「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人

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第12話「激闘、天穿の霊峰」

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 天穿の霊峰は、その名の通り天を突き刺すかのようにそびえ立っていた。
 麓から見上げるだけで、その圧倒的な存在感に気圧される。
 山全体が強力な魔力に覆われておりテレポートでの侵入は不可能だった。俺たちは麓のベースキャンプから、自らの足でダンジョン内部へと挑むことになる。

「うわ……さ、寒いです……」

 ダンジョンの入り口に立っただけでリリアが小さく身を震わせた。
 内部からは骨まで凍てつくような冷気が吹き付けてくる。
 俺たちは支給された防寒具をしっかりと着込み、一歩、また一歩と氷でできた洞窟の中へと足を踏み入れた。

「レイン、マップの様子はどうだ?」

 バルガスが警戒しながら周囲を見回す。

「ああ。たった今、構造が変わった。ここの壁、さっきまでは通路だったはずだ」

 俺の脳内マップはリアルタイムでダンジョンの構造変化を捉え、常に最新の地図を更新し続けている。
 まるで生き物の体内にいるようだ。
 これでは普通の地図製作者では全く歯が立たないだろう。

「まずは第一階層のボス部屋を目指す。最短ルートを行くぞ」

 俺の先導で、俺たちは複雑怪奇な氷の迷宮を進んでいく。
 襲いかかってくるのは氷でできたゴーレムや吹雪を操るエレメンタルといった、寒冷地帯特有の魔物ばかりだ。

「はあああっ!」

 バルガスが氷のゴーレムを戦斧で粉々に砕く。
 彼の呼気は白く凍りついていた。

「リリア!右後方、三体!」

「はい!凍てつけ、氷の槍(アイス・ランス)!」

 リリアの魔法がエレメンタルを正確に撃ち抜く。
 ここでは雷魔法よりも氷魔法の方が効果的だ。彼女は状況に応じて的確に魔法を使い分けている。
 俺は『道標の守護印』で仲間たちを護りながら、常に全体の戦況を把握し指示を出し続けた。

 順調にダンジョンを攻略していく俺たち。
 しかし階層を下るにつれてダンジョンの構造変化はより激しく、複雑になっていく。
 時には進んできた道が目の前で壁になったり、突然足元に巨大なクレバスが出現したりもした。

「くそっ、キリがねえな!」

 バルガスが疲労の色を浮かべ始める。
 リリアも魔力の消耗が激しいようだ。
 俺たちは安全な場所を見つけては、小まめに休息を取る必要があった。

 そして挑戦から五日目。
 俺たちはついに第五階層のボス部屋の前にたどり着いた。
 これまでどのパーティーもこの第五階層を突破できずに撤退している。
 ここからが本当の正念場だ。

「準備はいいか、二人とも」

 俺の問いに二人は力強くうなずいた。
 覚悟を決めて巨大な氷の扉を開ける。

 その先にいたのは一体の巨大なドラゴンだった。
 その鱗はまるでダイヤモンドのように輝き、吐き出す息は全てを凍てつかせる絶対零度の吹雪。
 エンシェント・ウィンタードラゴン。
 Sランクに分類される伝説級の魔物だ。

「グルルルルル……」

 ドラゴンは侵入者である俺たちを、冷たい瞳で見据えている。

「やべえな……こいつは今までの奴らとは格が違うぜ……」

 バルガスがゴクリと喉を鳴らす。
 そのプレッシャーだけで身体が凍りつきそうだ。

「リリア、距離を取って魔法の準備を!バルガスさんは俺と一緒に奴の注意を引く!」

「おう!」
「はい!」

 俺とバルガスが左右に分かれてドラゴンに迫る。
 ドラゴンはターゲットを俺に定めたのか巨大な口を開け、ブレスを放ってきた。

「テレポート!」

 俺は瞬時にその場から転移しブレスを回避する。
 俺がいた場所は一瞬で巨大な氷の柱と化していた。
 かすっただけでも即死は免れないだろう。

「こっちだ、トカゲ野郎!」

 バルガスがドラゴンの脚に戦斧を叩きつける。
 ガキン!と硬い音はしたが、分厚い鱗に阻まれほとんどダメージは与えられていない。

『硬すぎる……!どうすれば……』

 俺はマップでドラゴンの情報を詳細に分析する。
 弱点は眉間にある逆鱗。だが常に魔力で守られており、並大抵の攻撃では届かない。
 そしてもう一つの弱点。それは翼の付け根。そこだけ鱗が薄くなっている。

『そこを狙うしかない!』

「バルガス!奴を挑発して体勢を崩させろ!」
「へっ、お安い御用だ!」

 バルガスはドラゴンの周りを動き回り、執拗に攻撃を繰り返す。
 鬱陶しそうにドラゴンが前脚を振り上げた。
 その瞬間、翼の付け根が無防備に晒される。

「リリア、今だ!座標は送った!」

「届けぇぇぇっ!――神雷!」

 リリアがこのダンジョンに入って初めて、とっておきの雷魔法を放った。
 一条の光となった雷撃は寸分の狂いもなく、ドラゴンの翼の付け根を撃ち抜いた。

「ギィヤアアアアア!」

 さすがのドラゴンもこれにはたまらず悲鳴を上げる。
 体勢を崩し大きくよろめいた。
 眉間を守っていた魔力のバリアが、一瞬だけ薄くなる。

『この好機、逃すものか!』

 俺はアイテムポーチから、バルガスに作ってもらった特殊な爆弾――『竜穿甲(りゅうせんこう)』を取り出した。
 ドラゴンの硬い鱗を貫くためだけに作られた一品物の兵器だ。

「バルガス!奴の頭に俺を投げ飛ばせ!」
「正気か、お前!?」
「いいから、早く!」

 俺の覚悟を悟ったバルガスは一瞬ためらった後、ニヤリと笑った。

「面白い!しっかり掴まってな、リーダー!」

 バルガスは俺の身体を軽々と持ち上げると、回転をつけやり投げの選手のようにドラゴンの頭部めがけて全力で放り投げた。

 風を切って俺の身体が飛んでいく。
 眼前に巨大なドラゴンの顔が迫る。
 俺は狙いを定め、眉間の逆鱗に『竜穿甲』を叩きつけた。

 そしてドラゴンの頭を踏み台にして後方へと跳躍する。
 空中で体勢を整えテレポートでリリアたちの元へと帰還した、その直後。

 ドゴォォォォォォン!!

 竜穿甲が凄まじい爆発を起こした。
 ドラゴンの眉間から黒い煙が上がる。
 魔力バリアを失った逆鱗は完全に破壊されていた。

「グルオオオオオオオオ……」

 エンシェント・ウィンタードラゴンは断末魔の叫びを上げると巨体を横たえ、動かなくなった。
 静寂が広間を支配する。

「……はあ、はあ……やった、のか……?」

 俺たちはその場にへたり込んだ。
 満身創痍だった。だが確かに、勝ったのだ。
 俺たち三人の力を合わせ、伝説級の魔物を打ち倒した。
 その達成感がじわじわと身体中に広がっていった。
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