『鑑定』がゴミだと勇者パーティを追放された俺、辺境で伝説の道具屋を開いたら、最強の女剣士と元聖女に懐かれて幸せなスローライフを満喫中

黒崎隼人

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第12章:ざまぁの果て、そして新しい国の夜明け

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 俺が領主としてフロンティアの発展に尽力している頃、かつての栄光のパーティ『太陽の剣』は、その名を聞くことさえないほどに落ちぶれていた。
 起死回生を狙ったダンジョン攻略の失敗により、パーティは事実上の崩壊。
 重傷を負った重戦士ボルグは、二度と重い鎧を着ることはできなくなり、冒険者を引退。故郷の田舎で、静かに畑を耕しているという。
 魔法使いのレナは、魔力回路の損傷により、高位の魔法を操ることができなくなった。プライドの高い彼女は、三流魔術師として日銭を稼ぐ屈辱に耐えられず、いつしか王都から姿を消したと聞いた。
 そして、リーダーだった勇者ガイ。
 彼は、仲間を失い、Sランクの地位も、名声も、すべてを失った。聖剣もヒビが入ったまま修理する金もなく、冒険者ギルドからの依頼も来なくなった。彼は現実から逃げるように、王都の安酒場で昼間から酒を煽るだけの、しがない酔っぱらいに成り下がっていた。
「俺は……勇者なんだぞ……。アル……あいつさえいれば……」
 彼は、今さらながらに、自分が犯した過ちの大きさに気づいていた。だが、それを認めることも、やり直すこともできず、ただ過去の栄光と後悔に溺れるだけの日々を送っていた。自業自得、という言葉が、これほど似合う男もいないだろう。
 これが、俺を追放した者たちの末路。『ざまぁ』と笑う気にもなれなかった。ただ、彼らが選んだ道の先にある、当然の結末がそこにあるだけだった。

 一方、俺が治めるフロンティアは、もはや「辺境の町」という呼び名が似合わないほどの大都市へと成長していた。
 豊かな農作物、豊富な鉱物資源、そして俺が生み出す高品質なアイテム。それらを求めて、王国中から、いや、大陸中から商人が訪れるようになり、フロンティアは新たな経済と文化の中心地となりつつあった。
 俺は領主として、学校や病院を建て、インフラを整備した。リナが率いる『フロンティア騎士団』は、領内の治安を完璧に守り、セラが管理する教会は、人々の心の拠り所となっていた。
 俺の周りには、いつの間にか多くの仲間が集まっていた。俺の技術を学びたいという若い職人たち、フロンティアの未来を信じて移住してきた有能な官僚たち、そして、俺を慕ってくれる領民たち。
 領主の館のバルコニーから、活気あふれる自分の街を眺める。隣には、リナとセラが、いつものように穏やかな笑顔で立っている。
「すごい街になったな、アル」
「はい。これも、アルさんの人徳の賜物ですわ」
「違うよ。二人と、みんながいてくれたからだ」
 俺たちは、顔を見合わせて笑い合った。
 このフロンティアは、もはや王国の一領地という枠には収まらない、一つの独立した「国」のような存在になっていた。自由で、豊かで、誰もが自分の価値を認められ、笑って暮らせる国。
 かつて、パーティで居場所をなくし、絶望していた俺が、こんな場所を築くことになるなんて、夢にも思わなかった。
 俺は、この新しい国で、大切な仲間たちと共に、これからも生きていく。
 空には、フロンティアの新たな夜明けを告げる太陽が、明るく輝いていた。
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