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第8話「再会、あるいは断罪の始まり」
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「久しぶりだな、アルス、セリア。それに、みんなも」
リアムは、まるで道端で旧友に会ったかのような、軽い口調で言った。だが、その声には一片の温かみもなく、瞳は絶対零度の氷のように冷え切っている。
そのただならぬ雰囲気に、アルスは一瞬たじろいだが、すぐに虚勢を張って胸を反らした。
「り、リアム! てめえ、こんな所で王様ごっこか? ずいぶん偉くなったじゃねえか」
「王様ごっこ、ね。まあ、お前にはそう見えるのかもしれないな」
リアムは肩をすくめ、全く意に介していない様子だ。その余裕の態度が、アルスの神経を逆なでした。
「ふざけるな! てめえがどんな手を使ったのかは知らねえが、その力は本来、俺たち勇者パーティーのために、国のために使われるべきもんだ! さっさと荷物をまとめて、俺たちと王都に帰るぞ!」
あまりにも一方的で、傲慢な物言い。まるで、飼い犬に「戻ってこい」と命じるかのようだ。周囲で見ていたエデンの住民たちが、ざわめき始める。自分たちの敬愛する領主に向かって、なんという無礼な口をきくのかと。
だが、リアムは落ち着き払っていた。
「断る」
たった一言。しかし、そこには決して覆ることのない、鋼のような意志が込められていた。
「な…なんだと…? 俺の命令が聞けねえってのか!」
「命令? 笑わせるな。お前は俺を追放したんだろう? 『もう用済みだ』って。俺とお前たちの間には、もう何の関係もないはずだ。違うか?」
リアムの正論に、アルスはぐうの音も出ない。顔を真っ赤にして、わなわなと震えている。
そんなアルスを尻目に、今度はセリアが一歩前に進み出た。彼女は悲劇のヒロインを演じるかのように、潤んだ瞳でリアムを見つめる。
「リアム…! 私、ずっとあなたのことを心配していたのよ。あんな形であなたを追い出すことになって、私も心を痛めていたわ。でも、こうしてあなたが立派になって、本当に嬉しい」
白々しい演技に、内心で吐き気を催した。よくもまあ、ここまでスラスラと嘘が出てくるものだ。
「お願い、リアム。私たち、もう一度やり直しましょう? あなたのその素晴らしい力と、私の聖なる力があれば、きっと世界を救えるわ。私、あなたの婚約者ですもの。あなたの隣にいる権利があるはずよ」
セリアはそう言うと、俺の腕に手を伸ばしてきた。
パシン。
乾いた音が広場に響く。俺は、彼女の手を容赦なく振り払っていた。
「…触るな」
地を這うような低い声が、自分でも驚くほど冷たく響いた。
「き、きゃ…」
セリアは、まるで汚いものでも見るかのような俺の視線に射抜かれ、怯えたように後ずさる。
「婚約者? 寝言は寝て言え。俺たちの婚約は、お前が俺を裏切り、アルスを選んだあの日に終わったんだ。お前は自分の意思で俺を捨てた。違うか?」
「そ、それは…アルス様がどうしてもと…私は逆らえなくて…」
「見苦しい言い訳はやめろ。それに、君の鑑定結果を教えてやろうか?」
俺はセリアを指さし、スキルを発動するフリをした。
「【名称】性悪な元婚約者。【情報】自分の都合で男を乗り換える、性根の腐った女。今さら俺に媚を売っても、手遅れだ」
「ひっ…!」
セリアは顔を真っ青にして、へなへなと地面に座り込んだ。俺が言ったのは、もちろんただのはったりだ。人にスキルは使えない。だが、彼女の罪悪感を的確に抉るには、十分すぎる一撃だった。
俺のあまりの変貌ぶりと、揺るぎない拒絶の意志を目の当たりにして、アルスたちはようやく理解し始めたのかもしれない。目の前にいるのは、もはや自分たちが知っている、気弱で言いなりだったリアムではない、と。
だが、勇者としてのプライドが、それを認めることを許さなかった。
「…リアム」
