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第5話「拒絶から信頼への一歩」
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子供を救った一件は、リリアに対する集落の空気を劇的に変えた。
以前の敵意に満ちた視線は消え、遠巻きながらも興味や感謝の眼差しが向けられるようになった。
中には、おずおずと「ありがとう」と声をかけてくれる者も現れた。
そんなある日、一人の老婆がリリアの小屋を訪ねてきた。
集落の中でも特に警戒心が強く、リリアを睨みつけていた一人だ。
「……頼みが、ある」
老婆は気まずそうに、リリアに小さな鉢植えを差し出した。
中には、根元から折れ、ぐったりと萎れた薬草の苗が入っている。
「これは、死んだ婆さんから受け継いだ、大切な薬草でな。わしがうっかり折ってしもうた。あんたなら、どうにかできるんじゃないかと思って……」
リリアは、老婆にとってその苗がどれほど大事なものかを察し、こくりと頷いた。
「お預かりします」
リリアは鉢植えを受け取ると、両手でそっと包み込むように苗に触れた。
そして、意識を集中させる。
「大丈夫。あなたはまだ、生きているわ」
彼女の手から溢れ出した優しい光が、苗を包み込む。
すると、折れた茎がゆっくりと繋がり、萎れていた葉がピンと瑞々しさを取り戻していく。
まるで、時間を巻き戻したかのように。
その光景を目の当たりにした老婆は、腰が抜けそうになるほど驚き、何度も目をこすった。
「おお……おお……!」
完全に蘇った苗を返すと、老婆は深々と頭を下げ、涙ながらに感謝して去っていった。
そして、その一部始終を、少し離れた場所からカイルが見ていた。
その日の夕方、カイルの使いがリリアの元を訪れた。
「領主様がお呼びです」
領主館に足を踏み入れるのは、ここに来て初めてだった。
質実剛健だが、手入れの行き届いた館。
通された執務室で、カイルは腕を組み、鋭い視線で私を待っていた。
「……お前の力は、何だ」
単刀直入な問いだった。
隠しても無駄だろう。
私は、自分が植物の力を活性化させる不思議な力を持っていることを、正直に話した。
「……そうか。では、王都での一件についても話せ。なぜ追放された」
その金色の瞳は、真実を知りたいと告げていた。
私は、セレーネに嵌められた経緯を、淡々と語った。
王子に想いを寄せるセレーネが、私を邪魔者として排除するために仕組んだ罠。
誰もが聖女の言葉を信じ、私を「悪役令嬢」と断罪したこと。
「王都では、私は『悪役令嬢』と呼ばれていました。でも……」
私はカイルの目をまっすぐに見つめて言った。
「ここでなら、新しい自分になれる気がするんです。この力で、この土地の役に立てるかもしれない。そう、思っています」
私の言葉に、カイルはしばらく沈黙していた。
彼の表情からは、何も読み取れない。
やがて、彼は重々しく口を開いた。
「ここは厳しい土地だ。お前のようなか弱い女が、気まぐれで生きていける場所じゃない。生き抜く覚悟が、お前にあるのか」
試すような、厳しい問い。
でも、私はもう迷わなかった。
「はい!」
力強く、はっきりと答える。
私の瞳に宿る決意を見て、カイルはふいと視線をそらし、小さく、本当に小さく、頷いた。
「……好きにしろ」
それは拒絶ではなく、紛れもない許可の言葉だった。
冷たい領主様との間に、ようやく見えた信頼への確かな一歩。
私の辺境での人生が、また一つ、新しいページをめくった瞬間だった。
以前の敵意に満ちた視線は消え、遠巻きながらも興味や感謝の眼差しが向けられるようになった。
中には、おずおずと「ありがとう」と声をかけてくれる者も現れた。
そんなある日、一人の老婆がリリアの小屋を訪ねてきた。
集落の中でも特に警戒心が強く、リリアを睨みつけていた一人だ。
「……頼みが、ある」
老婆は気まずそうに、リリアに小さな鉢植えを差し出した。
中には、根元から折れ、ぐったりと萎れた薬草の苗が入っている。
「これは、死んだ婆さんから受け継いだ、大切な薬草でな。わしがうっかり折ってしもうた。あんたなら、どうにかできるんじゃないかと思って……」
リリアは、老婆にとってその苗がどれほど大事なものかを察し、こくりと頷いた。
「お預かりします」
リリアは鉢植えを受け取ると、両手でそっと包み込むように苗に触れた。
そして、意識を集中させる。
「大丈夫。あなたはまだ、生きているわ」
彼女の手から溢れ出した優しい光が、苗を包み込む。
すると、折れた茎がゆっくりと繋がり、萎れていた葉がピンと瑞々しさを取り戻していく。
まるで、時間を巻き戻したかのように。
その光景を目の当たりにした老婆は、腰が抜けそうになるほど驚き、何度も目をこすった。
「おお……おお……!」
完全に蘇った苗を返すと、老婆は深々と頭を下げ、涙ながらに感謝して去っていった。
そして、その一部始終を、少し離れた場所からカイルが見ていた。
その日の夕方、カイルの使いがリリアの元を訪れた。
「領主様がお呼びです」
領主館に足を踏み入れるのは、ここに来て初めてだった。
質実剛健だが、手入れの行き届いた館。
通された執務室で、カイルは腕を組み、鋭い視線で私を待っていた。
「……お前の力は、何だ」
単刀直入な問いだった。
隠しても無駄だろう。
私は、自分が植物の力を活性化させる不思議な力を持っていることを、正直に話した。
「……そうか。では、王都での一件についても話せ。なぜ追放された」
その金色の瞳は、真実を知りたいと告げていた。
私は、セレーネに嵌められた経緯を、淡々と語った。
王子に想いを寄せるセレーネが、私を邪魔者として排除するために仕組んだ罠。
誰もが聖女の言葉を信じ、私を「悪役令嬢」と断罪したこと。
「王都では、私は『悪役令嬢』と呼ばれていました。でも……」
私はカイルの目をまっすぐに見つめて言った。
「ここでなら、新しい自分になれる気がするんです。この力で、この土地の役に立てるかもしれない。そう、思っています」
私の言葉に、カイルはしばらく沈黙していた。
彼の表情からは、何も読み取れない。
やがて、彼は重々しく口を開いた。
「ここは厳しい土地だ。お前のようなか弱い女が、気まぐれで生きていける場所じゃない。生き抜く覚悟が、お前にあるのか」
試すような、厳しい問い。
でも、私はもう迷わなかった。
「はい!」
力強く、はっきりと答える。
私の瞳に宿る決意を見て、カイルはふいと視線をそらし、小さく、本当に小さく、頷いた。
「……好きにしろ」
それは拒絶ではなく、紛れもない許可の言葉だった。
冷たい領主様との間に、ようやく見えた信頼への確かな一歩。
私の辺境での人生が、また一つ、新しいページをめくった瞬間だった。
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