婚約破棄された元悪役令嬢、前世が淀殿だったので慰謝料のクズ領地で治水・商業チート炸裂!元婚約者?もう知りません

黒崎隼人

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第七章:特産品開発!前世の知識は宝の山

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 食料生産は安定し、市場も機能し始めた。ヴァイス領は、飢えと貧困からは完全に脱却したと言っていい。しかし、本当の豊かさを手に入れるためには、ここで満足するわけにはいかない。
「次の段階は、この領地でしか手に入らない『特産品』の開発です」
 私はギルベルトとアラン、そして村の主な者たちを集め、新たな事業計画を発表した。
 この世界には、私の前世の知識から見れば、まだまだ発展の余地があるものがたくさんあった。特に「食文化」の分野において。
「まず、大豆と麦、そして塩を使って、新しい調味料を作ります」
 私が提案したのは、「醤油」と「味噌」だった。この世界にも豆を煮たり焼いたりして食べる文化はあるが、「発酵」させて全く新しい調味料を生み出すという発想はない。私は淀殿として、あるいはその周囲の者たちから見聞きした知識を元に、麹作りから指導した。最初は皆、腐らせるだけではないかと疑心暗鬼だったが、私が試行錯誤の末に作り上げた醤油の、あの香ばしい香りと深い旨味を味わった時、彼らの目は驚きで見開かれた。
「な、なんだこれは!ただ焼いた肉が、こんなに美味くなるなんて!」
「この黒い汁、魔法か!?」
 醤油と味噌は、あっという間に領民の食卓に革命をもたらした。
 さらに私は、日本の食文化の根幹である「出汁」の文化を応用した料理を開発した。干した魚やきのこ、骨付きの肉からじっくりと旨味を抽出したスープ。それをベースにした煮込み料理や汁物を、市場に新しくできた小さな酒場で提供させると、たちまち領地の名物となった。
 ギルベルトは、商人としての鋭い嗅覚で、これらの新しい調味料と料理が莫大な利益を生むことを確信していた。
「辺境伯様!この『ソイソース』と『ミソ』は、必ずや王都の貴族たちの舌を虜にするでしょう!高く売れますぞ!」
 彼は興奮気味にそう語り、早速、彼の商隊に試作品を積んで王都へと向かった。
 食だけに留まらず、私は次に「織物」にも着手した。幸い、この地の気候は桑の栽培に適していることが分かった。私は領民に養蚕を奨励し、そこで取れた生糸を使って、新しい織物の開発を始めた。
 私の記憶にあるのは、豪奢な打掛や、繊細な西陣織の美しさ。この世界の織物は、まだ単色で分厚いものが主流だ。私は染色の技術を改良し、複雑な紋様を織り込むための新しい機織り機の設計図を描いた。
 やがて、ヴァイス領では、深みのある藍色や燃えるような茜色に染められ、光の加減で金糸がキラキラと輝く、見たこともないほど美しく、しなやかな布が生産されるようになった。
 醤油、味噌、そして『ヴァイス織り』と名付けられた美しい織物。
 これらの特産品は、ギルベルトの商隊を通じて王都や他の都市へと運ばれていった。結果は、私の想像以上だった。物珍しさとその質の高さから、ヴァイス領の特産品は爆発的な人気を博し、瞬く間にヴァイス領に莫大な富をもたらし始めたのだ。
 貧しい泥濘地は、今や独自の文化と産業を持つ、活気あふれる土地へと変貌を遂げていた。
 私は積み上げられた金貨の入った箱を前に、静かに思う。
 富は、力だ。だが、この力は誰かを支配するためのものではない。
 この地と、ここに住む民を、あらゆる脅威から守るための力だ。私の城を、誰にも侵されない難攻不落の城にするための、大切な力なのだ。
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