べてみると、明らかに生命エネルギーが希薄になっていた。まるで、世界全体がゆっくりと病み、死に向かっているかのようだ。
 この異常事態の原因を突き止めるため、俺とリネット王女は、王宮の地下深くにある禁書庫を訪れた。そこには、王国の創世記からの、あらゆる記録が眠っている。

 何日もかけて古文書を読み解くうち、俺たちはついに、ある一つの記述に行き着いた。

『――古の時代、世界は『邪神』により喰らい尽くされんとした。邪神は万物の生命力を糧とし、すべてを無に帰す存在なり。初代国王と聖女は、世界樹の苗木を植え、その力をもって邪神を大地の奥底に封印せり。されど、その封印は永劫にあらず。千年の時を経て、世界樹の力が衰えし時、邪神は再び目覚め、世界は闇に閉ざされるであろう――』

「邪神……」
 リネット王女が、蒼白な顔で呟く。
 書かれていた内容は、まさに今、世界で起こっている現象と一致していた。作物が枯れ、魔物が狂暴化するのは、復活しつつある邪神が、世界中から生命力を吸い上げている影響だったのだ。

「初代国王が植えたという世界樹は、今どこに?」
 俺の問いに、リネット王女は首を横に振る。
「……分かりません。その場所を示す記録は、歴史の中で失われてしまったようです」

 手がかりは完全に途絶えてしまった。このままでは、世界は邪神に喰らい尽くされてしまう。
 絶望的な状況の中、俺は一つの可能性に思い至った。
 失われたのなら、もう一度育てればいいのではないか?

「俺が、『聖なる樹』を育てます」
 俺の言葉に、リネット王女は目を見開いた。
「育てるって……そんなことが可能なのですか?」
「俺の【農業スキル】は、作物を『進化』させることができます。普通の木の苗だって、俺が育てれば、あるいは世界樹に匹敵するほどの聖なる力を持つ樹に成長させられるかもしれない」

 それは、ほとんど賭けに近い考えだった。だが、他に方法はない。
 俺は早速、王国内で最も生命力に満ちた場所を探し出し、そこに研究所の仲間たちと共に向かった。そこは、清らかな泉が湧き、古代の魔力が未だに残る『妖精の森』と呼ばれる聖域だった。
 俺は森の中心で、王家に伝わる最も古い樫の木の苗を植えた。そして、その苗に、自分の持つ魔力と生命力、そして農業スキルのすべてを注ぎ込み始めた。

「頼む……育ってくれ……!」

 俺は来る日も来る日も、苗の世話を続けた。それは、これまで育ててきたどんな作物よりも、膨大なエネルギーを必要とした。俺が力を注ぎ込むと、苗はわずかに成長するが、すぐに世界のどこかで邪神がそのエネルギーを吸い上げてしまう。まるで、邪神と生命力の綱引きをしているようだった。
 俺が疲労で倒れそうになると、ミーヤが心配そうに寄り添い、ガルムが護衛として周囲を警戒し、リネット王女が王宮から持ってきた貴重なポーションで俺を回復させてくれた。

 仲間たちの支えを受けながら、俺は必死に聖なる樹を育て続けた。苗は、俺たちの想いに応えるかのように、少しずつ、しかし確実に成長していく。淡い光を放ち始めた幹は、邪神の放つ邪悪な瘴気をわずかながら押し返しているようだった。
 だが、邪神の復活もまた、刻一刻と近づいていた。空は日に日に暗さを増し、大地の亀裂からは、邪悪な魔物たちが這い出してくるようになった。
 俺たちの聖なる樹が、邪神の完全復活を阻止するだけの力を得るのが先か。それとも、世界が邪神に飲み込まれるのが先か。

 世界の命運を懸けた、時間との戦いが始まっていた。俺は、聖なる樹の若木に手を触れ、静かに語りかけた。
「お前だけが、希望なんだ。俺たちの未来を、頼んだぞ」
 若木は、その言葉に応えるように、ひときわ強い光を放った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

平凡な村人だと思われていた俺、実は神々が恐れる最強存在でした〜追放されたけど、無自覚チートで気づけば世界の頂点〜

uzura
ファンタジー
平凡な村人・レオンは、勇者パーティの荷物持ちとして蔑まれ、ある日「役立たず」として追放される。 だが、彼の正体は神々が恐れ、世界の理を超越する“創世の加護”を持つ唯一の存在だった。 本人はまったくの無自覚——それでも歩くたび、出会うたび、彼によって救われ、惹かれていく者たちが増えていく。 裏切った勇者たちは衰退し、彼を捨てた者たちは後悔に沈む。 やがて世界は、レオン中心に回り始める。 これは、最弱を装う最強が、知らぬ間に神々を超える物語。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

勇者パーティを追放された地味な器用貧乏は、 魔王軍の女騎士とスローライフを送る

ちくわ食べます
ファンタジー
勇者パーティから「地味、英雄譚の汚点」と揶揄され追放された器用貧乏な裏方の僕。 帰る場所もなく死の森を彷徨っていたところ、偶然にも重傷を負った魔王軍四天王で最強の女騎士「黒鉄剣のリューシア」と遭遇する。 敵同士のはずなのに、なぜか彼女を放っておけなくて。治療し、世話をし、一緒に暮らすことになった僕。 これは追放された男と、敗北を重ね居場所を失った女の物語。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

処理中です...