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46 習わし

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お日様が真上を過ぎたので、お昼休憩の為に公共休息場に戻ってきたワタシとジェニー姐さん

その途中

「お昼ご飯はなにがいいです?」

普通にそう聞いたワタシに対するジェニー姐さんの返答は意外なモノでした

「お昼ご飯? お昼にお食事をするの?」

どうやらこの辺りでは、お昼に食事をする習わしは無いようで、食事は朝と夜にとるだけのようです

どうりで、ザックさんたちの昨晩の食べっぷり

そして今朝のジェニー姐さんの食べる量

サンドイッチをそれなりの量食べて、かつ、桃缶ひとつをペロリと平らげたジェニー姐さん

どうやらそれは、夜までもたせるための食い溜め的な行動だったようです

(お昼ご飯を食べないんなら、あの朝食の量も納得なのです)



そして今、ワタシは感動しています

昨夜確認した時には、ほぼ底をつきかけていたチャージ魔力量

ジェニー姐さんとのお散歩から戻って確認してみると、ちょっとした小金(魔力量)持ちなのでした


【買い物履歴】画面のチャージ魔力量【2071341】


カルニバルス(食虫植物っぽい魔物)とスラッグラー(巨大ナメクジな魔物)を倒しただけでは、

ここまでのチャージ魔力量にはなりません


(これって、アレでしょ? 蚊取り線香がいい仕事したってことでしょ?)

蚊取り線香をあちこちに設置して、そのまま放置してきたワタシ

なので、虫? 魔物? の駆除状況は、全く把握できていません

それでも、魔力がチャージされているということは、駆除できた、ということなのでしょう

(実験成功かな? ありがたやありがたや)

そんな感じで、今日のお散歩という名の魔物駆除実験を締めくくるのでした



夕方から、ジェニー姐さんの助手として活動を開始するワタシ

場所は公共休息場の管理小屋内の出入り口付近

(元々ジェニー姐さんが駐在していた場所なのです)


基本、病気や怪我人等具合の悪い人の相手をすることになるので、

応接セットを用意して、座って対応できるようにします

当然、助手のワタシの席も用意しますよ?

営業用に新たに【買い物履歴】で準備したモノは、



【アルミ製ガーデンテーブルセット 丸机1脚 椅子4脚 9,980円】 ネットにて購入したヤツ 裏庭に面したテラスに設置していました



以上を購入して、管理小屋内の出入り口付近に配置です

椅子4脚には、ちょっとお高めクッションもサービスしておきましょう



【高反発クッション エアウェーブ 5,800円】 通販の期間限定安売りで購入 座り心地もさることながら通気性が良くて蒸れません



以上で準備完了です



すると、ジェニー姐さんから声がかかります

「あら? もしかして、薬師の応接家具を用意してくれたのかしら?」

「ですです。体調不良の人を立たせっぱなしでは困ると思って」

「そう、ちゃんと考えてくれているのね。ありがとう」
「ついでと言ってはアレだけど、見えるところにこれもお願いできる?」

そう言ってジェニー姐さんが取り出したのは、縦横30cmぐらいの木の板

すり鉢とすりこ木の絵が描かれた看板みたいなものでした


「これは何です?」

「これは、ここに薬師がいます、という意味の看板なの」
「この辺りでは、営業中は看板を掲げるのが習わしなのよ」

どうやら、文字が分からない人でも意味が分かるように、絵の看板を掲げるみたいです

職業によって絵は異なるようで、

 食堂はフォークとナイフの絵

 お洋服屋さんはシャツの絵

 靴屋さんは靴の絵

 鍛冶屋さんは金床とハンマーの絵

 そして、薬師はすり鉢とすりこ木の絵

そんな感じみたいです

「なるほどです」



ジェニー姐さんから受け取った看板を、管理小屋の入り口に立てかけて準備は終了

せっかく机と椅子を用意したので、ここでお昼ご飯を頂くことにしましょう

【買い物履歴】からお昼ご飯用の食べ物をチョイスします



【コンビニせぶん たこ焼き 6個入り 330円】



これはアレです。大手コンビニで売っている、ワタシ的に隠れた名品だと思っているヤツです

たこ焼きは、スーパーのお惣菜コーナーとかでも売っていましたが、

粉っぽいというか、ぼそぼそ感があるというか、あまり美味しいと思えませんでした

でも、このコンビニせぶんのたこ焼きは、生地がつるっとしていて、ワタシ的にアリでした

(夜食とか、おやつとかで、よく食べたな~)


早速取り出すと、コンビニで温めてもらった後のモノが出てきたようで、アツアツ

というより、熱すぎて手に持っていられません

(そうそう、コンビニでレンチン頼むと、熱すぎること多いよね?)

ん?
コンビニ?
レンチン?


6個の丸い茶色の団子? の上に木の削りカスと青緑のコケがふりかけられているように見えるそれ

ワタシは慣れた手つきで添付のソースとマヨネーズを上からかけて、

爪楊枝でひとつ摘まんで口に入れます


「あつっ! (ハフハフ)」

「あら? 何か美味しそうなモノ食べてるじゃない?」

「(ハフハフ)ジェニー姐さんもどうです?」

「そうね、こんな時間に食事をする習慣はないけれど、それは食べてみたいわね」


ジェニー姐さんも、ワタシの真似をして、爪楊枝で口の中へ

「! アツっ」

(フフッ、たこ焼きって、油断してひとくちでお口に入れてしまうと、痛い目に合いますよね)
(これってある意味オヤクソク?)


そんなことを思いつつ、

ちょっと涙目になっているジェニー姐さんを横目に、ワタシも追加でハフハフするのでした

「あつっ! (ハフハフ)」


やはり、ネコミミを生やしたワタシは、習わしどうり? に猫舌なのでした

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