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第12話「英雄の誕生と新たなギルド」
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厄災の刻が過ぎ去った街には、復興の槌音と人々の活気が戻りつつあった。
あの一件で、俺の名声は揺るぎないものとなった。街を救った英雄、そして天才錬金術師。誰もが俺に敬意を払い、信頼を寄せてくれた。
約束通り、「紅蓮の牙」の全資産は俺、相川慧に譲渡された。かつて俺が追い出された、あのギルドハウスの執務室。そのマスターの椅子に、今、俺が座っている。なんとも不思議な気分だ。
「まさか、俺がギルドマスターになるなんてな……」
隣に立つエマとゴードンに、思わず苦笑いを漏らす。
「師匠なら当然です! きっと、素晴らしいギルドになりますよ!」
「うむ。お前さんなら、冒険者たちの気持ちが分かるマスターになれるだろう」
二人が、温かい笑顔で俺を励ましてくれる。
俺は、「紅蓮の牙」を解体し、全く新しいギルドとして再出発させることにした。その名も、『アイカワ冒険者相互扶助組合』。通称、『アイカワギルド』だ。
営利目的ではなく、冒険者の生活と安全を第一に考える互助組織。それが、俺の目指すギルドの形だった。
まずは、ギルドのポーションを全てアイカワ商会の高品質なものに入れ替えた。さらに、クエストの報酬体系を見直し、危険な依頼には相応のボーナスが出るようにした。装備の修理工房を誘致し、訓練施設も拡充した。
俺の改革は、冒険者たちから熱烈に歓迎された。他の街からも噂を聞きつけた腕利きの冒険者たちが、次々と移籍してくるようになった。
かつてダリオの悪政で寂れていたギルドは、俺がマスターになってからわずか数ヶ月で、大陸でも有数の活気あふれるギルドへと生まれ変わったのだ。
ある晴れた日の午後。俺はギルドのテラスで、復興が進む街並みを眺めていた。
「ケイさん、ここにいたのか」
声をかけてきたのは、アルフォード辺境伯だった。彼は今や、友人として気兼ねなく俺に会いに来てくれる。
「領主様。ええ、少し休憩を」
「君のおかげで、街はすっかり元気を取り戻したよ。アイカワギルドの評判も、王都にまで届いている」
アルフォード卿は、満足そうにうなずいた。
「それでな、今日は君に一つ提案があるんだ」
「提案、ですか?」
「うむ。君を、我が辺境伯家の食客、いや、筆頭錬金術師として正式に迎え入れたい。男爵位も用意しよう。どうだろうか?」
貴族への誘い。それは、この世界で生きていく上でこの上ない名誉だろう。
だが、俺は穏やかに首を横に振った。
「お気持ちは大変ありがたいのですが、俺は、この街で、このギルドでみんなと一緒に生きていきたいんです。商人として、ギルドマスターとして、やるべきことがまだたくさんありますから」
俺の答えを聞いて、アルフォード卿は少し驚いた顔をしたが、すぐに納得したように優しく微笑んだ。
「……そうか。君らしい答えだな。分かった。だが、これからも友人として、この街の盟主として、君の力を貸してほしい」
「もちろんです」
俺たちは、固い握手を交わした。
権力や名誉よりも、大切なものがここにはある。信頼できる仲間たちと、穏やかで充実した毎日。それこそが、俺が本当に求めていたものだった。
追放された時は全てを失ったと思った。だが、あの経験があったからこそ、俺は自分の力の本当の意味を知り、かけがえのない仲間たちと出会えた。
ふと見ると、ギルドの酒場ではエマが冒険者たちに薬の調合を教え、ゴードンが若者たちの剣の稽古をつけてやっていた。その周りには、たくさんの笑顔が溢れている。
それが、俺が作りたかった場所。俺の居場所だ。
元植物学者の俺が異世界で手に入れたのは、最強の戦闘能力でも、世界を支配する力でもなかった。
それは、誰も見向きもしなかったガラクタから無限の価値を生み出す知識とスキル。そして、人と人との絆だった。
大陸一の大商人にして、最高のギルドマスター。
俺の成り上がりは、まだ始まったばかりだ。
この穏やかで豊かなスローライフを守るため、そして、まだ見ぬ未知の素材への探究心を満たすため、俺の挑戦はこれからも続いていく。
