婚約破棄された悪役令嬢のスローライフ。辺境で農業をしていたら、いつの間にか溺愛されていました

黒崎隼人

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番外編2:グリーンヴァレーの子どもたち

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 セリーナがグリーンヴァレーにやって来た日、泥だらけの彼女を遠巻きに眺めていた子どもたちがいた。その中の一人、アンナという名の少女は、特にセリーナのことが大好きだった。

 アンナは、セリーナが初めて野菜の芽を出させて涙した日も、収穫祭で村人たちと笑い合った日も、いつもその傍にいた。アンナにとって、都会から来た美しくて優しいセリーナは、物語のお姫様そのものだった。しかし、そのお姫様は、誰よりも土を愛し、力強く生きていた。アンナはそんなセリーナの姿に、強い憧れを抱くようになった。

 セリーナが農業学校を設立すると、アンナは最初の生徒の一人として入学した。セリーナから直接経営学を学び、エドワードから農学を学んだアンナは、めきめきと才能を現した。彼女は卒業後、セリーナの農場で働き始め、やがては「グリーンヴァレー・コンソーシアム」の重要な幹部の一人となった。かつてセリーナに憧れた小さな少女は、今や彼女の右腕として、その夢を共に支える存在になっていた。

 もう一人、トムという腕白な少年がいた。彼は最初、セリーナのことを「気取ったお嬢様」だと馬鹿にしていた。しかし、彼女が毎日懸命に畑を耕す姿を見るうちに、次第に尊敬の念を抱くようになった。特に、エドワードが開発した灌漑システムを目の当たりにした時、その革新的な技術に心を奪われた。

 トムは農業学校で土木技術と機械工学を学び、卒業後は新しい農機具の開発に没頭した。彼が発明した効率的な種まき機や収穫機は、グリーンヴァレーの生産性をさらに向上させ、王国中に普及した。彼は、エドワードの技術を受け継ぎ、さらに発展させる天才発明家として、その名を轟かせた。

 アンナやトムのように、セリーナとエドワードに影響を受けた多くの子どもたちが、それぞれの道で大きく羽ばたいていった。ある者は、グリーンヴァレーの野菜を使った絶品料理を出すレストランのシェフになり、またある者は、王都でグリーンヴァレーの産品を売る敏腕商人となった。

 彼らは皆、口を揃えて言う。「私たちの故郷、グリーンヴァレーは世界一だ。そして、私たちの誇りは、セリーナ様とエドワード様だ」と。

 セリーナが蒔いた種は、野菜だけでなく、子どもたちの夢や未来という形でも、豊かに実を結んでいた。グリーンヴァレーの希望の光は、次の世代へと確かに受け継がれていくのだった。
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