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エピローグ「新しい頁の始まり」
辺境の図書館で、私とアレンさんが共に暮らし始めてから、一年が過ぎた。
季節は巡り、町はすっかり春の色に染まっている。図書館の窓から見える桜の木も、満開の薄紅色を風に揺らしていた。
アレンさんは、すっかり町の人気者になっていた。
最初は遠巻きに見ていた町の人たちも、彼の不器用な優しさと、博識ぶりに、次第に心を開いていったのだ。今では、子供たちに勉強を教えたり、農夫のおじいさんの壊れた農具を魔法で直してあげたり(もちろん、魔力が少ないので、ちょっとした修繕だけれど)、すっかり町に溶け込んでいる。
彼の言葉は、もう滅多に黒い色を見せなくなった。町の人と話す時の言葉は、親しみのある緑色や、穏やかな茶色をしている。
そして、私と二人きりの時に見せる言葉は、いつも、愛情に満ちた、暖かい金色だ。
その日も、私たちは閉館後の図書館で、二人きりの時間を過ごしていた。
私は新しい蔵書の整理をし、アレンさんは、難しい顔で一冊の詩集を読んでいる。最近の彼は、魔術書よりも、物語や詩集を手に取ることのほうが多くなった。
「リリアナ」
不意に、彼が私の名前を呼んだ。
「はい?」
「……こっちへ来て、座ってくれ」
彼の言葉は、少しだけ緊張を帯びた、真剣な青色をしていた。何だろう、と思いながら、私は彼の向かいの椅子に腰を下ろす。
アレンさんは、読んでいた詩集を閉じると、テーブルの上に置いた。そして、私の手を、そっと両手で包み込む。彼の大きな手は、とても暖かい。
「リリアナ。君と出会ってから、俺の世界は色を取り戻した」
彼は、真っ直ぐに私の目を見て、語り始めた。
「追放され、全てを失ったと思っていた俺に、君は、俺の言葉の奥にある本当の色を見つけ、信じてくれた。君がいなければ、俺は今も、灰色と黒だけの世界で、一人で凍えていただろう」
彼の言葉は、感謝を示す、透き通るような金色。その一言一言が、私の心に、温かく染み渡っていく。
「君は、俺の人生という物語の、最高の司書であり、最高の読者だ。そして……これからは、この物語の、共同執筆者になってほしい」
「共同執筆者……?」
私が聞き返すと、彼はこくりと、力強く頷いた。
そして、懐から、小さなベルベットの箱を取り出す。
その箱を、私の前で、ゆっくりと開けた。
中に入っていたのは、小さな銀の指輪だった。中央には、まるで澄んだ青空を閉じ込めたような、美しいサファイアが埋め込まれている。
それは、私が一番好きな色。穏やかで、澄み切った、水色の……。
「リリアナ・シェリー」
アレンさんが、私の名前を、とても、とても優しい声で呼んだ。
「俺と、結婚してくれないか。これからの人生という頁を、俺と一緒に、綴っていってほしい」
彼の言葉は、今まで見た、どんな色の言葉よりも、眩しく、美しく、そして愛おしい、純白の光を放っていた。それは、何色にも染まらない、永遠の愛を誓う色。
私の目からは、また、涙がこぼれ落ちた。
でも、もう、言葉はいらなかった。
私は、涙で濡れた顔のまま、人生で一番、美しい笑顔で、力強く頷いた。
私の心から生まれた返事は、彼と同じ、永遠の愛を誓う、純白の光。
二つの光が、静かな図書館の中で、優しく、そして確かに、一つに重なり合った。
***
言葉の「重さ」が分かる私、失言で追放された魔術師様の心の色に気づいてしまいました。
そして今、私の物語は、彼と共に、新しい頁の始まりを告げようとしている。
それはきっと、たくさんの色で彩られた、世界で一番、幸せな物語になるはずだ。
愛する人と、二人で綴っていくのだから。
季節は巡り、町はすっかり春の色に染まっている。図書館の窓から見える桜の木も、満開の薄紅色を風に揺らしていた。
アレンさんは、すっかり町の人気者になっていた。
最初は遠巻きに見ていた町の人たちも、彼の不器用な優しさと、博識ぶりに、次第に心を開いていったのだ。今では、子供たちに勉強を教えたり、農夫のおじいさんの壊れた農具を魔法で直してあげたり(もちろん、魔力が少ないので、ちょっとした修繕だけれど)、すっかり町に溶け込んでいる。
彼の言葉は、もう滅多に黒い色を見せなくなった。町の人と話す時の言葉は、親しみのある緑色や、穏やかな茶色をしている。
そして、私と二人きりの時に見せる言葉は、いつも、愛情に満ちた、暖かい金色だ。
その日も、私たちは閉館後の図書館で、二人きりの時間を過ごしていた。
私は新しい蔵書の整理をし、アレンさんは、難しい顔で一冊の詩集を読んでいる。最近の彼は、魔術書よりも、物語や詩集を手に取ることのほうが多くなった。
「リリアナ」
不意に、彼が私の名前を呼んだ。
「はい?」
「……こっちへ来て、座ってくれ」
彼の言葉は、少しだけ緊張を帯びた、真剣な青色をしていた。何だろう、と思いながら、私は彼の向かいの椅子に腰を下ろす。
アレンさんは、読んでいた詩集を閉じると、テーブルの上に置いた。そして、私の手を、そっと両手で包み込む。彼の大きな手は、とても暖かい。
「リリアナ。君と出会ってから、俺の世界は色を取り戻した」
彼は、真っ直ぐに私の目を見て、語り始めた。
「追放され、全てを失ったと思っていた俺に、君は、俺の言葉の奥にある本当の色を見つけ、信じてくれた。君がいなければ、俺は今も、灰色と黒だけの世界で、一人で凍えていただろう」
彼の言葉は、感謝を示す、透き通るような金色。その一言一言が、私の心に、温かく染み渡っていく。
「君は、俺の人生という物語の、最高の司書であり、最高の読者だ。そして……これからは、この物語の、共同執筆者になってほしい」
「共同執筆者……?」
私が聞き返すと、彼はこくりと、力強く頷いた。
そして、懐から、小さなベルベットの箱を取り出す。
その箱を、私の前で、ゆっくりと開けた。
中に入っていたのは、小さな銀の指輪だった。中央には、まるで澄んだ青空を閉じ込めたような、美しいサファイアが埋め込まれている。
それは、私が一番好きな色。穏やかで、澄み切った、水色の……。
「リリアナ・シェリー」
アレンさんが、私の名前を、とても、とても優しい声で呼んだ。
「俺と、結婚してくれないか。これからの人生という頁を、俺と一緒に、綴っていってほしい」
彼の言葉は、今まで見た、どんな色の言葉よりも、眩しく、美しく、そして愛おしい、純白の光を放っていた。それは、何色にも染まらない、永遠の愛を誓う色。
私の目からは、また、涙がこぼれ落ちた。
でも、もう、言葉はいらなかった。
私は、涙で濡れた顔のまま、人生で一番、美しい笑顔で、力強く頷いた。
私の心から生まれた返事は、彼と同じ、永遠の愛を誓う、純白の光。
二つの光が、静かな図書館の中で、優しく、そして確かに、一つに重なり合った。
***
言葉の「重さ」が分かる私、失言で追放された魔術師様の心の色に気づいてしまいました。
そして今、私の物語は、彼と共に、新しい頁の始まりを告げようとしている。
それはきっと、たくさんの色で彩られた、世界で一番、幸せな物語になるはずだ。
愛する人と、二人で綴っていくのだから。
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