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第9話:協力者の登場
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アーロイから得た「姿を消した侍女」の情報は、優馬の捜査にとって大きな突破口となった。病気で実家に帰ったというのは、あまりにも都合が良すぎる。おそらく、何かを見てしまい、口封じのために姿を消されたか、あるいは自ら身を隠した可能性が高い。
優馬はリリアナの協力を得て、その侍女の身元を割り出した。彼女の名前は「アンナ」。城下町の出身で、まだ若く、真面目な働きぶりで知られていたという。
「彼女の実家を訪ねてみましょう。何か分かるかもしれません」
優馬の提案に、リリアナは頷いた。しかし、王女が単独で城下町へ行くのは危険が伴う。そこで、護衛としてアーロイが同行することになった。まだ優馬への疑念を完全に捨てきれないアーロイだったが、リリアナの命令とあっては逆らえない。
三人は身分を隠すため、質素な服に着替えて城下町へと向かった。アンナの実家は、パン屋が立ち並ぶ一角にある、小さな集合住宅だった。
扉を叩くと、中から出てきたのはアンナの母親と思われる女性だった。彼女は優馬たちを見るなり、怯えたような表情を浮かべた。
「アンナは……娘は、ここにはおりません。病気で、遠くの親戚の家で療養していると……」
母親は明らかに嘘をついていた。その目は何かを恐れている。
優馬は、威圧的にならないよう、できるだけ穏やかな声で語りかけた。
「私たちは、アンナさんを傷つけようという者ではありません。ただ、第二王子がお亡くなりになった事件について、彼女が何か知っているのではないかと思い、話を聞きに来ただけです。このままでは、アンナさんの身も危ないかもしれない」
優馬の真摯な言葉と、隣にいるリリアナの気品ある佇まいに、母親は少しずつ警戒を解いていった。やがて、彼女は意を決したように、涙ながらに語り始めた。
「娘は……あの日、全てを見てしまったんです。そして、怖くなって……」
母親に導かれ、部屋の奥の小さな物置へ入ると、そこにアンナが隠れていた。彼女はガタガタと震え、恐怖で顔面蒼白になっている。
「お願い、殺さないで……!」
「大丈夫。私たちはあなたの味方です。何を見たのか、教えてくれませんか」
リリアナが優しく声をかけると、アンナは少しずつ、途切れ途切れに話し始めた。
事件当日、アルフォンス王子が水を飲む直前のことだった。アンナは、食堂の隅で、ある人物が王子と密会しているのを目撃したのだという。その人物は、王子に何か小さな包みを渡していた。そして、王子はその包みの中身を、給仕が来る直前に、こっそりと自分のゴブレットに振り入れたのだ、と。
「その人物とは、誰なんですか?」
優馬が核心を突く質問をすると、アンナは震える声で、信じられない名前を口にした。
「……宰相の、オルテガ様です」
その名前に、リリアナとアーロイは息をのんだ。長年王国に仕えてきた、あの温厚な宰相が?
アンナの証言は続く。
「宰相様は、王子にこう言っていました。『これを飲めば、ほんの少しの間、仮死状態になる。そうすれば、姉君を出し抜き、病弱を装って人々の同情を集められるでしょう。解毒薬は後ほど必ずお届けします』と……」
つまり、アルフォンス王子は毒殺されたのではない。宰相にそそのかされ、自ら仮死状態になる薬を飲んだのだ。だが、それは仮死状態になる薬などではなく、本物の猛毒だった。アルフォンスは、王位への野心を利用され、騙されて殺されたのだ。
これが、衆人環視の状況で毒殺を成し遂げたトリックの真相だった。犯人は、被害者自身に毒を飲ませるという、最も盲点を突いた方法を選んだのだ。
そして、その犯行を計画し、アルフォンスを唆した人物が、あのオルテガ宰相だというのか。
アンナの証言は、事件の全体像を掴むための、あまりにも巨大で、決定的なピースだった。優馬は、これで事件の核心に大きく近づいたと確信した。
優馬はリリアナの協力を得て、その侍女の身元を割り出した。彼女の名前は「アンナ」。城下町の出身で、まだ若く、真面目な働きぶりで知られていたという。
「彼女の実家を訪ねてみましょう。何か分かるかもしれません」
優馬の提案に、リリアナは頷いた。しかし、王女が単独で城下町へ行くのは危険が伴う。そこで、護衛としてアーロイが同行することになった。まだ優馬への疑念を完全に捨てきれないアーロイだったが、リリアナの命令とあっては逆らえない。
三人は身分を隠すため、質素な服に着替えて城下町へと向かった。アンナの実家は、パン屋が立ち並ぶ一角にある、小さな集合住宅だった。
扉を叩くと、中から出てきたのはアンナの母親と思われる女性だった。彼女は優馬たちを見るなり、怯えたような表情を浮かべた。
「アンナは……娘は、ここにはおりません。病気で、遠くの親戚の家で療養していると……」
母親は明らかに嘘をついていた。その目は何かを恐れている。
優馬は、威圧的にならないよう、できるだけ穏やかな声で語りかけた。
「私たちは、アンナさんを傷つけようという者ではありません。ただ、第二王子がお亡くなりになった事件について、彼女が何か知っているのではないかと思い、話を聞きに来ただけです。このままでは、アンナさんの身も危ないかもしれない」
優馬の真摯な言葉と、隣にいるリリアナの気品ある佇まいに、母親は少しずつ警戒を解いていった。やがて、彼女は意を決したように、涙ながらに語り始めた。
「娘は……あの日、全てを見てしまったんです。そして、怖くなって……」
母親に導かれ、部屋の奥の小さな物置へ入ると、そこにアンナが隠れていた。彼女はガタガタと震え、恐怖で顔面蒼白になっている。
「お願い、殺さないで……!」
「大丈夫。私たちはあなたの味方です。何を見たのか、教えてくれませんか」
リリアナが優しく声をかけると、アンナは少しずつ、途切れ途切れに話し始めた。
事件当日、アルフォンス王子が水を飲む直前のことだった。アンナは、食堂の隅で、ある人物が王子と密会しているのを目撃したのだという。その人物は、王子に何か小さな包みを渡していた。そして、王子はその包みの中身を、給仕が来る直前に、こっそりと自分のゴブレットに振り入れたのだ、と。
「その人物とは、誰なんですか?」
優馬が核心を突く質問をすると、アンナは震える声で、信じられない名前を口にした。
「……宰相の、オルテガ様です」
その名前に、リリアナとアーロイは息をのんだ。長年王国に仕えてきた、あの温厚な宰相が?
アンナの証言は続く。
「宰相様は、王子にこう言っていました。『これを飲めば、ほんの少しの間、仮死状態になる。そうすれば、姉君を出し抜き、病弱を装って人々の同情を集められるでしょう。解毒薬は後ほど必ずお届けします』と……」
つまり、アルフォンス王子は毒殺されたのではない。宰相にそそのかされ、自ら仮死状態になる薬を飲んだのだ。だが、それは仮死状態になる薬などではなく、本物の猛毒だった。アルフォンスは、王位への野心を利用され、騙されて殺されたのだ。
これが、衆人環視の状況で毒殺を成し遂げたトリックの真相だった。犯人は、被害者自身に毒を飲ませるという、最も盲点を突いた方法を選んだのだ。
そして、その犯行を計画し、アルフォンスを唆した人物が、あのオルテガ宰相だというのか。
アンナの証言は、事件の全体像を掴むための、あまりにも巨大で、決定的なピースだった。優馬は、これで事件の核心に大きく近づいたと確信した。
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