無能と追放された鑑定士の俺、実は未来まで見通す超チートスキル持ちでした。のんびりスローライフのはずが、気づけば伝説の英雄に!?

黒崎隼人

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第10話:守るための力

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 嘆きの洞窟は、ミモザ村から半日ほど歩いた山脈の麓に、不気味な口を開けていた。
 入り口からして、邪悪な瘴気が漂っているのがわかる。

「ここが……」

 フィーが緊張した面持ちで呟く。
 彼女の手には、一族に代々伝わるという古い槍が握られていた。
 俺は洞窟に入る前に、その槍を【万物鑑定】する。

【白狼族の古槍】
【状態:真名が封印されている】
【真名解放条件:装備者が、守るべき者のために戦うという強い決意を込め、『目覚めよ、フェンリルハウル』と唱えること】
【真名:月穿つ遠吠え(ゲイル・ハウル)】
【効果:装備者の闘気を刃に変え、遠距離に斬撃を放つことが可能になる】

「フィー。その槍には、まだ隠された力がある」

 俺は鑑定で得た情報を彼女に伝えた。
 フィーは驚きながらも、俺の言葉を信じて槍を強く握りしめる。

「弟を……仲間を、守るために!」

 彼女がそう決意を込めて唱えると、槍は眩い光を放ち、刀身に美しい文様が浮かび上がった。

「これが……!」
「さあ、行こう。俺が的確にナビゲートする」

 洞窟の内部は、入り組んだ迷路のようになっていたが、俺の鑑定の前には無意味だった。

「三つ目の分岐を右だ。左は行き止まりで、スライムの群生地がある」
「この先の広場、中央にケイブベアーがいる。まずは周囲の小型の魔物から片付けるぞ。ルナ、十時の方向、岩陰にいるゴブリンを頼む」
「お任せください!」

 ルナが放った矢は、吸い込まれるようにして岩陰に隠れていたゴブリンを射抜く。
 俺の的確な指示と、ルナの完璧な援護射撃。
 それに、仲間を守るという決意で覚醒したフィーの力が加わる。

「はぁっ!」

 フィーが槍を振るうと、銀色の斬撃が飛び、離れた場所にいたコボルトを両断した。

「すごい……! こんな力が、私に……!」

 彼女自身、その力に驚いているようだった。

 そして、ついに俺たちは洞窟の最深部にたどり着いた。
 そこには、体長5メートルはあろうかという巨大な熊の魔物、ケイブベアーが眠っていた。
 その傍らには、青白く光る『月の雫茸』が群生している。
 俺たちが足を踏み入れた瞬間、ケイブベアーが目を覚まし、凄まじい咆哮を上げた。

「グルオオオオオオッ!!」

 Aランク魔物の威圧感は凄まじく、フィーとルナの動きがわずかに固くなる。

「怯むな! こいつの弱点は腹部の古傷だ!」

 俺が叫ぶ。
 同時に、シロが前に出た。
 普段は愛らしい子犬の姿だが、敵を前にしたシロの体は見る見るうちに巨大化していく。
 ものの数秒で、ケイブベアーと遜色ないほどの大きさの、神々しい白狼へと姿を変えた。

「アウウウウウウーン!」

 聖獣フェンリルの威圧的な遠吠えが、洞窟中に響き渡る。
 格下の魔物であるケイブベアーは、本能的な恐怖で明らかに怯んだ。
 その隙を、俺たちが見逃すはずがない。

「ルナ、目を狙え! フィー、足止めを頼む!」

 ルナの矢がケイブベアーの右目を正確に射抜き、怯んだところにフィーの斬撃が足を切り裂く。
 巨体がバランスを崩し、無防備な腹を晒した。

「今だ!」

 俺の合図で、フィーが全闘気を込めた槍を突き出す。
 覚醒した彼女の一撃は、ケイブベアーの硬い皮膚を貫き、弱点である古傷を正確に抉った。
 ケイブベアーは断末魔の叫びを上げ、巨体を横たえる。
 見事な連携だった。
 アルノの完璧な指揮、ルナの精密射撃、フィーの覚醒した突破力、そしてシロの聖獣としての圧倒的な力。
 まるで一つの生き物のように連動し、格上の魔物を完璧に打ち破ったのだ。

 俺たちは無事に『月の雫茸』を手に入れた。
 村に戻る道すがら、フィーは深々と俺に頭を下げた。

「アルノ様……本当に、なんとお礼を言ったらいいか……。私の命も、弟の命も、あなたに救われました。この御恩、一生をかけてお返しします。どうか、私をあなたのそばに置いてください!」

 その忠誠心に満ちた瞳は、かつてのルナと同じくらい真っ直ぐだった。

「ああ、もちろんだ。ようこそ、フィー。俺たちの仲間へ」

 こうして、また一人、かけがえのない仲間が加わった。
 俺のスローライフは、日に日に賑やかになっていく。
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