幼女になった響ちゃんは男の子に戻りたい!【TS百合】:1 ~「魔法さん」にTSさせられた僕がニートを貫いた1年間~

あずももも

文字の大きさ
134 / 213

41話 勇気と告白と「――」 1/5

しおりを挟む
僕はつい最近に知った。

人間って、僕みたいな怠惰な人間でも火事場の馬鹿力ってやつで一瞬が何秒にも何分にもなるんだって。

階段に頭から落ちてる状態ほどじゃないんだけど……僕にとっては一大事らしく妙に冴え渡った思考が回っている。

顔見知り――いや、友達になった子たちの2人は僕を男だって言っているって状態に。

どういうことなんだ。
どういう状況なんだ。

何度かの経験でそれとなくわかってきた感覚を澄ませてみても、少なくとも今は魔法さんの気配はないみたい。
みんながどろんとしたりしていく感じもないし、僕自身についてもざーっとした感じがない以上、たぶんなんともなっていない。

だから魔法さんへの対処については後回しにできるとして、だ。

この子たちの僕への性別への認識がばらばらだったのに……なんで今、この話題をゆりかがし始めるまでのそれなりに長い期間……何ヶ月も何も起きなかったんだ?

少なくとも……えっと、最低でも10回くらいはこうしてみんなで集まって宿題とか見てあげたり、ずっといろんな話題を話すっていう時間だってたくさんあったんだ、そのなかで……意識してはいなかったけど、それはもう女の子という生きものの性質上あっちこっちに話題が飛ぶわけで。

そもそもかがりはいっつも僕に対して……肉体的にはしょうがないことだけど、でもくるんだからっていう理由で僕のことを年下の女の子だって見ていることが多い節がある。

まぁ肉体年齢はほんとうに年下なんだけど、前の僕と合わせて割ればこの子たちくらいの年にはなるわけで、つまりは最低でも同学年のはずだ、うん。

不本意ながらも年下の女の子扱いされた僕は、ことファッションの話題になっているときはそれはもう諭されるように世話を焼かれる。

それは……ゆりかたちと集まっているときでもおんなじだったはず。
「みんなに見られてるからやめてほしいなー」って思ってた記憶があるし。

僕のことを「ちゃん」付けなのは……いや、かがりの性格だったら、もしかしたらクラスとかでもかわいい系っていう男子とか他の男子とかに対しても「ちゃん」って呼んでいてもおかしくはない。

接した時間が彼女の同級生たちの誰よりも少ないはずの僕でさえそう思えるんだから、仮に……学校ではきれい系の花なかがりが誰に対してもそう言うのなら、受け入れられている……のかもしれない。

男でも女でも構わずにちゃん付けするっていうキャラクターが確立しているんだったら、そのへんは気にされなくなる可能性もあるからな。

まぁ「ちゃん」付けは良くないけど今はいいとしてだ、とにかくかわいいを連発するこの子のこと、普段からみんなに対して……僕に対してもかわいいっていう形容詞をあたりまえのように使っている。

かわいいって同級生の男子に毎回言っていたら……これもかがりなら言いそうだし許容されそう……考えても無駄っぽいからほっとこ。

個性で済まされる問題だからこれは置いておいていい。

「あぁ下条さんだからね」で済むのなら。

けど――けれども問題はゆりかたちの方。
ゆりかと、りさりんだ。

普段は男としてのアイデンティティを保ちたいのと、なによりも注目されたくなかったのとで……当時はまだ女の子の見た目でほっつき回っていても問題ないって知らなかったから、ほとんどは帽子とパーカーのフードとズボンっていう格好をしていたわけだ。

でも今みたいに人目のない屋内だったりゆりかの家とかに半ば強引に連れて行かれたりするときには、帽子もフードも外しているんだ。

いくら体温が低くて暑くてもなかなか汗もかかない僕の体だってそれでもやっぱり夏だったから蒸し暑かったわけで、あと視界も狭かったからリラックスしてるときは外していたんだ。

そうでないときは……いちいち動くたびにふぁさっとついてきてぴたんってなる髪の毛がうざったいのもあるし、気をつけていないと手とか足で引っ張っちゃって痛い思いをするから、家にいるときはともかく外に出ているときはパーカーの中に髪の毛を収めていたし、わざと大きめのパーカーを選んで腰まで届くようにして髪の毛をしっかり収納していたんだ。

けど、いくら隠したいっていうのと邪魔だからっていうので髪の毛を、首から下はパーカーの中に収納しているからといってもフードを取れば幼女、女の子としか見えないはず。

だって前髪が長い……のはともかく横の髪の毛も長いんだし、それが服の中まで続いているだろうってのは見ればわかるはずだもんな。

それに顔だって……幼女にしては男っぽい感じがなきにしもあらずって信じたい感じなんだけど、やっぱり男だって主張しなければ誰だって女の子だって思うし感じるもののはず。

少なくとも僕が僕の前に立って話していたら、そう思うだろうから。

で、いつもみたいにゆりかの家とかで、ふたりでマンガを読んだりゲームしたりしてるときみたいにすぐそばにいるとき、至近距離ならまず男の子だとはまちがえないはずなんだ。

つまりはこの時点でゆりかが僕を男だと認識しているのがおかしいんだってわかるんだけど、そのときに魔法さんが暴れなかったのもまた不思議だし認識できているのがおかしいんだ。

だってゆりかだってしょっちゅう、みんなで集まっているときとかに事あるごとに。
今思えばなんだけど、でもなにかと「男の感性だー」とか「かがりみたいな夢見る乙女にはわからない話だー」とか、やたらと僕を男扱いしていた気がする。

なんでゆりかにだけは魔法さんが働かない?
それともこれは働いた後なの?

