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第11話:偽りのアリバイ
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犯人からの挑戦状は、捜査の焦点を新たな容疑者へと導いた。オルテガ宰相、そして宮廷魔術師エリザール。優馬は、この二人、あるいはどちらか一方が国王殺害の実行犯だと確信していた。
問題は、アリバイだ。国王が殺害された夜、オルテガ宰相は自室で大量の書類仕事に追われており、何人もの部下が出入りしてそれを確認している。エリザールもまた、自身の研究塔に引きこもっており、塔の入り口は衛兵が固めていた。二人とも、完璧なアリバイがあるように思われた。
「だが、完璧すぎるアリバイは、逆に怪しい」
優馬は関係者全員を、再び玉座の間に集めるようリリアナに依頼した。表向きの理由は、捜査状況の中間報告。だが、真の目的は、容疑者たちの嘘を暴き出すことだった。
玉座の間には、リリアナ、アーロイ、オルテガ、エリザール、そして数人の重臣たちが顔を揃えた。重苦しい雰囲気の中、優馬が口火を切る。
「第二王子アルフォンス様の殺害トリックは、完全に解明されました。彼は、信頼する人物に『仮死状態になる薬だ』と騙され、自ら毒を飲んだのです」
その場の空気が凍り付く。特にオルテガ宰相は、僅かに目を見開いたが、すぐにいつもの温厚な表情に戻った。
優馬は、わざとオルテガの目を見て続けた。
「王子を騙した人物は、おそらく国王陛下を殺害した犯人と同一人物でしょう。ですが、私はこう考えています。犯人は一人ではない。少なくとも、もう一人、協力者がいるはずです」
優馬はそこで言葉を切り、全員の反応を窺った。ほとんどの者が驚き、あるいは困惑の表情を浮かべている。その中で、宰相オルテガと魔術師エリザールの反応は対照的だった。
オルテガは、あくまで冷静だった。
「なんと……。協力者が。ユウマ殿、それは確かなのですかな?」
一方、エリザールは表情こそ変えなかったが、その指先が微かに震えているのを優馬は見逃さなかった。彼は何かを知っている。あるいは、恐怖を感じている。
優馬は、最後のカマをかけることにした。
「ええ。そして、その協力者は、魔法に関する深い知識を持っている人物です。なぜなら、国王陛下の寝室で見つかったあの密室トリックの痕跡……微量の白い粉末は、ただの塩などではなかった。それは、ごく少量の魔力に反応して硬化する、特殊な魔法触媒だったのですから!」
優馬のその言葉に、エリザールがびくりと肩を震わせた。それは、この世界の人間でなければ知り得ない情報のはずだった。優馬は、化学知識からその物質の性質を推測し、さも知っているかのように断言したのだ。
「そんな触媒、聞いたことがないな」
オルテガが平静を装って言う。
「そうでしょう。なぜなら、それはまだ研究段階にある極秘の物質だからです。そして、それを精製し、扱える人物は、この城に一人しかいない」
優馬の視線が、真っ直ぐにエリザールを射抜く。
「宮廷魔術師エリザール。あなたですね?」
エリザールは顔面蒼白になり、ガタガタと震え始めた。もう、隠し通すことはできない。彼の完璧だと思われたアリバイは、優馬の「チート推理」によって、音を立てて崩れ落ちたのだ。
「ち、違う! 私は殺していない! 私はただ……!」
エリザールが何かを叫ぼうとした、その時。
「そこまでだ、エリザール殿」
冷たく、静かな声が響いた。声の主は、オルテガ宰相。彼の顔からは、いつもの温厚な笑みは消え失せ、氷のように冷たい無表情が浮かんでいた。
「どうやら、私の負けのようだ。異邦の探偵殿」
オルテガは、あっさりと自分の罪を認めた。そのあまりの変わりように、リリアナもアーロイも、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
問題は、アリバイだ。国王が殺害された夜、オルテガ宰相は自室で大量の書類仕事に追われており、何人もの部下が出入りしてそれを確認している。エリザールもまた、自身の研究塔に引きこもっており、塔の入り口は衛兵が固めていた。二人とも、完璧なアリバイがあるように思われた。
「だが、完璧すぎるアリバイは、逆に怪しい」
優馬は関係者全員を、再び玉座の間に集めるようリリアナに依頼した。表向きの理由は、捜査状況の中間報告。だが、真の目的は、容疑者たちの嘘を暴き出すことだった。
玉座の間には、リリアナ、アーロイ、オルテガ、エリザール、そして数人の重臣たちが顔を揃えた。重苦しい雰囲気の中、優馬が口火を切る。
「第二王子アルフォンス様の殺害トリックは、完全に解明されました。彼は、信頼する人物に『仮死状態になる薬だ』と騙され、自ら毒を飲んだのです」
その場の空気が凍り付く。特にオルテガ宰相は、僅かに目を見開いたが、すぐにいつもの温厚な表情に戻った。
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「王子を騙した人物は、おそらく国王陛下を殺害した犯人と同一人物でしょう。ですが、私はこう考えています。犯人は一人ではない。少なくとも、もう一人、協力者がいるはずです」
優馬はそこで言葉を切り、全員の反応を窺った。ほとんどの者が驚き、あるいは困惑の表情を浮かべている。その中で、宰相オルテガと魔術師エリザールの反応は対照的だった。
オルテガは、あくまで冷静だった。
「なんと……。協力者が。ユウマ殿、それは確かなのですかな?」
一方、エリザールは表情こそ変えなかったが、その指先が微かに震えているのを優馬は見逃さなかった。彼は何かを知っている。あるいは、恐怖を感じている。
優馬は、最後のカマをかけることにした。
「ええ。そして、その協力者は、魔法に関する深い知識を持っている人物です。なぜなら、国王陛下の寝室で見つかったあの密室トリックの痕跡……微量の白い粉末は、ただの塩などではなかった。それは、ごく少量の魔力に反応して硬化する、特殊な魔法触媒だったのですから!」
優馬のその言葉に、エリザールがびくりと肩を震わせた。それは、この世界の人間でなければ知り得ない情報のはずだった。優馬は、化学知識からその物質の性質を推測し、さも知っているかのように断言したのだ。
「そんな触媒、聞いたことがないな」
オルテガが平静を装って言う。
「そうでしょう。なぜなら、それはまだ研究段階にある極秘の物質だからです。そして、それを精製し、扱える人物は、この城に一人しかいない」
優馬の視線が、真っ直ぐにエリザールを射抜く。
「宮廷魔術師エリザール。あなたですね?」
エリザールは顔面蒼白になり、ガタガタと震え始めた。もう、隠し通すことはできない。彼の完璧だと思われたアリバイは、優馬の「チート推理」によって、音を立てて崩れ落ちたのだ。
「ち、違う! 私は殺していない! 私はただ……!」
エリザールが何かを叫ぼうとした、その時。
「そこまでだ、エリザール殿」
冷たく、静かな声が響いた。声の主は、オルテガ宰相。彼の顔からは、いつもの温厚な笑みは消え失せ、氷のように冷たい無表情が浮かんでいた。
「どうやら、私の負けのようだ。異邦の探偵殿」
オルテガは、あっさりと自分の罪を認めた。そのあまりの変わりように、リリアナもアーロイも、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
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