異世界の空は、どこまでも青く澄み渡っていた。
あの一件で、俺の名声は揺るぎないものとなった。街を救った英雄、そして天才錬金術師。誰もが俺に敬意を払い、信頼を寄せてくれた。
約束通り、「紅蓮の牙」の全資産は俺、相川慧に譲渡された。かつて俺が追い出された、あのギルドハウスの執務室。そのマスターの椅子に、今、俺が座っている。なんとも不思議な気分だ。
「まさか、俺がギルドマスターになるなんてな……」
隣に立つエマとゴードンに、思わず苦笑いを漏らす。
「師匠なら当然です! きっと、素晴らしいギルドになりますよ!」
「うむ。お前さんなら、冒険者たちの気持ちが分かるマスターになれるだろう」
二人が、温かい笑顔で俺を励ましてくれる。
俺は、「紅蓮の牙」を解体し、全く新しいギルドとして再出発させることにした。その名も、『アイカワ冒険者相互扶助組合』。通称、『アイカワギルド』だ。
営利目的ではなく、冒険者の生活と安全を第一に考える互助組織。それが、俺の目指すギルドの形だった。
まずは、ギルドのポーションを全てアイカワ商会の高品質なものに入れ替えた。さらに、クエストの報酬体系を見直し、危険な依頼には相応のボーナスが出るようにした。装備の修理工房を誘致し、訓練施設も拡充した。
俺の改革は、冒険者たちから熱烈に歓迎された。他の街からも噂を聞きつけた腕利きの冒険者たちが、次々と移籍してくるようになった。
かつてダリオの悪政で寂れていたギルドは、俺がマスターになってからわずか数ヶ月で、大陸でも有数の活気あふれるギルドへと生まれ変わったのだ。
ある晴れた日の午後。俺はギルドのテラスで、復興が進む街並みを眺めていた。
「ケイさん、ここにいたのか」
声をかけてきたのは、アルフォード辺境伯だった。彼は今や、友人として気兼ねなく俺に会いに来てくれる。
「領主様。ええ、少し休憩を」
「君のおかげで、街はすっかり元気を取り戻したよ。アイカワギルドの評判も、王都にまで届いている」
アルフォード卿は、満足そうにうなずいた。
「それでな、今日は君に一つ提案があるんだ」
「提案、ですか?」
「うむ。君を、我が辺境伯家の食客、いや、筆頭錬金術師として正式に迎え入れたい。男爵位も用意しよう。どうだろうか?」
貴族への誘い。それは、この世界で生きていく上でこの上ない名誉だろう。
だが、俺は穏やかに首を横に振った。
「お気持ちは大変ありがたいのですが、俺は、この街で、このギルドでみんなと一緒に生きていきたいんです。商人として、ギルドマスターとして、やるべきことがまだたくさんありますから」
俺の答えを聞いて、アルフォード卿は少し驚いた顔をしたが、すぐに納得したように優しく微笑んだ。
「……そうか。君らしい答えだな。分かった。だが、これからも友人として、この街の盟主として、君の力を貸してほしい」
「もちろんです」
俺たちは、固い握手を交わした。
権力や名誉よりも、大切なものがここにはある。信頼できる仲間たちと、穏やかで充実した毎日。それこそが、俺が本当に求めていたものだった。
追放された時は全てを失ったと思った。だが、あの経験があったからこそ、俺は自分の力の本当の意味を知り、かけがえのない仲間たちと出会えた。
ふと見ると、ギルドの酒場ではエマが冒険者たちに薬の調合を教え、ゴードンが若者たちの剣の稽古をつけてやっていた。その周りには、たくさんの笑顔が溢れている。
それが、俺が作りたかった場所。俺の居場所だ。
元植物学者の俺が異世界で手に入れたのは、最強の戦闘能力でも、世界を支配する力でもなかった。
それは、誰も見向きもしなかったガラクタから無限の価値を生み出す知識とスキル。そして、人と人との絆だった。
大陸一の大商人にして、最高のギルドマスター。
俺の成り上がりは、まだ始まったばかりだ。
この穏やかで豊かなスローライフを守るため、そして、まだ見ぬ未知の素材への探究心を満たすため、俺の挑戦はこれからも続いていく。
異世界の空は、どこまでも青く澄み渡っていた。
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