前の僕を知らない人が僕が男って聞いたら前の僕って錯覚して成人男性って扱いするのに……男扱いはともかく大人扱いはされていないんだからおかしいんだ。

理屈が合わない。

……まだ僕が気がついていない魔法さんの仕組みが……ありそうだなぁ、だってこの認識の改竄について分かってきたのって最近……僕主観で……だもんなぁ。

ちょっと焦点を僕の目の前の子たちに戻す。

ゆりか、かがり、りさ、さよ。

4人の目は僕の視線とぴったり合っている。

……今考えたおかしいいろいろって、今こうして思い出してみてこうして考えてみてそれでようやくわかるっていうことは……もしかしたらあのときの、ねこみみとポニーテールをテレビで観たはずのあの場面みたいに「僕の方に」魔法さんがなにかやらかしてたとも考えられるわけで。

それを普段通りの認識の改竄と一緒にして見ると……今分かった性別の食い違い、僕に対する認識の食い違い、それにみんなが違和感を抱かなかったっていうの自体が、魔法さんのせい。

――最近、ほんとうに最近になって……この1週間、いや、10日ほどでようやく慣れてきた魔法さんの気配っていうの、気がつかなかった……気がつけなかっただけで、これまでにきっと数え切れないほどに襲われていたんだろう。

ここにいるみんなも、外に出かけていたときにも……いつなにをしていようが構わずに、誰も気がつかない形でいろんな会話を「違和感のないように修正していた」。

魔法さんにとって都合の悪いことが起きそうになると必ず。
ずーっと僕を監視し続けて、なにかがあればすぐに。

僕自身の認識や思考にも影響、していたんだな。
日常の中のすべてで。

ゆりか、それに話を聞いていたらしいりさが僕を男って認識していた理由は分からないままだけど、それでもこれまで「ん?」ってならなかったのは魔法さんのせいだと断定できる。

……僕自身の知覚すら改竄されていたらもう自覚すらできない。
それはこの体になったばかりのときにさんざん考えたこと。

みんなから幼女って見えるらしいから安心していたけど……1周回って戻って来ちゃった、僕が僕自身を信じられなくなるっていう可能性のうちのひとつなんだ。

いろいろうじうじ考えるよりもぱっと思いついた直感が正しいっていうのを前にどこかの本で読んだ覚えがあるけど、本当にそうだったのかもしれない。

――でも、今はこうして考えられているっていう時点でその認識は通常のものに戻っているはず。
っていうことは魔法さんが何かしらの原因で……弱まっている?

あるいはずっと隠そうとするんだけど1回でも知られちゃったらそのことに関してはもう魔法をかけないっていうこと?

僕の認識をねじ曲げないっていうこと?

ねじ曲げていた分までまとめて認識できるようになるってこと?

「あのー。 響さん? だいじょぶ?」
「……うん」

「や、その、私ね、えっとね、まさかねっ」

初めて見る感じに動揺しているゆりかがいる。

「あのね、私、ほんと、そこまで深刻になるだなんて思ってなくって……そのっ、ごめん!」
「いや僕は」

「だいじょーぶ、私は、いや、ここにいるみんな、響がどっちだったとしたって『響』は『響』なんだって思ってるから! ねぇ? だから、その……今までと何にも変わらないから!」

……すっごく心配されて気を遣われている。

遣わなきゃいけないのは僕の方だって言うのに。
騙してたのは僕の方なのに。

「うん、今のはお酒の席のことってことで! だってほら甘酒あるし……未成年がいけないことしない範囲だけど私たち子供だからびみょーなアルコールで酔っちゃったってことで! ね、大人ってお酒の席でやらかしたこととか忘れちゃうって言うじゃない? だからこの話題忘れよ? ほら、みんなも忘れるからさっ! ねっ、ねぇっ!?」

「……ま、お酒の席だと問題だから寝不足でハイになってたってことで良いかしらね。 私もゆりかに釣られていろいろ言っちゃったし」
「ちょっとりさりーん、ホントに酔っ払ってたのがそれ言うー?」

「……そうね。 響ちゃん、困っちゃったものね。 分かったわ、おしまいにしましょう」
「…………誰にだって言いたくないことは、あります」

僕よりもよっぽど……肉体的にもだったんだけど、精神的にもどうやら大人な彼女たちは急に声の調子を普段通りに戻して軽く伸びをしてみたり、忘れられていたテレビの番組について急に話してみたりし始める。

……困って黙りこくっていた僕とは全然違って。

うん。

この子たちは僕が思っているよりもずっと大人なんだな。
そうだよな、中学生って言えば思考能力なら下手な大人よりも上だもんな。

こんな、アルコールで毎晩止まっているような僕みたいなのより、ずっと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...