TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

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3章 全世界にバレた僕の声

22話 声バレしてたらしい

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危機感のない先生のためにひと肌脱いだ僕は、勝利の盃を手にする。

こういうときのお酒は、苦しさを紛らわせるためのそれよりずっとおいしいんだ。

「ぷはっ」

【草】
【まーた飲んでる】
【こはねちゃん……? 息つくほど一気に飲んじゃダメよ……?】

ひより先生は――ほぼ確実に、女性――女子だ。

それも、たぶん本当に学生――普段のつぶやきから、ほぼ中学3年以降大学未満の。

加えるならば、どうにも危なっかしい発言からして中学生レベルの。
先生の絵柄的と絶妙にマッチするほどに、純粋な性格の。

――そのくらいまで僕にだってわかっちゃうほどに、危なっかしいんだ。

……そして、女性の多くは年上の男性に――たとえ無職ニートダメ人間だったとしても、惹かれやすいもの。

それはもう、今じゃ価値観的にアウトな描写の多い少女漫画――小さいころ、近所のお姉さんが「要らないから捨てるけど、読む?」って定期的にくれたんだ――を読めば分かる。

女の子は高校くらいまで相対的に男子より成熟してるからこそ、その上の存在を求めるんだって。

それが生物の性別的な本能なら仕方がない。
僕たち男が、女性なら年下から年上までストライクゾーンが広いのと同じく、本能だから。

そんな本能は、こんなダメ人間相手でも働いてしまっているらしい。

……僕の勘違いなら良いなって思ってたけど、そうじゃなかったら。

ううん、僕が1人で好かれてるって勘違いして自爆するなら、僕1人のプライドの問題だけで済む。

けども――本当だったら。

そう思えば、やっぱり僕は確証がないながらも「女性」としての彼女は突き放すしかない。
大丈夫、普段の書き込み通りの純粋な性格みたいだし、そのうち良い人と巡り会えるだろうし。

そんな感じでイラストからも、ひより先生は純粋過ぎる人。
だからこそ、はっきり言っとかないとね。

好意は嬉しい。

僕が人間として最底辺の存在と自覚していなければ、あるいはとも思ったことだろう。

でも、僕は社会的には存在しちゃいけないものなんだ――今の肉体も含めて。

――すぅっ。

「――まぁそもそも、たとえひより先生から詳細な打ち合わせとか言われてリアルで会おうって言われて目の前でサインとか簡単なイラスト描いてもらえるとかいう人生で最高の一瞬をいただけるとしても、いやすっごく欲しいし貯金全部どころか僕の臓器を対価にしまくった借金でも差し出して良いレベルだけど、僕、そもそも家から出られないしそもそもの大前提として初対面の人と会話できないので無理ですね。会話が成立しないので仲良くなるのすら無理です。近づいただけで嘔吐するので大迷惑掛けますね。トラウマ間違いなしで損害賠償か刑務所入りは確実です。『メンタル命な絵師先生に接近してゲロを浴びせかけた男』としてニュースで輝くこと間違いなしです。それより早くイヤホンとか外して授業に集中してください先生、聞いてたらダメニートになりますよ」

【ひより「はい……」】

よし、ここまで言っておけば良いはず。

誰だって出会い頭にゲロ吐いてくる男なんか嫌に決まってるもんね。

【草】
【草】
【ばっさりで草】
【キレッキレの自虐芸】
【ひより先生のためでもあるんだろうなぁ……】

【こはねちゃん、こういうとこは男らしいね】
【男は必要なら自分を悪者にできないとね】
【なにしろ自称成人男性のTSっ子だからな、キャラ作りは完璧なんだぞ】

「TS……まだその設定生きてるんだ……まぁいいや、実害はないし。それより昼までマッチングとかしにくいし、適当にこの前のセールで買ったのを……」

――あれから少しして、イスの上にいい感じのクッションを敷いて、マウスを買い替えたりして――服はシャツとぱんつだけを買って、元通りの生活をしている。

ゴミ出しとか家事も再開し、声も、体が縮んだ某名探偵のごとくに小さいスピーカー&返事を聞く用のマイクをドアの近くに置き、部屋の反対側でボイチェンでしゃべることにより、優花の耳もごまかすことに成功。

ゴミ出しの時間帯を深夜にし――さらには冬用のコートをかぶることにより、万が一の通行人にも「背が低いか、腰を屈めてる大人」って印象づけにも成功してるはず。

――背が低くって筋力がよわよわなのがネックだけど、それ以外はなんとかなるもんだね。

あとはあいかわらずにトイレとお風呂が……けど生物である以上、しないわけにはいかないんだ。

決していかがわしい目的じゃない。
ときどき座り込んでまじまじと見ちゃったりしても、決してそういうつもりじゃないんだ。

あ、さすがにまた漏らしたら泣き崩れること確実だから、トイレだけはちゃんと行くようになった。

元から優花の方が気を遣ってくれて滅多にばったりとかもないし……正直、もう、ここまで来たらいっそのことバレた方が楽だって、どこかで思っているから。

……優花が活動する時間帯は水分を摂らない生活になってるからか、遭遇する気配はないのには安心して良いのかがっかりすれば良いのか。

やっぱ、嘘って吐いてる方が辛いんだ……いや、今の僕は下手すりゃ追い出されるからしょうがないんだけどさぁ……。

【まーた時間溶かすゲーム始めようとしてる……】
【こはねちゃんには時間がたくさんあるからね】
【その時間でニート脱出とかしない……?】
【集中力とかあるし頭良さそうだし、資格とか取れば……】
【資格じゃなくっても、今はクラウドな仕事なら……】

