TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

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2章 Q.女の子になったら? A.引きこもる

13話 決壊寸前とくしゃみ

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……とんとんっ。

「………………………………」

「兄さん? ……あら?」

ぴろん。

――優花は基本的にスマホを持ち歩いている。
それは、家の中でもほぼ無意識でいつでもだ。

だから、

『ごめん。カゼ引いて声がかすれてる。喉も腫れている気がする。でも熱もないし、体調自体はそこまで悪くないから安心して。万が一でも優花に移すと困るから、治っても少しのあいだは話せない』

「……そうだったの。分かりました、それなら治るまで家事は私がしますね。食事も……適当で良いなら買ってくるので、食べられたら食べてください。ああ、通販は部屋の前に置いておくので良いでしょうか? でも、悪くなったら……行けそうなら病院へ。無理そうなら教えて」

『分かった。いざとなったらいつもの先生のところに行く。ありがとう、優花』

廊下から近づいてきていた彼女が、引き返す足音。

「……ふぅ」

僕は元から体が弱いから、年に何回か――引きこもりニートなのにカゼを引いて寝込む。

はたして病原菌とやらはどこから来るのか。

それは閉め切っているはずの室内で、ふと見上げたら黒くてかさかさと動くあの存在がふいに現れたあのとき、心の底から叫んだ記憶がある。

それはともかくどこからともなく侵入してきたウイルスのせいで僕がカゼを引くのは毎年何回のことだから、彼女もそこまで不審には思わないはずだ。

僕は体が弱すぎて、朝の散歩で1メートルくらいのところをすれ違った誰かからすらウイルスをおすそ分けされるって知ってるから。

「……とはいえ、ごまかせるのはせいぜいが数日。それ以上は……」

優花は心配性だ。

いや、その原因は僕が作った以外にないんだけども、ともかくも指定伝染病レベルの病気ともなれば、どれだけ抵抗しようとも僕を病院へ連れて行くべくドアを開けて入り込んでくるだろう。

つくづくに、ニートしてただけで1回転倒して気絶して運ばれた事実のせいで「ただ引きこもって最低限の消費の代わりの家事をして迷惑を掛けないで暮らす」ことにすら信用がないのが悲しい。

こんなのはニートと引きこもりの両方で失格なんだ。

「それまでに体が元に――戻るってのは、楽観過ぎかなぁ……」

とはいえ。

――ぶるっ。

「そ、そろそろトイレに行かないとまずいんだけど……」

まずい。

何がって、ちょっとばかり寝坊しすぎたせいで、この睡眠サイクルの時期なら優花が帰ってくる前までに朝のルーチンワークは終わっているはずだったのが、そもそもとして顔を洗うどころかトイレにも行っていない。

そして優花はもう帰宅していて、今ごろは着替えとかをしていて――そのあとは夕食とかお風呂とかで頻繁に廊下へ出てくる。

――あれ?

僕、もしかして本当に詰んでる……?

「なんか、こう……感覚的にはまだ全然我慢できるのに、決壊間近っていう……」

もじもじ。

姿見の前の僕は――一張羅になってしまったパーカーの裾で股をぎゅっと抑え、意識したとたんに上がってきた尿意で思わず膝をくっつけて前かがみになっていて。

顔は真っ赤、なんならこの体で初の感覚に汗さえかいていて。

あれ?

「これ、まずくない……?」

がたがた。

なぜか1秒おきに膀胱が膨らむ感覚に、

「んひぃっ!?」

思わずで座り込んじゃうほどに体が危機感を訴えてきている。

「んぁっ!?」

しかもその衝撃で危うく決壊しかける悪循環。

「ひ……ひぃぃぃ……!」

ぎゅうううう。

勝手の違う体でいつもと違う感じの筋肉を総動員し、

「……ふーっ、ふーっ……せ、セーフ……!」

なんとか波が引いた。

けども、排泄ってのは周期的に押し寄せてくる。

猶予はもう、数分もない。

尿意。

そうだ、もしかしたら世界がおがしくなっているんじゃないかと「性転換」とかで調べた知識のせいだ。

女の子の体は男とは違って、子宮っていう臓器が膀胱の上に鎮座している。

なんだそれ、怖すぎる。
なんだよ、男にない臓器が入ってるって……。

「ぐす……」

怖い。

肉体の危機も相まって、涙が出てくる。

――子宮とかいう未知の物体が今の僕のお腹の中に存在するって考えるだけでお腹がきゅーっとなって余計に尿意が戻ってきそうなんだけど、なんとか今は出口をぎゅーっと締めつけることで意識を逸らす。

ともかくその関係で膀胱が男と比べて小さくて、さらには男の象徴の男特有の機能を制御する筋肉自体がないもんだから、これだけがんばっていても普通の男と比べると圧倒的に締め付ける力が弱い。

つまり?

