商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~

葉月奈津・男

文字の大きさ
114 / 261
【女将軍編】

第14話 裁きから再起を促す、方向は整えて

しおりを挟む
 

 「さてと」
 マルガリータに背を向け、カロスタークが向き合ったのは全裸に毛布の女。

 「敗戦の言い訳はできるかな?」
 「っ——」
 シャリィアだ。

 「敗戦は罪ではない!」
 全裸を晒していながら、シャリィアは強気——いや、強がっている。
 あるいは、全裸でいることに慣れてしまっているのだろうか?

 敗北しただけであれば、確かに罪に問われることはない。
 しかし・・・。

 「いい加減なことをほざくな!」
 国軍で将軍候補と目されていたミヌミエーラ男爵には通じない。

 「ろくに偵察もせず、不用意に進軍。敵の策にまんまと嵌った。貴様の行動は明白に軍規に反している。多くの証人もいるのだぞ!」
 弁解の余地などないと断罪される。

 先の戦いでの敗走については完全に調べがついていた。
 今後の戦い方を決めるうえで不可欠だからだ。

 それで知れたのは、シャリィアの傲慢と怠惰からくる愚策の数々。
 勝敗は時の運などと、とても言えない人為的ミスが目立つ。
 敗因がはっきりと浮かび上がってくるのだ。
 軍事裁判を開けば、議論の余地なく有罪となる状態だった。

「敵との内通すら疑われる利敵行為だ」
「そ、そんなことはしていない。私が愚かだったことは認める。だが、王国への忠誠は揺らいでなどいない!」
 必死な様子で取りすがるシャリィア。

「・・・・・・」
 ミヌミエーラ男爵は、生ごみでも見るような視線を向けて無言だ。
 利敵行為を働いた軍人は問答無用で絞首刑である。
 罪人には言葉もないと、態度で示していた。


 「まぁまぁ、ミヌミエーラ男爵。シャリィア殿をそう責めるものではない」
 思い切り突き放されたところへの歩み寄り。
 カロスタークの第二の天性とも言える交渉術が冴えわたる。

 「ここから王都へ送還して、沙汰を待つような余裕がないのも事実だ」
 処刑は確実と絶望を味わわせてから、希望を与えようとの誘導が行われていく。

 「わ、私は、どうすればいい?」
 生気のない顔に縋るような色が加わった。
 一縷の望みというものだ。
 溺れる者は藁にでもすがる。
 シャリィアが己の命運をカロスタークへ譲り渡した瞬間である。

 「第三軍の司令官として活躍すればいい。過去の失敗を塗り替えるような勝利でな。機会を与えてやろう」
 命を捨てて働け。
 そういうとだ。

 「わ、わかりました。やってみせます」
 「そうしろ。とりあえず、セザールが面倒を見てやれ」
 教育し直せ——意訳:洗脳せよ——と指示が出た。

 
 帝国は王国を滅ぼすべく戦を仕掛けた。
 いくつかの町を焼こうというのではない。

 つまり、帝国軍の侵攻はまだまだ続くはずだった。
 予想される最大戦力は30万。
 そのうちの5万は消えたとしても、まだ25万いる。

 対する王国軍は全兵力をかき集めて25万。
 他の国へのけん制も考えれば、動員可能な最大は15万が限界だ。
 王族直轄の近衛も動員したとしての数でである。

 現実的には12万といったところだろう。
 もちろん、非常事態ということで民兵の動員もすれば数は増やせる。
 ただし、数で質を凌駕することは難しいのが現実だ。

 帝国の精鋭一人に対して民兵五人で何とか勝てるかどうかというところ。
 単純計算で、150万人を動員してようやく五分となる。
 帝国も同じことをすれば、その数はさらに増え国家の存続自体が難しくなると思われた。

 ゆえにカロスタークが宰相から事前に言われていたのは、初戦で勝って戦闘継続を諦めさせることだった。
 ところが、その初戦で大敗している。
 今回の勝利で何とか±0に戻せたかと言うとそうではない。
 帝国は、「勝てる」と踏んで攻めかかってくると思われた。

 「第三軍と、後詰めで来る第四軍。レッドルア、ミヌミエーラ、モンモラシーの貴族軍。セザール騎士団。約8万で帝国軍を迎え撃たなければならない」
 銅貨10枚を元手に金貨1000枚を稼ぐ方が簡単だ。
 商人にもクリア可能な試練をくれ。
 カロスタークは、ままならない現状に溜息を吐くのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

ミィタソ
恋愛
ノブルス子爵家の長女マーガレットは、幼い頃から頭の回転が早く、それでいて勉強を怠らない努力家。さらに、まだ少しも磨かれていないサファイアの原石を彷彿とさせる、深い美しさを秘めていた。 婚約者も決まっており、相手はなんと遥か格上の侯爵家。それも長男である。さらに加えて、王都で噂されるほどの美貌の持ち主らしい。田舎貴族のノブルス子爵家にとって、奇跡に等しい縁談であった。 そして二人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ……と、なればよかったのだが。 新婚旅行の当日、マーガレットは何者かに殺されてしまった。 しかし、その数日後、マーガレットは生き返ることになる。 全財産を使い、蘇りの秘薬を購入した人物が現れたのだ。 信頼できる仲間と共に復讐を誓い、マーガレットは王国のさらなる闇に踏み込んでいく。 ******** 展開遅めですが、最後までお付き合いいただければ、びっくりしてもらえるはず!

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。 彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。 そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。 どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。 近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。 婿候補は獣医、大工、異国の王子様。 うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中! 同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈ 神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。 ※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

靴を落としたらシンデレラになれるらしい

犬野きらり
恋愛
ノーマン王立学園に通う貴族学生のクリスマスパーティー。 突然異様な雰囲気に包まれて、公開婚約破棄断罪騒動が勃発(男爵令嬢を囲むお約束のイケメンヒーロー) 私(ティアラ)は周りで見ている一般学生ですから関係ありません。しかし… 断罪後、靴擦れをおこして、運悪く履いていたハイヒールがスッポ抜けて、ある一人の頭に衝突して… 関係ないと思っていた高位貴族の婚約破棄騒動は、ティアラにもしっかり影響がありまして!? 「私には関係ありませんから!!!」 「私ではありません」 階段で靴を落とせば別物語が始まっていた。 否定したい侯爵令嬢ティアラと落とされた靴を拾ったことにより、新たな性癖が目覚めてしまった公爵令息… そしてなんとなく気になる年上警備員… (注意)視点がコロコロ変わります。時系列も少し戻る時があります。 読みにくいのでご注意下さい。

【連載版】婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
短編では、なろうの方で異世界転生・恋愛【1位】ありがとうございます! 読者様の方からの連載の要望があったので連載を開始しました。 シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます! ※連載のためタイトル回収は結構後ろの後半からになります。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...