幼女になった響ちゃんは男の子に戻りたい!【TS百合】:1 ~「魔法さん」にTSさせられた僕がニートを貫いた1年間~

あずももも

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28話 「――――」 4/4

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「赤色のタチア」と「金色のノーラ」ってせっかく覚えたのにどっかに走って行っちゃって「黒髪のアメリ」とのふたりだけになって、急にしんとなる。

最初に戻っただけなのに無性に寂しくなる謎だ。

「…………………………………………」

沈黙は気まずいしでも話しかけたらめんどくさいからってなんとなく見回してみれば、初めはよく分からなかったこの建物の中もちょっとは見慣れてきた気がする。

壁のあちこちに物を掛けるためだろうフックとかそれの大きいのがいくつも天井からアームらしき物でぶら下がっていたり、隅まで光がちゃんと通っているのに電球とかがあいかわらず見当たらなかったりと実に不思議。

サイズ的に……学生のときの体育館、あれを何倍かしたくらいのばかでかい空間の壁際にはいろんな箱とか……機械とかがぽつぽつと置いてあって地面のうち半分くらいはなんだかくぼんでいる感じだし、工場とか倉庫とかそういう雰囲気をにじませている。

こういうところって現実じゃお目にかかれないから新鮮で良いよね。

あとずーっと、気にならない程度の大きさの金属音に近いけど金属音じゃないような不思議な音が「こーん」とか「ごーん」って感じに響いているのもまた新鮮。

試しにと近くにあった箱を触ってみる。

ちらっとアメリさんをうかがってみても大丈夫みたいだからって触ってみたそれはすべすべとふにふにの中間くらいな、なめらかでこれまた表現しようのない不思議な感触が伝わってくる。

金属なのに不思議な感じだ。
そしてここにも不思議な文字が彫られているけどやっぱり読めない。

地球上のどんな地域でも大抵はどっかには書かれているはずのアルファベットとかアラビア数字とかがないのが興味をそそる。

ほら、工場とかだったら絶対にありそうじゃない?

なのに無いとかまさに謎言語だ。
たぶんは僕の無意識が作り出したオリジナル言語なんだろうけど。

あるいはただの適当でそれっぽい記号なのか。

どうせなら読める、あるいは読める気がするっていう設定だったならもうちょっとは楽しかっただろうにね。

紙がないから適当に集めてみて法則性を見つけるっていう遊びもできやしない。

黒い子とおはなしをする、させられるしか暇つぶしがないっていうのがとっても残念な限りだ。

だって女の子たちの会話って論理的に進むほうが少なくって話が終わらないまま次へ行ったり戻ってきたり「わかるー」だったり「よくわからない……」って感じでぶつ切りになっておしまい、っていうのが多いからなぁ。

なによりも話の結論っていうのがないっていうのがもやもやをいっつも残していくんだ。
だからさっきの3人の会話もつまらなくてそこそこに聞き落としていたはずだしなぁ。

でも夢の中で人を出してまで会話させようとしている僕の脳内の状況。

……精神の安定のために……お仕事する気はないんだけども現状唯一の男の知り合いな萩村さんと会話でもしたほうがいいんだろうか?

あの人だけなら「ちょっと話を聞きたいだけです」って言えば軽く話して終わってくれそうだし。

悪魔さん?

あの人、今井さんはしつこすぎるって思ったらしおらしすぎるって感じでよく分からなくなってきたから論外だしなにより女の人だし、また「勘」とやらが働いて連れて行かれても困るしなぁ。

「ん」

どこかから……あ、あの子たちが出て行ってあけっぱの廊下からか、そこからひんやりした空気がほこりっぽさとか砂っぽさとかな海っぽい匂いを運んできた。

やっぱりここは倉庫なんだろうか?

ひとりにしてくれていたなら好き勝手に……ゲームとか、現実でも旅行先で古い遺跡を隅々まで回るみたいにしてみたいんたけど、一応ここの持ち主的な子が居るからなぁ。

いくら相手が子供でも夢の中でも気が引けるものは引けるんだ。

でも急に黙り込んで何しているんだろうな。
どうでもいいけど。

僕の邪魔をしないのなら、静かにしてくれていてくっついたりしてきたりしなければどうだって良いんだ。

「えっと……『響』? えと、その」

そう思ったら前に回り込まれて上から見下ろ、のぞき込まれるような感じでもじもじしている。

……静かにしていてくれたら良かったのにね。

あ、自己対話だって思えば苦じゃないかも。

「…………あ。 えっと、この場合はごめんなさい? …………じゃないわね、申し訳ありませんのほうがいいのかなぁ」
「…………………………」

ひとりでぶつぶつ考える系のアメリさん。

「えと、とりあえずその、あのふたり……あ、元気なほうがタチアでおとなしいのがノーラっていうんだけど、いえ、言うんですけど?」

説明しようとして何かに混乱していて大変な様子だ。

「ずっと歩きっぱなしで疲れているだろうし、そのへんの箱をベンチにして休んでいてくれる……かしら? いえ、くれませんか? …………いただけませみゅっ!? ……いはい……」

