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【ディアナ編】
第5話 波紋 ③
しおりを挟む「無理難題だ」
邸宅に戻ったカロスタークはベッドに突っ伏した。
王都に来ると必ず難題が持ち上がる。
早く辺境に帰りたい。
土木工事と経済の流れに気を配ってさえいればいいからだ。
これなら、カロスタークにとっては呼吸するのと同じくらい気楽に挑める仕事である。
なのに・・・。
公爵家の不祥事を人知れず解決しろと来た。
そんなのは軍、それも情報部とか暗部がやる仕事だろうに。
なんで自分なのか?
カロスタークは不満を募らせた。
なんで自分なのかと。
出口のない迷路を歩いている気分になる。
事実、出口などないのだ。
「カロスターク様、ミーランが来ています」
セザールが寝室の入り口から首だけ入れて呼びかけた。
「ミーランが? そうか、10日目か」
『亜人の町』からの定期報告だ。
10日ごとに連絡に来る。
「ああ!!」
ベッドから降りた途端。
鈍らに成り下がっていた脳細胞が仕事をした。
「『亜人』関連だからか」
『人間至上主義』という看板に気を取られて、逆の意味を忘れていた。
『亜人排斥主義』でもある。
『亜人』が関わる話なのだ。
こと『亜人』に関して、王国内にカロスタークほど精通している者はいない。
少なくとも、王国政府内やその近くにはいないのだ。
公爵は貴族階級のトップ。
手や口を出せるのは現国王のみ。
それだって、おおっぴらに何かができるわけではない。
国王に何かあったときに、国王候補となりうる存在であるだけに手厚い保護が付いているからだ。
例えば、国王が自分の死期が近いと知り、王子が幼いとする。
王国の体制維持のためには、公爵家の当主なり息子がふさわしいと思われる場合。
自分の息子に王位を譲り渡すため、自分の生きているうちに候補者を亡き者にしよう。
そんなことを考える王がいないとも限らない。
だから、国王といえども公爵家を好きにはできないようになっている。
ゆえに、王家や王国政府、貴族サイドからは動きようがないのだ。
カロスタークなら?
『亜人』サイドからの接触が可能かもしれない。
『経済』で追い込むこともあり得る。
『武力』についても実戦経験を積んだ騎士団を従えている。
これを見込まれたのだと気が付いた。
「だったら最初から言えよ」
抗議したくなるが、これは仕方ないことでもある。
国王も宰相も、カロスタークに『なにが』できるかを把握していないのだから。
把握させたいとも思わないが。
「長老に伝言を頼むか」
定期報告と連絡に、一つ用件を追加することをカロスタークは決めた。
◇
「よい場所だ」
公爵家当主の男は、切り拓かれた土地を眺めて悦に入っていた。
森を切り開き、更地にされた土地だ。
いたるところに力尽きるまで働かされた者たちが倒れている。
中には白骨が見えるモノまでいた。
食べ物を与えるとか、睡眠をとらせる程度の配慮も働かされた老若男女の行く末だ。
ただし、そこに『人間』はいない。
すべて『亜人』だった。
「これだけ広ければいいだろう」
公爵家当主は、頭の中で夢想した。
素晴らしい計画があるのだ。
異形の生き物を集めて閉じ込め、見世物にする計画である。
『ヘビ』を死ぬまで戦わせる闘技場。
さしずめ、『闘蛇』とでもすればよい。
『鳥』を的にした射的場も面白いだろう。
仕留めた『モノ』は狩った者へ景品として下げ渡す。
『犬』や『猫』をかわいがる婦人や子供には触れ合える場を用意する。
手足の健を切って、あまり動けないようにしておけばいい。
撫でられるだけの存在に動く手足はいらないからな。
肘と膝から先を切ってしまってもよいだろう。
『長耳』の兎モドキには酒を提供する店での接待でもさせればいい。
姿は人間に似ているし、会話に似せて泣く程度の知能もあるのだから。
見た目はいいから、人間の男女とも楽しんでくれるはずだ。
最期は、『繫殖観察』だ。
オスとメスの交尾をさせて、それを見せる。
面白いショーになるだろう。
あとは、需要があるようなら『食肉』としての提供も考える。
食べられる肉であることは妻が確認しているからな。
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「牧場と、動物園、そして遊技場を兼ね備えた一大観光地ができあがるぞ」
絶対に儲かる。
賛同してくれる貴族や大商人は多いのだ。
今だって、ときおり似たようなイベントを開催しては好評を得ているのだから。
公爵家当主は、ここで初めて『動物』に感謝した。
役に立たないと思っていたが、人間様の役に立つこともあるのだと。
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