TS転生後の静かな高校生活は愛が重い子たちに囲まれておしまい!

あずももも

文字の大きさ
62 / 92
3章 ヤンデレの上でタップダンス

62話 楽しいデート(死へのカウントダウン)6

しおりを挟む
「あたしは――アキノちゃんに出会うために生まれてきたんだ」

「ん? そうかな?」

「うん。 今のあたし、アキノちゃんのカノジョ以外の価値ないもん」
「そうかなぁ……?」

おかしい。

紅林さんの様子がおかしい。

「そうよ、今までカレシ作ろうとしてことごとくミスってきたのもきっと、アキノちゃんに全てを捧げるためだけに生きてるんだって無意識で知ってたんだよ」

「うーん、そうかなぁ」

「だって、あたし、自慢だけど顔もかわいいし、おっぱいもそこそこあるしエロい体だし。 だから男からは告られたり声かけられたりしてきたのに、なのになんでか全部うまく行かなかったんだ」

「そっかぁ」

そういやこの子、友達のことごとくからヘタレって言われてたね。
なんか肝心なとこでテンパったりするのかな。

そんな目の前の紅林さんは――さっきまで真っ赤だった顔そのまんま、とろんとしたおめめもそのまんま――だけどもやけに物騒なことを言い出している。

「はぁ……♥ やば。 あたし、今のアキノちゃんにも生えてないって分かってるのに、もう男としか見れない」

「そうかなぁ」

「ね、さっきからあたしたち、チャラついたカップルって見られてるよね。 チャラチャラしちゃう? ホテルで」
「うーん、どうだろう」

そして――熱い吐息をかけてきながら、彼女の実に健康的な肉体をぐいぐいと押し付けてきている。

特に下半身の動きがやばい。

やめよっか紅林さん、ここ、公共の場だよ?

ほら、他の人たちも見てる……え、気にしてない?

「アキノちゃんはかわいくてかっこいい……あたし、幸せ……」
「そうなんだね」

もはや僕の声は何一つ届いていない。

彼女は完全にトリップしている。

なんでぇ?

『カレシって認識してる相手に、デートで2時間かけて延々と口説かれたらこうもなるッス』
『此奴……途中から完全に意識せずに口説いていたな』
『口説いたのではない、口説き落としたのだ』

いやいや、女の子とデートしたらとことんに女の子褒めるのは基本でしょ?

そんでこっちの男らしさをアピりつつリードして、女の子が望む強引さでそれでいて紳士的に振る舞って、押したら引いて引いたら押して焦らしてとろとろにするものでしょ?

……ちがうちがう、そうじゃない……この子はこの前やばかったんだから普通に遊ぶつもりだったんだよ……それをなんで僕は?

彼女のふとももを見る。

ああ、このふとももが悪いんだ。
このふとももが何もかも悪いんだ。

僕は悪くない。

「アキノちゃあん」
「どうしたのかな?」

「この前の保健でさぁ、女の子同士の結婚に関する法律とか人工受精技術のこと言ってたよねぇ」

「言ってたけど、それ、公共の場で言うことじゃないよね?」

そういやそんな授業もあったっけ。

その授業中、3人からの視線が怖くてうとうとしてるフリしてたら本気でうとうとしてたけど。

「だからあたしたちさぁ、たぶんよゆーで赤ちゃん何人も産めるくらいには間に合うと思うんだぁ、ほら、数年以内に民間へって言ってたしさぁ」

「そういうのはセンシティブだから抑えようね?」

ほら、他の人たちもぎょっとした目でこっち見てるからさ。

だってほら、今の僕、線の細いホストとしか見えないだろうからさ。

まぁ近くで見られたり声聞かれたら女って分かるんだけどね。

しかし――この状況はマズいとは言え、まだセーフだ。

何しろここは普通のカフェ、それもそこそこ騒がしい感じの。
だから、隣のテーブルの人たちくらいしかこっち見てない。

いや、ガン見されてるんだけどね……あ、ちょ、写真はダメでしょ?

「でもアキノちゃんは浮気者だから――すぐに他の子見ちゃうんだよね」
「ひぇっ」

急にガチトーンにしてくるのやめて?