慣れてない話し方するとそうなるよね……って感じに舌を噛んじゃったらしいアメリさん。

「普通に話してもらって平気だよ。 さっきの話し方で。 ずっとそうやっていたんだし」

子供が無理してやたら丁寧に話す必要ないって僕は思うし。

「…………ありがと」





「ごめんなさ……ごめんね? 目上の人に対する話し方ってこんな立場に……じゃなくって大人になってきたのにまだ私苦手で」
「いいよ。 僕は平気だ」

「でもやっぱりきちんとした言葉を使ったほうが良いっていつも……いえ、よろしい……結構…………やっぱ話しづらいからこれでいい?」
「良いよ」

中学生になるとこういうのって無くなるから小学生って感じ。
体つきは……いや、もしかしたらこう見えて小学生なのかも。

ほら、僕の体って発育良いはずだし……本来は。

「よかった! …………えとそれでね? んー、とにかく今はよくわからないだろうけど、っていうかどこまで言ったらいいのかわからないから言えないだけなんだけど。 ここで私と一緒にほんの少し待っていればうまく説明できるようになるはずだから安心して!! …………たぶんだけど」

どうやら根拠のない自信らしい……いまいち安心できないなぁ。

僕が、数少ない接点を持っていた人間……のうちの女の子ってやつを再現すると最近知り合ったあの子たちの性格とかがベースになっているみたいで、つまりは年相応の見た目に相応の中身ってことで。

なんていうか……リードしたがるから任せはするけど、こっちがちゃんと見ていないとなにをしでかすかわからないっていう子守しているときのあの感じをひしひしと感じる。

「なら2人で腰掛けて休もうか。 僕を案内してくれてありがたかったけど君も疲れただろう」
「でも」
「僕が疲れたんだ。 人を立たせておいて自分だけ座るのはなんだか悪いから」
「そ、そうね!」

お客さんの方から「座ってくれないかな?」って言われて初めて座れるって言うあれで、すとんと勢いよくいい感じの箱に座り込んでいる黒アメさん。

「ふぃ――……」

完全に脱力している。

さっきから疲れているような感じだったしな。
ついつい夢の中だからって忘れていたけどこの子たちも女の子だ。

女の子は察してほしいっていう生きもの。
それをこの半年で嫌というほど味わったんだ。

僕たち男とは違う生態を持っているもんだから彼女たちの気持ちを、さりげなーく出しているサインをくみ取ってあげて察するっていうことをしてあげて先回りしてあげないといけない。

そういうのは女の子同士なら阿吽の呼吸で楽々できるんだけど生憎と僕は男だから意識して気がつかないと気がつけないんだ。

僕たち男がそうしたいなぁっていう感じで提案してあげると嬉しくなる不思議な生きもの。

ただ察せないとストレスを溜めていっていつか大爆発する。
そして察することができるようになるにはただただ経験あるのみ。

姉や妹を持たない身には難しいところだ。
こういうところで人生の難易度が決まってる感じするよね。

「……っ! ………………っ!!」
「…………………………………………」

……すごくいい笑顔でぽんぽんと横を叩いているからおとなしく座ったほうがいいんだろう。
それにしてもさっきからちょくちょく「僕を前から知っているような」口ぶりが気になる。

初対面なのに……いや、ある意味僕の一部なのか、なら不思議じゃないか。
いつも相手が一方的に僕のことを知っているんだ。

「あ! そうだ!」

かたっと箱を揺らしながら……箱の中身空っぽなんだね……立ち上がった黒アメさんは、さっきまでのちょいだるな感じが消えていて走るようにして僕の目の前……の上まで来た。

「じゃあじゃあ、私はなにか冷たい飲みもの持ってくるわっ! なにがいい? 私のおすすめはね——」
「いや、僕は別に」

「なら適当に持ってくるわねっ? 少し座って待ってて待ってて!」
「あ、ちょっと」

動きがいちいち速い。
速すぎて僕の動体視力と反射神経が追いついていない。

気がつけば黒アメさんは離れたところにあった機械……がちゃりと開けてごそごそしているのを見るにどうやら冷蔵庫だったらしい……を漁っている後ろ姿を晒している。

どうせ飲んだ感覚しかないんだし、そもそも夢の中の僕はのどが渇いたって感覚すらないんだからいらないよって言おうとしたんだけど間に合わなかった。

というかあれ、他の機械とかに比べてなんだかごつごつしているって思っていたらただの冷蔵庫か……何だろって思ってわくわくして損した。

僕の期待を返してほしい。

……ということは他の立派に見える機械とかも実際はそのへんにあるのと大差ないのかもしれない。

つまりはここは張りぼてで見かけ倒し。

「…………………………」

まぁ僕には想像力ないからな、しょうがない。

冷蔵庫をごそごそとかがんで黒髪の毛先が床についちゃっていたのが持ち上がるのを見てしばし。

「わっとと!」
「……!!」

両手に缶とコップを器用に持って走り出したアメさんがちょっと走ったところで転びそうになっている。

「……ふぅ!」
「ふぅ…………」

なんかすごい感じに脚を動かして体勢を立て直しつつ、さらに速く走りながらこっちへ向かってきている。

あれで転ばないのってすごいなぁ……体幹すごそう。

僕だったら絶対べちゃって突っ伏す感じになって、手に持っていたものも落としたり壊したりするのはもちろんさらには鼻とか打ち付けて痛い目に遭いそうだし。

たぶん間違いない。
だってこの前そうやって家の中で転んだもん。

慣れている家の中でさえこれなんだ。

…………あれは痛かった。

本気で痛いと声って出ないよなぁ……。
それか反射で変な声が出る。

「ぴっ!」とか「みっ!」とかそんな感じの。

男のときだったらダサいだけだけどこれがかわいい……男のときの僕とは比べられないしみんなから言われるからもうかわいいでいいや……かわいい女の子からって思うだけでかわいくなる。

やっぱり人は見た目。
さらに女の子ってお得。

「…………………………………………」

……やっぱり染まってる気がする……起きたらお寺に行こう……。
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