異世界探偵は魔法を論破する~科学知識で挑む王城の密室殺人~

黒崎隼人

文字の大きさ
10 / 24

第9話:協力者の登場

しおりを挟む
 アーロイから得た「姿を消した侍女」の情報は、優馬の捜査にとって大きな突破口となった。病気で実家に帰ったというのは、あまりにも都合が良すぎる。おそらく、何かを見てしまい、口封じのために姿を消されたか、あるいは自ら身を隠した可能性が高い。

 優馬はリリアナの協力を得て、その侍女の身元を割り出した。彼女の名前は「アンナ」。城下町の出身で、まだ若く、真面目な働きぶりで知られていたという。

「彼女の実家を訪ねてみましょう。何か分かるかもしれません」

 優馬の提案に、リリアナは頷いた。しかし、王女が単独で城下町へ行くのは危険が伴う。そこで、護衛としてアーロイが同行することになった。まだ優馬への疑念を完全に捨てきれないアーロイだったが、リリアナの命令とあっては逆らえない。

 三人は身分を隠すため、質素な服に着替えて城下町へと向かった。アンナの実家は、パン屋が立ち並ぶ一角にある、小さな集合住宅だった。
 扉を叩くと、中から出てきたのはアンナの母親と思われる女性だった。彼女は優馬たちを見るなり、怯えたような表情を浮かべた。

「アンナは……娘は、ここにはおりません。病気で、遠くの親戚の家で療養していると……」

 母親は明らかに嘘をついていた。その目は何かを恐れている。
 優馬は、威圧的にならないよう、できるだけ穏やかな声で語りかけた。

「私たちは、アンナさんを傷つけようという者ではありません。ただ、第二王子がお亡くなりになった事件について、彼女が何か知っているのではないかと思い、話を聞きに来ただけです。このままでは、アンナさんの身も危ないかもしれない」

 優馬の真摯な言葉と、隣にいるリリアナの気品ある佇まいに、母親は少しずつ警戒を解いていった。やがて、彼女は意を決したように、涙ながらに語り始めた。

「娘は……あの日、全てを見てしまったんです。そして、怖くなって……」

 母親に導かれ、部屋の奥の小さな物置へ入ると、そこにアンナが隠れていた。彼女はガタガタと震え、恐怖で顔面蒼白になっている。

「お願い、殺さないで……!」

「大丈夫。私たちはあなたの味方です。何を見たのか、教えてくれませんか」

 リリアナが優しく声をかけると、アンナは少しずつ、途切れ途切れに話し始めた。
 事件当日、アルフォンス王子が水を飲む直前のことだった。アンナは、食堂の隅で、ある人物が王子と密会しているのを目撃したのだという。その人物は、王子に何か小さな包みを渡していた。そして、王子はその包みの中身を、給仕が来る直前に、こっそりと自分のゴブレットに振り入れたのだ、と。

「その人物とは、誰なんですか?」

 優馬が核心を突く質問をすると、アンナは震える声で、信じられない名前を口にした。

「……宰相の、オルテガ様です」

 その名前に、リリアナとアーロイは息をのんだ。長年王国に仕えてきた、あの温厚な宰相が?
 アンナの証言は続く。

「宰相様は、王子にこう言っていました。『これを飲めば、ほんの少しの間、仮死状態になる。そうすれば、姉君を出し抜き、病弱を装って人々の同情を集められるでしょう。解毒薬は後ほど必ずお届けします』と……」

 つまり、アルフォンス王子は毒殺されたのではない。宰相にそそのかされ、自ら仮死状態になる薬を飲んだのだ。だが、それは仮死状態になる薬などではなく、本物の猛毒だった。アルフォンスは、王位への野心を利用され、騙されて殺されたのだ。
 これが、衆人環視の状況で毒殺を成し遂げたトリックの真相だった。犯人は、被害者自身に毒を飲ませるという、最も盲点を突いた方法を選んだのだ。
 そして、その犯行を計画し、アルフォンスを唆した人物が、あのオルテガ宰相だというのか。

 アンナの証言は、事件の全体像を掴むための、あまりにも巨大で、決定的なピースだった。優馬は、これで事件の核心に大きく近づいたと確信した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

処理中です...