9 / 12
第9話 悪魔か魔王か
しおりを挟む一宮悠月。
もう二度と会いたくないと思った人。
もう二度と会わないと思っていた人。
なのにーーどうしてこうなった!?
私は今、とある高校の校門で一人頭を抱えている。
その理由はまず、朝一に言われた上司命令が関わっていた。
一宮悠月の担当に任命します、そう告げられた私に拒否権などあるわけがない。
必死で抗議したものの泣く泣く引き受けることになったのだ。
そして次の指令が、彼の学校まで迎えに行くことだった。
どうして私が?それはマネージャーさんの仕事でしょ?と思う。
けれど、彼が放課後に話を聞きたい、学校まで来てくれないと聞かない、と言っていたのだと上司が困った様に笑えば全てを理解した。
これはすべてあいつの嫌がらせなのだと!
(私を自分のテリトリーに呼び出して何をするつもりなの?)
やはり腹いせに暴力、とか?
発想がやや貧困しているが、玖音はそれ以外は考えられないと結論し、ある程度の覚悟を決めていた。
(それにしても遅いわね)
三十分も前に下校の時間は過ぎており、ほとんどの生徒は帰ってしまった。
(まさかここで待ちぼうけさせるのが目的?)
いや、さすがにそれは無いよね。
それでも彼ならそんな幼稚な事をやりそうな気がするのは私だけだろうか?
「九条さん!」
どうしようと本気で考え始めた時、背後から玖音を呼ぶ声が響く。
振り向けば満面な笑み、いわゆる王子様スマイルを振り撒く一宮悠月の姿があった。
ゾゾっと背中に冷たいものが走る。
(え?あれ、誰!?気持ち…)
悪い、そう続けようとしてさすがに失礼すぎるかと自重した。
「あの…一宮、くん?」
「はい、本当に来てくれたんだね」
「まあ仕事ですから」
警戒心を露わにして話す私に彼は口角を上げる。
残っていた生徒は興味津々といった様子で遠巻きにこちらを見つめていた。
どこにいても目立つ存在なのだと改めて思うと同時に、即刻立ち去りたい気持ちで一杯だ。
「それで、こんな所に呼び出して何の用?」
「…いいから黙ってついて来い」
顔は王子様スマイルを浮かべたままで、しかし口調は素の彼に近かった。
もちろん、周りには聞こえないようボソリと発しており、学校でも猫を被っているのだと察する。
「嫌よ。私は部外者だし、学校に入れるわけないでしょ!?」
右腕を掴まれ、校内へと引っ張られた玖音は慌てて抵抗した。
その様子を見ていた女子生徒からは「キャー羨ましい!」だの「あのおばさんは誰よ!?」だのと黄色く鋭い声が飛ぶ。
「いいのか?俺に逆らったらちーちゃんがどうなるか知らねぇぞ?」
その言葉にハッとする。
「…どこでそれを」
「俺の情報網を舐めんなよ。お前の個人情報なんて簡単に手に入るんだぜ?」
なんて奴なの!?
まさかここまで卑怯な手を使ってくるとは思ってもみなかった。
「千尋に手を出してみなさい。あんたは絶対許さないから」
「それはお前次第だ。それで?ついて来てくれるよな、九条玖音」
ニヤリと笑うのは悪魔かそれとも魔王なのか。
ギリっと歯をくいしばるが、私が弟の名前を出されて逆らえるはずはなかった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる