12 / 18
第10話:世界の理を書き換える者
しおりを挟む
「ルナッ!」
俺は、考えるより先に体が動いていた。ルナを突き飛ばし、彼女の代わりにその黒い刃を、自らの体で受け止めた。
「ぐっ……ぁ……!」
肩を貫く、激しい痛み。刃には強力な呪毒が塗られており、傷口から黒い紋様が体中に広がっていく。意識が、遠のいていく。
「ベルク様! しっかりしてください、ベルク様!」
ルナの悲痛な叫び声が聞こえる。彼女が必死に治癒魔法をかけてくれるが、呪毒の力が強く、回復が追いつかない。
俺の目の前に立つのは、黒いローブを纏った痩身の男。その顔は影に隠れて見えないが、邪悪な笑みを浮かべているのがわかった。魔王軍幹部、アサシンのシャドウ。
「ククク……。聖女を庇うとは、愚かな男よ。だが、お前が『神の手』か。その力、ここで終わらせてやる」
シャドウの足元から、無数の影の触手が伸び、俺に襲いかかってくる。ルナが聖なる結界で防ぐが、影は結界をじわじわと侵食していく。
「無駄だ、聖女。俺の影は、あらゆる光を喰らう」
くそっ……。このままじゃ、俺もルナも……。
薄れゆく意識の中、俺は必死に思考を巡らせた。俺のスキル、【分解】と【再構築】。この力の、本当の本質は何だ? ただ物を壊し、組み立てるだけじゃないはずだ。もっと、根源的な何かが……。
――分解とは、情報の解体。
――再構築とは、情報の再定義。
その瞬間、俺の中で何かが覚醒した。そうだ。俺が分解しているのは、物理的な物質だけじゃない。その物質を成り立たせている「情報」そのものだ。ならば……。
俺は、震える手で、自分に襲いかかってくる「影の触手」に触れた。
「……【分解】」
俺がつぶやくと、信じられないことが起きた。触手は粒子になるのではなく、まるでインクが水に溶けるように、その「影」という性質を失い、ただの希薄な魔力となって霧散したのだ。
「なっ……!?」
シャドウが驚愕の声を上げる。
俺は、さらに思考を深める。シャドウの能力は「影を操る」こと。ならば、その「能力」という概念そのものを、分解してしまえばいい。
俺は、シャドウ自身に向け、スキルの焦点を合わせた。
「お前の能力――『影を操る力』という『情報』を、今ここで【分解】する」
「馬鹿なことを! そんなことが、できるはずが……が……?」
シャドウの言葉が、途中で途切れた。彼が操っていた影が、コントロールを失って暴走し、やがてすべて消え去ったのだ。
「俺の……俺の力が……消えた……?」
彼は、自分の両手を見つめ、呆然としている。
俺は、よろめきながら立ち上がった。肩の傷から流れ出ていた呪毒も、その「呪い」という情報ごと分解し、無力化していた。
「終わりだ」
俺は、絶望に染まったシャドウに、最後通告をする。
「お前の『存在』そのものを、この世界から【分解】する」
俺が右手をかざすと、シャドウの体から光の粒子が漏れ出し始めた。それは、もはや抵抗することのできない、絶対的な理の書き換えだった。
「馬鹿な……。これは、スキルの力などではない……。世界の理を……神の領域を、書き換えているだと……!? ぎゃあああああああ!」
断末魔の叫びと共に、魔王軍幹部シャドウは完全に光の粒子へと還り、跡形もなく消滅した。
その光景を見ていた騎士団も、町の人々も、そしてルナも、声もなく立ち尽くしていた。
それはもはや、人の技ではなかった。彼らの目に焼き付けられたのは、まさしく「神の御業」そのものだった。
俺は、考えるより先に体が動いていた。ルナを突き飛ばし、彼女の代わりにその黒い刃を、自らの体で受け止めた。
「ぐっ……ぁ……!」
肩を貫く、激しい痛み。刃には強力な呪毒が塗られており、傷口から黒い紋様が体中に広がっていく。意識が、遠のいていく。
「ベルク様! しっかりしてください、ベルク様!」
ルナの悲痛な叫び声が聞こえる。彼女が必死に治癒魔法をかけてくれるが、呪毒の力が強く、回復が追いつかない。
俺の目の前に立つのは、黒いローブを纏った痩身の男。その顔は影に隠れて見えないが、邪悪な笑みを浮かべているのがわかった。魔王軍幹部、アサシンのシャドウ。
「ククク……。聖女を庇うとは、愚かな男よ。だが、お前が『神の手』か。その力、ここで終わらせてやる」
シャドウの足元から、無数の影の触手が伸び、俺に襲いかかってくる。ルナが聖なる結界で防ぐが、影は結界をじわじわと侵食していく。
「無駄だ、聖女。俺の影は、あらゆる光を喰らう」
くそっ……。このままじゃ、俺もルナも……。
薄れゆく意識の中、俺は必死に思考を巡らせた。俺のスキル、【分解】と【再構築】。この力の、本当の本質は何だ? ただ物を壊し、組み立てるだけじゃないはずだ。もっと、根源的な何かが……。
――分解とは、情報の解体。
――再構築とは、情報の再定義。
