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第3章:冒険者ギルドと破壊される常識
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日雇い労働だけでは不安定だ。俺は旅人の男から聞いた「冒険者ギルド」という場所に、安定した収入を求めて足を運ぶことにした。ギルドは酒場を兼ねているらしく、昼間から屈強な男女がジョッキを片手に談笑していて、活気に満ち溢れていた。
「あの、冒険者になりたいんですけど」
受付のお姉さんに声をかけると、彼女は愛想の良い笑みで「はい、こちらへどうぞ」と手続きを進めてくれた。名前や年齢を書類に書き込み、最後に適性検査があるという。
「こちらの水晶に手を触れて、魔力を注いでみてください。あなたの魔力量に応じて、初期ランクが決まります」
お姉さんに促され、俺はテーブルに置かれた綺麗な水晶玉に手を触れた。
「魔力、ですか。どうすればいいんでしょう?」
「念じるだけで大丈夫ですよ。『力よ、流れろ』って感じで」
「はあ、なるほど」
言われた通りに、俺は水晶に意識を集中した。特に何も感じない。本当にこれでいいんだろうか?
(うーん、なんか、こう……もっと強く念じた方がいいのかな?)
俺がほんの少しだけ意識を強めた、その瞬間だった。
パキッ。
水晶に、小さなヒビが入った。
「え?」
と思ったのも束の間、ヒビは凄まじい勢いで水晶全体に広がり、次の瞬間。
バリーンッッッ!!!
水晶玉はまばゆい光を放ちながら粉々に砕け散り、その衝撃波でギルドの窓ガラスが全て割れた。
「「「「「…………えええええええ!?」」」」」
ギルド内にいた全員の絶叫がこだまする。俺は呆然と、自分の手と砕け散った水晶の残骸を交互に見た。
「あ、あの……すみません!壊しちゃいました……。これ、弁償しないとダメですよね?」
俺が申し訳なさそうに言うと、受付のお姉さんは口をパクパクさせ、顔面蒼白で震えている。ギルドマスターらしき、髭面のドワーフがカウンターの奥からすっ飛んできた。
「な、なんだ今の魔力は……!?測定不能だと……!?ば、馬鹿な、この測定器は、あの竜王の魔力にすら耐えたという伝説のアーティファクトだぞ!?」
ドワーフの親父さんが何か叫んでいるが、俺にはよく聞こえない。それよりも、弁償代のことで頭がいっぱいだ。
「え、そんなに高いものだったんですか?ど、どうしよう……」
俺が本気でオロオロしていると、周囲の冒険者たちがざわつき始めた。
「おい、見たかよ今の……」
「新人のくせに、測定器を破壊するほどの魔力だと……?」
「冗談じゃねえ……あいつ、一体何者なんだ……」
完全に誤解されている。俺はただ、言われた通りに手を触れただけなのに。この水晶、絶対安物の不良品だよ。
結局、弁償は「ギルド側の管理不行き届き」ということで不問に付され、俺はなぜか最高ランクであるSランクに次ぐ、Aランクからのスタートということになってしまった。全く納得がいかない。
「いえ、俺はそんな大層な者じゃないので、一番下のFランクでいいです」
「「「ご謙遜を!!」」」
俺の遠慮は、ギルドマスターと受付のお姉さんによって全力で却下された。彼らの中では、俺は「己の力をひけらかさない、真の実力者」ということになっているらしい。
かくして、俺は不本意ながらAランク冒険者ユウキとしてデビューした。
「でも、いきなり難しい依頼は無理だよな……」
俺は依頼掲示板の前で、一番簡単そうな依頼を探した。
【依頼:ゴブリン討伐(初心者向け) 場所:エルトリア西の森 報酬:銀貨5枚】
これだ。この前もたまたま倒せたし、こいつらなら俺でも何とかなるだろう。
俺はその依頼書を剥がして受付に持っていった。
「あの、Aランクのユウキ様が、なぜゴブリン討伐の依頼を……?」
受付のお姉さんは怪訝な顔をしている。
「いや、まあ、リハビリみたいなものですよ」
「なるほど!初心に返ることも忘れない、と……。流石です!」
またしても、なぜか感心されてしまった。
依頼を受けた俺は、早速西の森へと向かった。ゴブリンの巣を見つけないとな、と思いながら森を歩いていると、ふと道に迷ってしまったことに気づく。
「あれ、どっちだ?」
キョロキョロしていると、少し開けた場所に洞窟があるのを発見した。
「お、ちょうどいい。ここで少し雨宿り……じゃなくて、道を確認しよう」
俺が洞窟に足を踏み入れると、中からわらわらと緑色の醜い生物が出てきた。ゴブリンだ。しかも、数十匹はいる。どうやら、ここが奴らの巣だったらしい。
「うわ、ラッキー!探す手間が省けた」
ゴブリンたちは、俺を見るなり雄叫びを上げて襲いかかってきた。
「はいはい、邪魔邪魔」
俺は依頼達成のため、押し寄せるゴブリンたちを、先日と同じように、虫を払うみたいに適当にあしらった。殴りかかってくる棍棒を手で受け止めると、棍棒が砕け、ゴブリンの腕が変な方向に曲がる。蹴りを放ってくる足を掴んで投げると、壁に激突して動かなくなる。
十分ほどの格闘――いや、作業の後、洞窟内のゴブリンは一匹残らず沈黙していた。
「よし、これで依頼達成だな」
俺はゴブリン討伐の証である右耳をいくつか切り取り、意気揚々とギルドへと帰還した。
「ただいま戻りましたー」
「お、お帰りなさいませ、ユウキ様!……って、早っ!?」
受付のお姉さんが時計を見て目を丸くする。依頼を受けてから、まだ一時間も経っていなかった。
「討伐の証です」
俺が証拠の耳をカウンターに置くと、ギルド内が再びざわついた。
「まさか……西の森のゴブリンネストを、一人で、たった一時間で壊滅させただと……!?」
「あれはCランクパーティでも苦戦する規模だったはず……」
「Aランクの実力、恐るべし……!」
どうやら俺は、ただのゴブリン討伐ではなく、巣ごと壊滅させるという、一つ上のランクの依頼をこなしてしまったらしい。本人は「たまたま巣を見つけちゃった」くらいにしか思っていないのだが。
こうして、俺はギルドに登録した初日から、本人の意思とは全く無関係に「新星のごとき天才」として、その名を轟かせることになったのだった。
「あの、冒険者になりたいんですけど」
受付のお姉さんに声をかけると、彼女は愛想の良い笑みで「はい、こちらへどうぞ」と手続きを進めてくれた。名前や年齢を書類に書き込み、最後に適性検査があるという。
「こちらの水晶に手を触れて、魔力を注いでみてください。あなたの魔力量に応じて、初期ランクが決まります」
お姉さんに促され、俺はテーブルに置かれた綺麗な水晶玉に手を触れた。
「魔力、ですか。どうすればいいんでしょう?」
「念じるだけで大丈夫ですよ。『力よ、流れろ』って感じで」
「はあ、なるほど」
言われた通りに、俺は水晶に意識を集中した。特に何も感じない。本当にこれでいいんだろうか?
(うーん、なんか、こう……もっと強く念じた方がいいのかな?)
俺がほんの少しだけ意識を強めた、その瞬間だった。
パキッ。
水晶に、小さなヒビが入った。
「え?」
と思ったのも束の間、ヒビは凄まじい勢いで水晶全体に広がり、次の瞬間。
バリーンッッッ!!!