アルスの声は、怒りで震えていた。
「てめえ、少しばかり力が使えるようになったからって、調子に乗るのも大概にしろよ。誰のおかげで、てめえが今まで生きてこられたと思ってるんだ」
「お前たちのおかげ? 違うな。俺はただ、お前たちに寄生され、利用されていただけだ。もう、うんざりなんだよ」
「…そうか。そこまで言うなら、もう言葉は必要ねえな」
アルスは、腰に提げた聖剣に手をかけた。その瞳には、明確な殺意が宿っている。
「力ずくでも、てめえを連れ戻す。そのひねくれた根性も、叩き直してやる!」
「アルス様、おやめください!」
衛兵たちが慌てて制止しようとするが、アルスはそれを振り払い、聖剣を引き抜いた。まばゆい光を放つ剣先が、真っ直ぐに俺へと向けられる。
広場に緊張が走る。エデンの住民たちは、固唾をのんで俺を見守っていた。
だが、俺は冷静だった。むしろ、こうなることを予測していた。
「…やれやれ。やっぱり、お前はそういう奴だったな、アルス」
俺は小さくため息をつくと、後ろに控えていた衛兵たちに命じた。
「全員、武器を捨てて民と共に城壁の内側へ。ここは危険だ」
「し、しかしリアム様!」
「いいから行け。これは命令だ」
俺の有無を言わさぬ口調に、衛兵たちはしぶしぶ従い、民衆を避難させ始めた。やがて、広場には俺と、殺気立つ勇者パーティーだけが残された。
「どうした、リアム? 怖気づいて逃げ出す準備か?」
アルスが嘲笑する。
「勘違いするな。お前たちを、この街に入れるわけにはいかないだけだ」
俺はゆっくりと踵を返し、城門の方へと歩き出す。
「待て、どこへ行く!」
「お前たちの相手は、俺一人で十分だ。――このエデンの『外』でな」
俺の言葉の真意を測りかね、アルスたちは怪訝な顔で俺の後を追う。
これから始まるのは、単なる戦闘ではない。
これは、俺が過去のすべてに決着をつけるための、断罪の儀式だ。そして、彼らに自分たちが犯した過ちの大きさを、骨の髄まで思い知らせてやるための。
俺は、分厚い城門を背に、ゆっくりと振り返った。さあ、始めようか。お前たちの絶望の幕開けを。
リアムは、まるで道端で旧友に会ったかのような、軽い口調で言った。だが、その声には一片の温かみもなく、瞳は絶対零度の氷のように冷え切っている。
そのただならぬ雰囲気に、アルスは一瞬たじろいだが、すぐに虚勢を張って胸を反らした。
「り、リアム! てめえ、こんな所で王様ごっこか? ずいぶん偉くなったじゃねえか」
「王様ごっこ、ね。まあ、お前にはそう見えるのかもしれないな」
リアムは肩をすくめ、全く意に介していない様子だ。その余裕の態度が、アルスの神経を逆なでした。
「ふざけるな! てめえがどんな手を使ったのかは知らねえが、その力は本来、俺たち勇者パーティーのために、国のために使われるべきもんだ! さっさと荷物をまとめて、俺たちと王都に帰るぞ!」
あまりにも一方的で、傲慢な物言い。まるで、飼い犬に「戻ってこい」と命じるかのようだ。周囲で見ていたエデンの住民たちが、ざわめき始める。自分たちの敬愛する領主に向かって、なんという無礼な口をきくのかと。
だが、リアムは落ち着き払っていた。
「断る」
たった一言。しかし、そこには決して覆ることのない、鋼のような意志が込められていた。
「な…なんだと…? 俺の命令が聞けねえってのか!」
「命令? 笑わせるな。お前は俺を追放したんだろう? 『もう用済みだ』って。俺とお前たちの間には、もう何の関係もないはずだ。違うか?」
リアムの正論に、アルスはぐうの音も出ない。顔を真っ赤にして、わなわなと震えている。
そんなアルスを尻目に、今度はセリアが一歩前に進み出た。彼女は悲劇のヒロインを演じるかのように、潤んだ瞳でリアムを見つめる。
「リアム…! 私、ずっとあなたのことを心配していたのよ。あんな形であなたを追い出すことになって、私も心を痛めていたわ。でも、こうしてあなたが立派になって、本当に嬉しい」
