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第6章:広がる噂と聡明なる貴族の目
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俺たちが『オルクスの深淵』を攻略したというニュースは、翼が生えたかのようにエルトリアの街を駆け巡った。
「聞いたかよ!あのユウキって新人が、伝説のダンジョンを半日でクリアしたらしいぜ!」
「しかもパーティメンバーは駆け出しの魔法使いと元傭兵だけ。実質、一人で攻略したようなもんだって話だ」
「最深部のボス、ミノタウロス・ロードを手刀で真っ二つにしたとか……。本当かよそれ」
ギルドの酒場は、俺の噂で持ちきりだった。俺自身は「みんな大げさだなあ」としか思っていないが、リリアとガレスはどこか誇らしげで、そして少しだけ疲れた顔をしている。俺の規格外の行動に付き合わされて、心労が溜まっているのかもしれない。
そんなある日、ギルドに豪奢な身なりの使者がやってきた。
「Aランク冒険者、ユウキ殿はいらっしゃいますかな?」
使者は俺を見つけると、恭しく一礼し、一通の封蝋付きの手紙を差し出した。
「我が主、セレーナ・フォン・アルストロメリア様が、ぜひ貴殿にお会いしたいと」
セレーナ・フォン・アルストロメリア。この辺りを治める地方貴族、アルストロメリア伯爵家の令嬢だという。
「貴族のお嬢さんが、俺に……?」
何かの間違いじゃないかと思ったが、断る理由もない。俺はリリアとガレスを伴って、街の高台にそびえる壮麗な屋敷へと向かった。
通された応接室で俺たちを待っていたのは、銀色の美しい髪を揺らし、理知的な翠の瞳を持つ、息をのむほど美しい女性だった。彼女が、セレーナさんらしい。
「ようこそお越しくださいました、ユウキ様。お噂はかねがね」
セレーナさんは、優雅にお辞儀をした。その立ち居振る舞いは、俺のような元平民とは世界の違う、本物のお嬢様といった感じだ。
「初めまして、ユウキです。それで、俺に何かご用件でしょうか?」
俺が単刀直入に尋ねると、セレーナさんは少し困ったように眉を寄せた。
「実は……ユウキ様のそのお力をお借りしたく、お呼びいたしました」
彼女の話を要約すると、こうだ。
アルストロメリア家の領地では、近頃、謎の盗賊団が横行し、村々を襲って甚大な被害が出ている。騎士団を派遣しても、彼らは神出鬼没で、一向に尻尾を掴ませない。その手口から、ただの盗賊ではなく、裏で誰かが糸を引いている可能性が高い、と。
「ユウキ様。巷では、貴方様は神に愛されたほどの強さをお持ちだと伺っております。どうか、我々の領地を荒らす盗賊団を討伐していただけないでしょうか」
セレーナさんは、深く頭を下げた。
「困っている人がいるなら、断る理由はありませんよ。やれるだけのことはやってみます」
俺は二つ返事で引き受けた。難しいことは分からないが、悪い奴らを懲らしめればいいんだろう。それなら俺にもできる。
俺の快諾に、セレーナさんはほっとしたように微笑んだ。しかし、その翠の瞳の奥には、単なる依頼主としての期待以上の、強い好奇心と探るような色が浮かんでいることに、俺は気づかなかった。
彼女は、他の人々のように、俺をただ「強い男」として見ているだけではなかった。噂で語られる数々の武勇伝と、目の前にいる気の抜けた、ごく普通に見える青年とのギャップ。そのどちらが本当の姿なのか、そしてその力の根源は何なのか。聡明な彼女は、その謎に強く惹かれていたのだ。
「ありがとうございます。では、詳しい話を……」
こうして、俺は貴族の令嬢からの依頼を受けることになった。それが、この国の権力闘争という、俺には全く縁のない面倒ごとに巻き込まれる第一歩だとは、この時の俺は夢にも思っていなかった。
「聞いたかよ!あのユウキって新人が、伝説のダンジョンを半日でクリアしたらしいぜ!」
「しかもパーティメンバーは駆け出しの魔法使いと元傭兵だけ。実質、一人で攻略したようなもんだって話だ」
「最深部のボス、ミノタウロス・ロードを手刀で真っ二つにしたとか……。本当かよそれ」
ギルドの酒場は、俺の噂で持ちきりだった。俺自身は「みんな大げさだなあ」としか思っていないが、リリアとガレスはどこか誇らしげで、そして少しだけ疲れた顔をしている。俺の規格外の行動に付き合わされて、心労が溜まっているのかもしれない。
そんなある日、ギルドに豪奢な身なりの使者がやってきた。
「Aランク冒険者、ユウキ殿はいらっしゃいますかな?」
使者は俺を見つけると、恭しく一礼し、一通の封蝋付きの手紙を差し出した。
「我が主、セレーナ・フォン・アルストロメリア様が、ぜひ貴殿にお会いしたいと」
セレーナ・フォン・アルストロメリア。この辺りを治める地方貴族、アルストロメリア伯爵家の令嬢だという。
「貴族のお嬢さんが、俺に……?」
何かの間違いじゃないかと思ったが、断る理由もない。俺はリリアとガレスを伴って、街の高台にそびえる壮麗な屋敷へと向かった。
通された応接室で俺たちを待っていたのは、銀色の美しい髪を揺らし、理知的な翠の瞳を持つ、息をのむほど美しい女性だった。彼女が、セレーナさんらしい。
「ようこそお越しくださいました、ユウキ様。お噂はかねがね」
セレーナさんは、優雅にお辞儀をした。その立ち居振る舞いは、俺のような元平民とは世界の違う、本物のお嬢様といった感じだ。
「初めまして、ユウキです。それで、俺に何かご用件でしょうか?」
俺が単刀直入に尋ねると、セレーナさんは少し困ったように眉を寄せた。
「実は……ユウキ様のそのお力をお借りしたく、お呼びいたしました」
彼女の話を要約すると、こうだ。
アルストロメリア家の領地では、近頃、謎の盗賊団が横行し、村々を襲って甚大な被害が出ている。騎士団を派遣しても、彼らは神出鬼没で、一向に尻尾を掴ませない。その手口から、ただの盗賊ではなく、裏で誰かが糸を引いている可能性が高い、と。
「ユウキ様。巷では、貴方様は神に愛されたほどの強さをお持ちだと伺っております。どうか、我々の領地を荒らす盗賊団を討伐していただけないでしょうか」
セレーナさんは、深く頭を下げた。
「困っている人がいるなら、断る理由はありませんよ。やれるだけのことはやってみます」
俺は二つ返事で引き受けた。難しいことは分からないが、悪い奴らを懲らしめればいいんだろう。それなら俺にもできる。
俺の快諾に、セレーナさんはほっとしたように微笑んだ。しかし、その翠の瞳の奥には、単なる依頼主としての期待以上の、強い好奇心と探るような色が浮かんでいることに、俺は気づかなかった。
彼女は、他の人々のように、俺をただ「強い男」として見ているだけではなかった。噂で語られる数々の武勇伝と、目の前にいる気の抜けた、ごく普通に見える青年とのギャップ。そのどちらが本当の姿なのか、そしてその力の根源は何なのか。聡明な彼女は、その謎に強く惹かれていたのだ。
「ありがとうございます。では、詳しい話を……」
こうして、俺は貴族の令嬢からの依頼を受けることになった。それが、この国の権力闘争という、俺には全く縁のない面倒ごとに巻き込まれる第一歩だとは、この時の俺は夢にも思っていなかった。
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