水晶玉はまばゆい光を放ちながら粉々に砕け散り、その衝撃波でギルドの窓ガラスが全て割れた。
「「「「「…………えええええええ!?」」」」」
ギルド内にいた全員の絶叫がこだまする。俺は呆然と、自分の手と砕け散った水晶の残骸を交互に見た。
「あ、あの……すみません!壊しちゃいました……。これ、弁償しないとダメですよね?」
俺が申し訳なさそうに言うと、受付のお姉さんは口をパクパクさせ、顔面蒼白で震えている。ギルドマスターらしき、髭面のドワーフがカウンターの奥からすっ飛んできた。
「な、なんだ今の魔力は……!?測定不能だと……!?ば、馬鹿な、この測定器は、あの竜王の魔力にすら耐えたという伝説のアーティファクトだぞ!?」
ドワーフの親父さんが何か叫んでいるが、俺にはよく聞こえない。それよりも、弁償代のことで頭がいっぱいだ。
「え、そんなに高いものだったんですか?ど、どうしよう……」
俺が本気でオロオロしていると、周囲の冒険者たちがざわつき始めた。
「おい、見たかよ今の……」
「新人のくせに、測定器を破壊するほどの魔力だと……?」
「冗談じゃねえ……あいつ、一体何者なんだ……」
完全に誤解されている。俺はただ、言われた通りに手を触れただけなのに。この水晶、絶対安物の不良品だよ。
結局、弁償は「ギルド側の管理不行き届き」ということで不問に付され、俺はなぜか最高ランクであるSランクに次ぐ、Aランクからのスタートということになってしまった。全く納得がいかない。
「いえ、俺はそんな大層な者じゃないので、一番下のFランクでいいです」
「「「ご謙遜を!!」」」
俺の遠慮は、ギルドマスターと受付のお姉さんによって全力で却下された。彼らの中では、俺は「己の力をひけらかさない、真の実力者」ということになっているらしい。
かくして、俺は不本意ながらAランク冒険者ユウキとしてデビューした。
「でも、いきなり難しい依頼は無理だよな……」
俺は依頼掲示板の前で、一番簡単そうな依頼を探した。
【依頼:ゴブリン討伐(初心者向け) 場所:エルトリア西の森 報酬:銀貨5枚】
これだ。この前もたまたま倒せたし、こいつらなら俺でも何とかなるだろう。
俺はその依頼書を剥がして受付に持っていった。
「あの、Aランクのユウキ様が、なぜゴブリン討伐の依頼を……?」
受付のお姉さんは怪訝な顔をしている。
「いや、まあ、リハビリみたいなものですよ」
「なるほど!初心に返ることも忘れない、と……。流石です!」
またしても、なぜか感心されてしまった。
依頼を受けた俺は、早速西の森へと向かった。ゴブリンの巣を見つけないとな、と思いながら森を歩いていると、ふと道に迷ってしまったことに気づく。
「あれ、どっちだ?」
キョロキョロしていると、少し開けた場所に洞窟があるのを発見した。
「お、ちょうどいい。ここで少し雨宿り……じゃなくて、道を確認しよう」
俺が洞窟に足を踏み入れると、中からわらわらと緑色の醜い生物が出てきた。ゴブリンだ。しかも、数十匹はいる。どうやら、ここが奴らの巣だったらしい。
「うわ、ラッキー!探す手間が省けた」
ゴブリンたちは、俺を見るなり雄叫びを上げて襲いかかってきた。
「はいはい、邪魔邪魔」
俺は依頼達成のため、押し寄せるゴブリンたちを、先日と同じように、虫を払うみたいに適当にあしらった。殴りかかってくる棍棒を手で受け止めると、棍棒が砕け、ゴブリンの腕が変な方向に曲がる。蹴りを放ってくる足を掴んで投げると、壁に激突して動かなくなる。
十分ほどの格闘――いや、作業の後、洞窟内のゴブリンは一匹残らず沈黙していた。
「よし、これで依頼達成だな」
俺はゴブリン討伐の証である右耳をいくつか切り取り、意気揚々とギルドへと帰還した。
「ただいま戻りましたー」
「お、お帰りなさいませ、ユウキ様!……って、早っ!?」
受付のお姉さんが時計を見て目を丸くする。依頼を受けてから、まだ一時間も経っていなかった。
「討伐の証です」
俺が証拠の耳をカウンターに置くと、ギルド内が再びざわついた。
「まさか……西の森のゴブリンネストを、一人で、たった一時間で壊滅させただと……!?」
「あれはCランクパーティでも苦戦する規模だったはず……」
「Aランクの実力、恐るべし……!」
どうやら俺は、ただのゴブリン討伐ではなく、巣ごと壊滅させるという、一つ上のランクの依頼をこなしてしまったらしい。本人は「たまたま巣を見つけちゃった」くらいにしか思っていないのだが。
こうして、俺はギルドに登録した初日から、本人の意思とは全く無関係に「新星のごとき天才」として、その名を轟かせることになったのだった。
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