白々しい演技に、内心で吐き気を催した。よくもまあ、ここまでスラスラと嘘が出てくるものだ。
「お願い、リアム。私たち、もう一度やり直しましょう? あなたのその素晴らしい力と、私の聖なる力があれば、きっと世界を救えるわ。私、あなたの婚約者ですもの。あなたの隣にいる権利があるはずよ」
セリアはそう言うと、俺の腕に手を伸ばしてきた。
パシン。
乾いた音が広場に響く。俺は、彼女の手を容赦なく振り払っていた。
「…触るな」
地を這うような低い声が、自分でも驚くほど冷たく響いた。
「き、きゃ…」
セリアは、まるで汚いものでも見るかのような俺の視線に射抜かれ、怯えたように後ずさる。
「婚約者? 寝言は寝て言え。俺たちの婚約は、お前が俺を裏切り、アルスを選んだあの日に終わったんだ。お前は自分の意思で俺を捨てた。違うか?」
「そ、それは…アルス様がどうしてもと…私は逆らえなくて…」
「見苦しい言い訳はやめろ。それに、君の鑑定結果を教えてやろうか?」
俺はセリアを指さし、スキルを発動するフリをした。
「【名称】性悪な元婚約者。【情報】自分の都合で男を乗り換える、性根の腐った女。今さら俺に媚を売っても、手遅れだ」
「ひっ…!」
セリアは顔を真っ青にして、へなへなと地面に座り込んだ。俺が言ったのは、もちろんただのはったりだ。人にスキルは使えない。だが、彼女の罪悪感を的確に抉るには、十分すぎる一撃だった。
俺のあまりの変貌ぶりと、揺るぎない拒絶の意志を目の当たりにして、アルスたちはようやく理解し始めたのかもしれない。目の前にいるのは、もはや自分たちが知っている、気弱で言いなりだったリアムではない、と。
だが、勇者としてのプライドが、それを認めることを許さなかった。
「…リアム」
アルスの声は、怒りで震えていた。
「てめえ、少しばかり力が使えるようになったからって、調子に乗るのも大概にしろよ。誰のおかげで、てめえが今まで生きてこられたと思ってるんだ」
「お前たちのおかげ? 違うな。俺はただ、お前たちに寄生され、利用されていただけだ。もう、うんざりなんだよ」
「…そうか。そこまで言うなら、もう言葉は必要ねえな」
アルスは、腰に提げた聖剣に手をかけた。その瞳には、明確な殺意が宿っている。
「力ずくでも、てめえを連れ戻す。そのひねくれた根性も、叩き直してやる!」
「アルス様、おやめください!」
衛兵たちが慌てて制止しようとするが、アルスはそれを振り払い、聖剣を引き抜いた。まばゆい光を放つ剣先が、真っ直ぐに俺へと向けられる。
広場に緊張が走る。エデンの住民たちは、固唾をのんで俺を見守っていた。
だが、俺は冷静だった。むしろ、こうなることを予測していた。
「…やれやれ。やっぱり、お前はそういう奴だったな、アルス」
俺は小さくため息をつくと、後ろに控えていた衛兵たちに命じた。
「全員、武器を捨てて民と共に城壁の内側へ。ここは危険だ」
「し、しかしリアム様!」
「いいから行け。これは命令だ」
俺の有無を言わさぬ口調に、衛兵たちはしぶしぶ従い、民衆を避難させ始めた。やがて、広場には俺と、殺気立つ勇者パーティーだけが残された。
「どうした、リアム? 怖気づいて逃げ出す準備か?」
アルスが嘲笑する。
「勘違いするな。お前たちを、この街に入れるわけにはいかないだけだ」
俺はゆっくりと踵を返し、城門の方へと歩き出す。
「待て、どこへ行く!」
「お前たちの相手は、俺一人で十分だ。――このエデンの『外』でな」
俺の言葉の真意を測りかね、アルスたちは怪訝な顔で俺の後を追う。
これから始まるのは、単なる戦闘ではない。
これは、俺が過去のすべてに決着をつけるための、断罪の儀式だ。そして、彼らに自分たちが犯した過ちの大きさを、骨の髄まで思い知らせてやるための。
俺は、分厚い城門を背に、ゆっくりと振り返った。さあ、始めようか。お前たちの絶望の幕開けを。
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