「しない。無理。生理的に無理。勉強しなくなってるしアルコールでIQ下がってるし、文字越しでも他人と仕事の打ち合わせとかからして無理」

【草】
【断言してて草】
【ダメダメで草】
【まぁ20代なら……】
【脱出したくなったら言ってね  協力はするから】

「うん、ありがとう。じゃあ……おっと」

一瞬だけちらっと何かのウィンドウがポップしたのを無意識でクリックしちゃったのに、後から気づく。

……まぁ特に問題はないだろう。

システムの更新で再起動するだけなら配信も落ちるだけだし、その兆候もないし。

「じゃ、インストールしたら始めるから待っててね」

【はーい】
【はーい】

そうして僕は、新しいゲームをインストールしているあいだにトイレへと急いだ。

……もう二度と、おまたと足元がじわじわとあたたかくなる悲しいできごとは繰り返したくないから。





「……よし、盆栽ゲーは楽しいと知った。飽きたから対戦しないと」

【草】
【楽しい(飽きた】
【飽きるの早くて草】
【正直でよろしい】
【こはねちゃん、人見知りのくせにオンゲー好きだから……】

「オンゲーが好きなんじゃない、前からやってるからプレイ歴だけで一定数にアドバンテージ取れるから好きなんだ。反射神経が悪くってもある程度勝てなきゃやる気起きないよ。ほら、無駄に時間あるから戦術ノウハウとか実況動画とか漁れるし。格下相手ならなんとかなるのが楽しいんだ。知識と経験だけで新米とか調子悪い相手をぼこぼこにするのが楽しいんだ。あれだよ、OBだからってでかい顔していつまでも後輩の学校に入り浸るあれだよ。年齢だけでマウントを取れるから楽しいだけなんだ」

【草】
【それはそう】
【わかる】
【こころがいたい】
【心当たりあるやつ居て草】

【いや、でもそれ、わりとガチ勢の所業では……? 数年飽きずに戦術研究し続けるって……しかも格下とか、ぶっちゃけ大半が……】

【才能の無駄遣いとはこういうことか】
【これが某メジャーゲーなら、今どきはeスポーツプレイヤーにでも……】
【そうじゃないから悲しいんだよなぁ】

【お金ってね、あるところにしかないからね】
【人が集まらないと広告効果がね……】
【経済効果がないと、ただの趣味だからね……】
【ぶわっ】

2、3時間を楽しみ尽くしたゲームを閉じ、ほぼ毎日起動しているいつものゲームを起動。

過疎ゲーと呼ばれているオンライン対戦ゲームではあっても、平日の昼間は数分待てばほぼ毎回別のプレイヤーたちとマッチングできる程度の人気はあるらしい。

……まぁ人気作なら平日の午前でも10秒くらいでマッチするって考えると悲しくなるけどさ。

【?】
【あれ?】
【ちょいちょいフリーズ】
【ぐるぐる】
【俺だけじゃなかったのか】

「うん? こっちは特には……まぁ配信サイトはときどきこういうことあるしなぁ」

かちかちかち。

僕はその異変に特に気がつくこともなく、慣れた手つきでプレイする機体の調整をする。

ぴこん。

「あっ。……まぁいいや」

まーた無意識で、ポップしてきたウィンドウのOKかキャンセルを押しちゃった……けども、特に変わったことはないみたいだし。

「ん、マッチングは強敵だな……しばらく集中するね」

【え?】
【!?】
【待ってこはねちゃん待って】

【声! 声!】
【え? こはねちゃん女の子?】
【あっ……クリック音とか、これ、さっきまでボイチェン掛かって……】

今回の対戦相手には、僕が選んだ自機と相性の悪い性能の敵が、かつ、チームで参加してるのが居る。

どうせニートの暇つぶしではあるけども、僕にだって時間をかけてきた分程度はプライドがあるんだ。

「とりあえず初動は控えめに……狙撃ポイントへの警戒を……」

ひとまず戦いの最中はゲームに熱中しよう。
人に見られている以上、真剣にやらないとだし。

【聞いてねぇ!!】
【草】
【こはねちゃん、試合中はあんまコメント見ないからね……】
【だーから読み上げとか導入したらって前に言ったのに……】
【え、でもこれまずくない……?】
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