年下の彼に脅されています!

花夜

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第9話 悪魔か魔王か

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 一宮悠月。

 もう二度と会いたくないと思った人。

 もう二度と会わないと思っていた人。

 なのにーーどうしてこうなった!?

 私は今、とある高校の校門で一人頭を抱えている。

 その理由はまず、朝一に言われた上司命令が関わっていた。

 一宮悠月の担当に任命します、そう告げられた私に拒否権などあるわけがない。

 必死で抗議したものの泣く泣く引き受けることになったのだ。

 そして次の指令が、彼の学校まで迎えに行くことだった。

 どうして私が?それはマネージャーさんの仕事でしょ?と思う。

 けれど、彼が放課後に話を聞きたい、学校まで来てくれないと聞かない、と言っていたのだと上司が困った様に笑えば全てを理解した。

 これはすべてあいつの嫌がらせなのだと!

(私を自分のテリトリーに呼び出して何をするつもりなの?)

 やはり腹いせに暴力、とか?

 発想がやや貧困しているが、玖音はそれ以外は考えられないと結論し、ある程度の覚悟を決めていた。

(それにしても遅いわね)

 三十分も前に下校の時間は過ぎており、ほとんどの生徒は帰ってしまった。

(まさかここで待ちぼうけさせるのが目的?)

 いや、さすがにそれは無いよね。

 それでも彼ならそんな幼稚な事をやりそうな気がするのは私だけだろうか?

「九条さん!」

 どうしようと本気で考え始めた時、背後から玖音を呼ぶ声が響く。

 振り向けば満面な笑み、いわゆる王子様スマイルを振り撒く一宮悠月の姿があった。

 ゾゾっと背中に冷たいものが走る。

(え?あれ、誰!?気持ち…)

 悪い、そう続けようとしてさすがに失礼すぎるかと自重した。

「あの…一宮、くん?」

「はい、本当に来てくれたんだね」

「まあ仕事ですから」

 警戒心を露わにして話す私に彼は口角を上げる。

 残っていた生徒は興味津々といった様子で遠巻きにこちらを見つめていた。

 どこにいても目立つ存在なのだと改めて思うと同時に、即刻立ち去りたい気持ちで一杯だ。

「それで、こんな所に呼び出して何の用?」

「…いいから黙ってついて来い」

 顔は王子様スマイルを浮かべたままで、しかし口調は素の彼に近かった。

 もちろん、周りには聞こえないようボソリと発しており、学校でも猫を被っているのだと察する。

「嫌よ。私は部外者だし、学校に入れるわけないでしょ!?」

 右腕を掴まれ、校内へと引っ張られた玖音は慌てて抵抗した。

 その様子を見ていた女子生徒からは「キャー羨ましい!」だの「あのおばさんは誰よ!?」だのと黄色く鋭い声が飛ぶ。

「いいのか?俺に逆らったらがどうなるか知らねぇぞ?」

 その言葉にハッとする。

「…どこでそれを」

「俺の情報網を舐めんなよ。お前の個人情報なんて簡単に手に入るんだぜ?」

 なんて奴なの!?

 まさかここまで卑怯な手を使ってくるとは思ってもみなかった。

「千尋に手を出してみなさい。あんたは絶対許さないから」

「それはお前次第だ。それで?ついて来てくれるよな、九条玖音」

 ニヤリと笑うのは悪魔かそれとも魔王なのか。

 ギリっと歯をくいしばるが、私が弟の名前を出されて逆らえるはずはなかった。

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