思わずちびりそうになるから。

男のときみたいなホースも栓も無いから、ひゅってなるとちびってなるんだよ?

「アキノちゃんを拘束したくはない。 けど、カノジョならカノジョらしく少しずつ進んでいきたいし、ずっと見ていてほしいの」
「うん、分かるよ」

「ねぇ……じゃあ、この気持ちはどうしたらいいのかな?」
「うーん、難問だね」

今にも僕っていうライオンに飛びかかってこようとしている雌ライオン。

知ってる?

ライオンってね、一見オスが強いように見えるし、ハーレム作るしで強そうじゃん?

だけども狩りはメスがメインだし、なによりハーレムを満足させられなかったり他のオスに負けるとかんたんに捨てられて、最後には1人寂しくのたれ死になんだよ?

基本的にハーレムを満足させるためだけに存在して、最後は捨てられる悲しい生き物なんだよ?

自然界のオスは、ただの使い捨て。

それ分かってる?

「………………………………」

いやぁ……ついうっかりこの子を溶かしたばっかりに。

「修羅場……」
「こ、これ、通報した方が……」

お、そこの観客たち!

今すぐ通報して!

そうすればなんとかなる気がする!

……ぴぴぴぴぴ。

「――――――――――――だれ」

「ひぇっ」

僕のスマホからなる着信音に、思わずちびりそ……あ、ちょっとちびった。

しょうがないじゃん……女の子はタンクもホースも栓も男よりしょぼいんだもん。

「――――――スピーカーで話して」

「え、や、でも」
「話して」
「はい……」

もうだめだ。

僕はもうおしまいだ。

きっと、最近引っかけた女の子の誰かからの連絡なんだ。
こういうときに限ってそうに決まっているんだ。

『存在意義を果たす刻が来たか』
『腕が鳴るッスね! この体、腕無いッスけど』
『む、元人間かお主……難儀な』

「誰? 予定では……3人……詰める……抜け駆け……死……」

え?

「出て」
「はい」

こわい。

僕はもうこの子に従うしかないんだ。

男は女の子に逆らえないんだ。

――――ぴっ。

ごめん、タイミング悪すぎる電話して来ちゃった子……せめて君の命だけは守るからね……。

「……あ、ああああああアキノちゃん? ふひっ、この前の……」

「………………………………」

え?

「話したいことが……ふひょっ、あるんだけど……」

「………………………………」

……ああ。

君は電話越しでも女の子相手にはそこまでダメなんだね、お兄さん。

「……あ、あのお兄さんだ……」

ふっ。

どす黒くなって渦巻いていた紅林さんが浄化されていく。

「げぺっ……あれ? 電話、通じてないのかな……?」

「………………………………」
「………………………………」

はぁはぁと荒い息づかい、女の子を相手にするとダメになる系良い人な彼。

そんな声にきょとんとした彼女が、僕を見てくる。

「……出たら? もう普通に話して良いよ?」

「あ、うん」

……良く分かんないけど、助かったよ、挙動不審な君。

今度女の子紹介したげるからね、君みたいな人でも気にしないタイプの良い女の子を。

あ、その子は中学生だから、仮に上手く行ってもあと数年手を出さないようにがんばってね?

僕は無理だけど、君ならできるできる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。 そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

白雪様とふたりぐらし

南條 綾
恋愛
高校1年生の紫微綾は、生きることに疲れ、雪の山で自らの命を終えようとしたその瞬間―― 美しい御小女郎姿の少女・白雪が現れ、優しく彼女を救う。 白雪は実は古の仏神・ダキニ天の化身。暇つぶしに人間界に降りた彼女は、綾に「一緒に暮らそう」と提案し……? 銀髪の少女と神様の、甘く温かなふたりぐらしが始まる。 【注意事項】 本作はフィクションです。 実在の人物・団体・宗教・儀礼・場所・出来事とは一切関係ありません。 作中で登場する神仏や信仰に関する表現は、物語の雰囲気づくりを目的とした創作によるものであり、特定の宗教や思想を推進・否定する意図は一切ございません。 純粋なエンターテイメントとしてお楽しみいただければ幸いです。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。 その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに! 戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。  入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。  しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。  抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。  ※タイトルは「むげん」と読みます。  ※完結しました!(2020.7.29)

処理中です...