「くしゃみで漏れるとか、じょ、冗談だと思って……ひぅっ!」

ぎゅーっ。

もはや恥ずかしいとかそんなのは投げ捨て、全力で股を――パーカーっていう布1枚越しで抑え、物理的に漏れないように……まるで子供みたいに抑える。

「………………………………」

ふたたびに体内の感覚と格闘。

ぽた、ぽた。

流れ落ちる、冷や汗。
下からの液体ではないけども、僕は今、体じゅうがじめじめとしている。

永遠にも等しく感じるその時間は――すぅっと過ぎ去った。

「……ふぅー……セーフ……」

とりあえず、我慢していたら今回の波も波は去ったらしい。

けども、膀胱の中の水分という圧力は変わらずに危機感を与えてくる。

「……ゆ、優花は……」

そろりそろりとドアへ忍び寄り――もちろん股は抑えたままで――かちゃりとドアノブをひねり、1ミリだけ開けてみて耳を澄ませる。

――少なくとも廊下ではなく、換気扇も回っていないから台所でもなく。

「部屋に居るか、夕食食べたりしてるかのどっちか……」

危機は去っていない。
行くならばすぐに行くべきだ。

じゃないとこんなところで漏らして男のプライドは木っ端みじん。
男として、大人として、兄として――すべてが砕け散る。

「で、でもぉ……」

僕は片手で押さえている、なくなっていた場所を見下ろす。

あまりのあまりさで内股になって、本当に女の子みたいな格好になっているのが気にならないくらいの下半身を。

……こんなところを。

見知らぬ――いや、知ってるどころか毎日何時間も画面で見てきたけども――とんでもない美少女のお尻を丸出しにしてトイレをして、出したそこを拭くとか、とんでもない犯罪な気がするから。

女の子の裸――小学校低学年まで限定なら、見慣れてはいる。

彼女とか居たわけでも犯罪を犯したわけでもなく、7歳違いとかいう「女の子」というよりは「被保護対象の子供」な優花の世話で、幾度となく見てきただけだ。

小さいころはお兄ちゃんっ子――僕が高校でやらかすまでは僕自身もそれに応えられていたから――だったから、お風呂もずっと一緒だったんだ。

でもそれだって当時の僕としてもやましさなんて覚えての行動じゃなかったし、そもそもとして肉親の――妹だ、怖じ気づくこともなかった。

そりゃあ優花が生まれたばかりのときに僕は既に小学生だ、母さんに頼まれておしめ変えたり風呂に入れてやったり、プールとか海とかで僕の体を洗うついでに一緒にあわあわしてあげた相手なんて、性的な対象となんて――たとえこの歳になっていても、できるはずがない。

おしめを替えるときは母さんから拭く方向について――お尻からお股にってやっちゃうと――男とは違って皮できゅっとすぼまっているし何よりも離れているのとは違って女の子は保護されていない割れ目しかなく、そこにお尻からの雑菌が入りやすいから気をつけてって教わったり。

そのことを小さい優花のトイレの際に――小学校低学年まではひとりでできない子だったから――何度となく教えてやったり。

あるいはトイレに急ぐタイミングを間違えて家の中とか出かけてるときにやらかして泣いてるとき、抱えてトイレに連れてってやって拭いてあげたりしていたんだ、その構造自体は見慣れていても性的な何を感じることもなかった。

そうだ、歳が離れているとはいえ肉親に異性が居てくれたおかげで、少なくとも「普通」のこととして――たぶん、この体の股にも抵抗はないはずなんだ。

……それもあって僕は、いわゆる「ロリキャラ」には興奮できない体質になっているんだけども、それは本当にどうでも良い。

さらに言えば「妹キャラ」も絶対に無理になってるけども、それも今はどうでも――ひぅっ!?

「ふーっ……ふーっ……」

あ……危なかったぁ……!

けど――この子は?

ひより大先生の創造したもうた「こはねちゃん」は?

この天使のごとき概念を具現化した存在は?

鏡に映るのは、我慢と恥辱と後悔と興奮でその真っ白な顔が真っ赤に染まる、普段はくりくりとした目つきで。

視聴者たちからは【妹キャラだな】【妹さんの妹さんって設定はどうでしょう】【こんなあどけない顔して中身は成人男性……ふぅ】とか【まったく、バ美肉ロリは最高だな!】とか言われて。

……あれ、そういやあのときからときどき、昨日ほどではなくてもTSの話題持ち出してくる視聴者たちだったっけ――言われてきたくらいの、優花とは別のベクトルな、小学校低学年向けなピュアな少女漫画の主人公的な美少女で。

背は140cm、1回しか見ていないから断定はできないけども優花の幼いころのようにがりがりで心配になる肉付き、これもまた幼い優花のときと同じく――ああ、そういえばそうだった。

幼いころからお兄ちゃんっ子で、今とは違ってクール系美人と鼻の高い優花がお風呂をせがまなくなってきたのは、だんだんと女の子の体つきになってきたからやんわりと断るも週に1回は突撃してきた小学校高学年を過ぎ、彼女が中学生になるかならないかのころ。

いつものように僕に合わせて脱衣所に突撃してきてすっぽんぽんになろうとして、ふと下腹部に彼女の髪と同じ色のそれが薄く生えているのを自慢されたからそれとなくたしなめた日からだったか。

あれは悪いことをした。

言い方とかもデリカシーに欠けていたって反省しているし、少し日が経ったころに謝ったっけ。
それでも僕が本格的に引きこもるまでは兄妹仲は良好で、だから恥ずかしそうに笑って許してくれていたんだ。

……つまりはそれが生える前の、たとえうっすらと膨らんできた胸や尻も気にせずに羞恥心とかが発生する前の「子供/妹」から「乙女/女の家族」になったそれ以前の姿ってことで。

だから保護者であるはずの成人男性な僕が子供のこんな姿に興奮しちゃいけないのに悲しい男の性で、必死に何かを我慢している女の子の姿を見ちゃったりなんてしたら――――――は、は……っ

「くちっ」

くしゃみ。

涙がぽろぽろと出ていたからか、鼻の奥がつんとして思わず出てしまった生理的反射。

「…………………………あっ」

それは、つまり――。
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