商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男

文字の大きさ
18 / 261
【セザール編】

第18話 タノシイ学院生活3 ~後編~

しおりを挟む
 

 「なるほど」

 納得。
 カロスタークは頷いた。
 わかってしまえば、どうというものでもない話だ。



 どうという話でもないんだけど——。
 なんなんだろう?
 カロスタークは内心で頭を抱えていた。
 表面上はポーカーフェイスを維持しているが、正直かなり困惑している。

 「いいか? おれは鉄壁のリシャール。彼女たちを守る強靭な男なのさ」
 胸元をはだけ、腕の筋肉を隆起させて見せつけてくる金髪男に絡まれているのだ。

 脈絡もなくそんなことを言ってくるので、なにを言いたいのかもよくわからない。
 カロスタークは、疑問に思いながら口を挟むこともできずにいた。
 男——リシャールだったか——は聞きもしないのに自分上げの他人下げを垂れ流して悦に入っているようだ。

 まぁ確かに?
 筋肉はすごい。
 カロスタークの三人分は優に保持しているだろう。
 だが、だから何なのか。


 「——そんなわけだから、クルールちゃんとセザール様を俺に譲って消えろ」
 「ああ」
 それか!
 ようやく、リシャールが何を言いたいかが分かって、思わず声が出た。
 すると——。

 「おお。わかってくれたか。お前、見所あるぜ」
 破顔一笑。
 たぶんわざとだと思うが、力のこもった腕で肩を叩いてきた。
 無駄に暑苦しい男だ。

 「いや、別に承諾はしていませんよ?」
 結構痛かったので身体を捻って躱しながら否定した。

 そもそも、クルールは友達だ。
 友達を譲るとか意味が分からない。
 セザールにしても『側女』という立場ではあるが奴隷になんてしていない。
 家庭の事情でオレに借りはあるが、それだけ。
 学院内にいる間はオレ以外と関わるのが難しいだろうから居場所を提供しているが、卒業すればあとの進路は自由意思で決めて問題ない。本人にもその旨、ちゃんと伝えてあった。
 『譲る』対象ではないのだ。

 「あ゛? テメ―、立場分かってんのかよ!」
 安い芝居の悪役みたいなセリフを吐かれた。

 「いいか? お前なんて、ちょっと金があって悪知恵が働くってだけの商人だ。俺がその気になりゃ、いつでも潰せるんだよ! 社会的にも、物理的にもな!」
 右手の親指を立て、首を切るジェスチャーをして見せられた。
 
 「脅しのつもりか?」
 くだらないケンカに乗るつもりはないが、これ以上絡むのなら対応を考えるぞ?
 カロスタークの目に危険な光が瞬き始めていた。
 セザールという『婚約者』がなくなった今、カロスタークに怖いものはない。
 ずっと、『男爵令嬢に相応しい自分』を演じていたが、その枷は取り払われたのだ。
 
 「やめといた方がいーよぉ―」
 さすがに不快になり、身構えかけたオレを止める者がいた。
 荒事とは無縁そうな柔らかな手でカロスタークの肩を抑え、そっと押すのはクルールだ。
 
 「鉄壁のリシャールって二つ名は自称じゃなくて、実力だから。本当に潰されちゃうよ?」
 クスクス笑いながら、相手の男を持ち上げる。
 
 「さすがクルールちゃんはわかってくれてるぜ」
 自分との間に割り込んだクルールを抱きしめ、どや顔をするリシャール。
 カロスタークをバカにした目で見ていた。

 「ほらほら、セザールが待ってるよ。訓練場いこ!」
 ふわりと身をひるがえしてリシャールの腕から抜け出たクレールが、そのまま腕を引いて去っていく。
 
「ああ、そうだな。セザール様には俺みたいな強い男の方が似合うんだ。あんなガキみたいなへなちょこよりさ」
 その間も、リシャールは不快な笑みをカロスタークに向け続けていた。

 「あいつ、まさか——」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

ミィタソ
恋愛
ノブルス子爵家の長女マーガレットは、幼い頃から頭の回転が早く、それでいて勉強を怠らない努力家。さらに、まだ少しも磨かれていないサファイアの原石を彷彿とさせる、深い美しさを秘めていた。 婚約者も決まっており、相手はなんと遥か格上の侯爵家。それも長男である。さらに加えて、王都で噂されるほどの美貌の持ち主らしい。田舎貴族のノブルス子爵家にとって、奇跡に等しい縁談であった。 そして二人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ……と、なればよかったのだが。 新婚旅行の当日、マーガレットは何者かに殺されてしまった。 しかし、その数日後、マーガレットは生き返ることになる。 全財産を使い、蘇りの秘薬を購入した人物が現れたのだ。 信頼できる仲間と共に復讐を誓い、マーガレットは王国のさらなる闇に踏み込んでいく。 ******** 展開遅めですが、最後までお付き合いいただければ、びっくりしてもらえるはず!

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。 彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。 そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。 どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。 近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。 婿候補は獣医、大工、異国の王子様。 うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中! 同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈ 神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。 ※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり
恋愛
ノーマン王立学園に通う貴族学生のクリスマスパーティー。 突然異様な雰囲気に包まれて、公開婚約破棄断罪騒動が勃発(男爵令嬢を囲むお約束のイケメンヒーロー) 私(ティアラ)は周りで見ている一般学生ですから関係ありません。しかし… 断罪後、靴擦れをおこして、運悪く履いていたハイヒールがスッポ抜けて、ある一人の頭に衝突して… 関係ないと思っていた高位貴族の婚約破棄騒動は、ティアラにもしっかり影響がありまして!? 「私には関係ありませんから!!!」 「私ではありません」 階段で靴を落とせば別物語が始まっていた。 否定したい侯爵令嬢ティアラと落とされた靴を拾ったことにより、新たな性癖が目覚めてしまった公爵令息… そしてなんとなく気になる年上警備員… (注意)視点がコロコロ変わります。時系列も少し戻る時があります。 読みにくいのでご注意下さい。

【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます! 読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。 シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます! ※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...