その瞬間、俺の中で何かが覚醒した。そうだ。俺が分解しているのは、物理的な物質だけじゃない。その物質を成り立たせている「情報」そのものだ。ならば……。
俺は、震える手で、自分に襲いかかってくる「影の触手」に触れた。
「……【分解】」
俺がつぶやくと、信じられないことが起きた。触手は粒子になるのではなく、まるでインクが水に溶けるように、その「影」という性質を失い、ただの希薄な魔力となって霧散したのだ。
「なっ……!?」
シャドウが驚愕の声を上げる。
俺は、さらに思考を深める。シャドウの能力は「影を操る」こと。ならば、その「能力」という概念そのものを、分解してしまえばいい。
俺は、シャドウ自身に向け、スキルの焦点を合わせた。
「お前の能力――『影を操る力』という『情報』を、今ここで【分解】する」
「馬鹿なことを! そんなことが、できるはずが……が……?」
シャドウの言葉が、途中で途切れた。彼が操っていた影が、コントロールを失って暴走し、やがてすべて消え去ったのだ。
「俺の……俺の力が……消えた……?」
彼は、自分の両手を見つめ、呆然としている。
俺は、よろめきながら立ち上がった。肩の傷から流れ出ていた呪毒も、その「呪い」という情報ごと分解し、無力化していた。
「終わりだ」
俺は、絶望に染まったシャドウに、最後通告をする。
「お前の『存在』そのものを、この世界から【分解】する」
俺が右手をかざすと、シャドウの体から光の粒子が漏れ出し始めた。それは、もはや抵抗することのできない、絶対的な理の書き換えだった。
「馬鹿な……。これは、スキルの力などではない……。世界の理を……神の領域を、書き換えているだと……!? ぎゃあああああああ!」
断末魔の叫びと共に、魔王軍幹部シャドウは完全に光の粒子へと還り、跡形もなく消滅した。
その光景を見ていた騎士団も、町の人々も、そしてルナも、声もなく立ち尽くしていた。
それはもはや、人の技ではなかった。彼らの目に焼き付けられたのは、まさしく「神の御業」そのものだった。
45
あなたにおすすめの小説
追放後に拾った猫が実は竜王で、溺愛プロポーズが止まらない
タマ マコト
ファンタジー
追放された元聖女候補リラは、雨の森で血まみれの白銀の猫を拾い、辺境の村で慎ましく生き始める。
猫と過ごす穏やかな日々の中で、彼女の治癒魔法が“弱いはずなのに妙に強い”という違和感が生まれる。
満月の夜、その猫が蒼い瞳を持つ青年へと変化し、自らを竜王アゼルと名乗る。
彼はリラの魔力が“人間では測れない”ほど竜と相性が良いこと、追放は誤解と嫉妬の産物だったことを告げる。
アゼルの優しさと村の温かさに触れ、リラは初めて「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
私の妹は確かに聖女ですけど、私は女神本人ですわよ?
みおな
ファンタジー
私の妹は、聖女と呼ばれている。
妖精たちから魔法を授けられた者たちと違い、女神から魔法を授けられた者、それが聖女だ。
聖女は一世代にひとりしか現れない。
だから、私の婚約者である第二王子は声高らかに宣言する。
「ここに、ユースティティアとの婚約を破棄し、聖女フロラリアとの婚約を宣言する!」
あらあら。私はかまいませんけど、私が何者かご存知なのかしら?
それに妹フロラリアはシスコンですわよ?
この国、滅びないとよろしいわね?
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
追放エンドだと思ったら世界が私を選んだ、元聖女のざまぁ再生記
タマ マコト
ファンタジー
聖女として祈り続け、使い潰された少女セレフィアは、
奇跡が起きなくなった夜に「役立たず」と断じられ、雪の中へ追放され命を落とす。
だがその死を世界が拒否し、彼女は同じ世界の十数年前へと転生する。
エリシア・ノクス=セレスティアとして目覚めた彼女は、
祈らずとも世界に守られる力を得て、
二度と奪われない生を選ぶため、静かに歩き始める。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
王宮から捨てられた元聖騎士の私、隣国の黒狼王に拾われて過保護にされまくる
タマ マコト
ファンタジー
追放の夜、庶民出身の唯一の女性聖騎士レイアは、王太子派の陰謀によって冤罪を着せられ、王宮から無慈悲に捨てられる。
雨の中をさまよう彼女は、生きる理由すら見失ったまま橋の下で崩れ落ちるが、そこで彼女を拾ったのは隣国ザルヴェルの“黒狼王”レオンだった。
冷徹と噂される獣人の王は、傷ついたレイアを静かに抱き上げ、「お前はもう一人じゃない」と連れ帰る。
こうして、捨てられた聖騎士と黒狼の王の出会いが、運命を揺さぶる物語の幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる