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神楽坂gimmick
光雅の推理
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「……何ですか? 」
不躾な視線に気付いた宮津子は、ジロリと厳しい目を向けた。
典型的なお嬢様とも言える立ち居振る舞いは、付け入る隙もなく、光雅からすれば面白みが感じられない。と、なれば打算の二文字が浮かぶ。
「惟前君から聞いたよ。どちらから? 」
黙り後ろを付いてくる妹を自室へ入れ、本題に入る。
「……どちら? さぁ、どっちかしら? 」
「何だよ、それは」
「いろいろあり過ぎて……ああ、でも初めは、私から」
「それに惟前君が応じたと? 何とも手近で済ませたものだ」
ハンと、鼻を鳴らす光雅は、睨みつけてくる妹の額を軽く指で弾く。
「で? お前が求婚してあちら様が然るべくとでも? 」
「嫌な物言いをなさるのね」
「当たり前だろう、おかしなことばかりだ。お前達は、目も合わせないほどの不仲だったのに突然結婚なんて……騙されているんじゃないか? 惟前君は、損得勘定で動いていると思うぞ? 」
「損得? 私と結婚して得などありますか? 口うるさい父親に、息子のことばかりの母親、兄は頼りにならない」
「ついでに花嫁は、可愛げもなければ評判の美人でもないときた、魂胆がないとあり得ないだろう? 」
眉間に皺を寄せ悪態をつく宮津子に、光雅はベッと舌を出す。
「惟前君、選び放題だったらしいぞ? まあ、想像はつくが……それなのに何でお前? 」
「前々から、私のことを好いておられたのです」
「この馬鹿‼︎ ふざけている場合か! 」
払われた手が、宮津子の頭を叩く。
「痛い! 」
小さな悲鳴をあげ、前のめりに体勢を崩した妹に構わず、間合いを詰める表情は真剣そのものだ。
「前々から? そんなワケあるか! クソ生意気なお前に一泡吹かせる為に、結婚を承諾したと言われた方が納得する……まてよ、それだ! 」
「何ですって! 」
ハッとなった光雅は、立ち上がり机の引き出しから手鏡を取り出すと、宮津子にかざした。
布に包まれていた為、埃もかぶっていないソレには、真剣な眼差しをした光雅までも映り込む。
「よく考えろ。お前達は不仲だった」
「それは誤解でそうなったと言われました! 」
「それが作戦なんだよ! あのな、お兄様は箱根で惟前君と帰京の話をしたんだ。それはもう、準備万端で畳み掛けてきて……前々から計画を練っていた感じだった。理由は分からないが、何かあるはずだ」
「想像で物を語らないで! 」
鏡越しに兄を睨みつけるが、かなりの自信があるのか、光雅は首を振る。
「思い出してみろ、お前、惟前君を怒らせたのではないか? 昔のことでも良い、根に持ってた所にお前が求婚した、これ幸いと復讐に……」
「いいかげんにして! 馬鹿馬鹿しくてお話にならないわ! 惟前さんは、私を妻にする為に法学校へ入られたのよ」
目の前にある手鏡を払い除け、立ち上がる宮津子は、怒りに任せて障子を開け放つ。
パシン! と、木を打つ音に「待て! 」と、制止する声が追いかけてくるが、構わず廊下へ出る。
「入学の動機なんて何とでも言えるだろう!鏡を見たか! ずば抜けて美人でもない生意気な女を進んで嫁にするか⁉︎ うちには金もないぞ! 」
「お兄様のせいで、ますます貧乏になりました!」
廊下で叫ぶ兄妹喧嘩は、褒められたものではないが腹が立って仕方がない。荒々しく踏み鳴らす床の軋みも気にせず自室へ戻る宮津子の頭には、ひとつの懸念が浮かんでいた。
それは、惟前を怒らせたのではないか? という一言。思い当たることがないわけではない。
欧州視察で留守にしていた惟前の部屋から、大切な写真を盗み出したことであり、それはいまだに手元にある。
仕返しで結婚を了承したとは思えない。そこは心配していないが、人のものを盗む行為を善しとするわけもなく、逆に嫌悪するだろう。
軽蔑まではされていないと思うが、信頼はされていないのではないか?
急に不安になった。
不躾な視線に気付いた宮津子は、ジロリと厳しい目を向けた。
典型的なお嬢様とも言える立ち居振る舞いは、付け入る隙もなく、光雅からすれば面白みが感じられない。と、なれば打算の二文字が浮かぶ。
「惟前君から聞いたよ。どちらから? 」
黙り後ろを付いてくる妹を自室へ入れ、本題に入る。
「……どちら? さぁ、どっちかしら? 」
「何だよ、それは」
「いろいろあり過ぎて……ああ、でも初めは、私から」
「それに惟前君が応じたと? 何とも手近で済ませたものだ」
ハンと、鼻を鳴らす光雅は、睨みつけてくる妹の額を軽く指で弾く。
「で? お前が求婚してあちら様が然るべくとでも? 」
「嫌な物言いをなさるのね」
「当たり前だろう、おかしなことばかりだ。お前達は、目も合わせないほどの不仲だったのに突然結婚なんて……騙されているんじゃないか? 惟前君は、損得勘定で動いていると思うぞ? 」
「損得? 私と結婚して得などありますか? 口うるさい父親に、息子のことばかりの母親、兄は頼りにならない」
「ついでに花嫁は、可愛げもなければ評判の美人でもないときた、魂胆がないとあり得ないだろう? 」
眉間に皺を寄せ悪態をつく宮津子に、光雅はベッと舌を出す。
「惟前君、選び放題だったらしいぞ? まあ、想像はつくが……それなのに何でお前? 」
「前々から、私のことを好いておられたのです」
「この馬鹿‼︎ ふざけている場合か! 」
払われた手が、宮津子の頭を叩く。
「痛い! 」
小さな悲鳴をあげ、前のめりに体勢を崩した妹に構わず、間合いを詰める表情は真剣そのものだ。
「前々から? そんなワケあるか! クソ生意気なお前に一泡吹かせる為に、結婚を承諾したと言われた方が納得する……まてよ、それだ! 」
「何ですって! 」
ハッとなった光雅は、立ち上がり机の引き出しから手鏡を取り出すと、宮津子にかざした。
布に包まれていた為、埃もかぶっていないソレには、真剣な眼差しをした光雅までも映り込む。
「よく考えろ。お前達は不仲だった」
「それは誤解でそうなったと言われました! 」
「それが作戦なんだよ! あのな、お兄様は箱根で惟前君と帰京の話をしたんだ。それはもう、準備万端で畳み掛けてきて……前々から計画を練っていた感じだった。理由は分からないが、何かあるはずだ」
「想像で物を語らないで! 」
鏡越しに兄を睨みつけるが、かなりの自信があるのか、光雅は首を振る。
「思い出してみろ、お前、惟前君を怒らせたのではないか? 昔のことでも良い、根に持ってた所にお前が求婚した、これ幸いと復讐に……」
「いいかげんにして! 馬鹿馬鹿しくてお話にならないわ! 惟前さんは、私を妻にする為に法学校へ入られたのよ」
目の前にある手鏡を払い除け、立ち上がる宮津子は、怒りに任せて障子を開け放つ。
パシン! と、木を打つ音に「待て! 」と、制止する声が追いかけてくるが、構わず廊下へ出る。
「入学の動機なんて何とでも言えるだろう!鏡を見たか! ずば抜けて美人でもない生意気な女を進んで嫁にするか⁉︎ うちには金もないぞ! 」
「お兄様のせいで、ますます貧乏になりました!」
廊下で叫ぶ兄妹喧嘩は、褒められたものではないが腹が立って仕方がない。荒々しく踏み鳴らす床の軋みも気にせず自室へ戻る宮津子の頭には、ひとつの懸念が浮かんでいた。
それは、惟前を怒らせたのではないか? という一言。思い当たることがないわけではない。
欧州視察で留守にしていた惟前の部屋から、大切な写真を盗み出したことであり、それはいまだに手元にある。
仕返しで結婚を了承したとは思えない。そこは心配していないが、人のものを盗む行為を善しとするわけもなく、逆に嫌悪するだろう。
軽蔑まではされていないと思うが、信頼はされていないのではないか?
急に不安になった。
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