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7章 半分バレてない、僕の配信
86話 【こはねちゃんの恋愛相談】2
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ぷるるるる。
配信中の電話……優花だ。
「もしもし? 優花? 何? え、配信? ちゃんと始める前に連絡したでしょ? 約束は守ってるんだから文句は受け付けないよ」
【草】
【速報・お姉ちゃんのお電話】
【配信中にお姉ちゃんから電話で心配されるこはねちゃん】
【保護者からの電話で中断される配信とか斬新すぎる】
【斬新どころか前代未聞だと思うよ】
【ぶっちゃけ保護者同伴配信ってだけで話題かっさらえそう】
【それはそう】
【多少はあるにしても、この前みたくギャン泣きを通り越したガチ泣き配信にお姉ちゃんが駆けつける配信とかは確かに前代未聞】
【さらには有志が爆撃しにSNSへ飛び立ったり連係プレーで保護者を送り届ける配信なんてのは正真正銘前代未聞だな!】
【草】
【草】
【改めてすごいよな、こはねちゃんは】
【ああ……よわよわさっぷりがな!】
【こはねちゃんはね、みんなの大切なかわいいものだからね】
【かわいいね】
【かわいいね】
【ママになりたくなるね】
【お前がママに……あ、こはねちゃんはかよわすぎるからNGね】
【こはねちゃんは永遠の子供だからね】
【永遠のロリ……それはメンタル面も含めてな】
【これが25の姿だと思うと興奮するね】
【よわよわすぎて、俺たち私たちがママになるしかない存在だからね】
【草】
【ひでぇ】
「心配しすぎだって。え? 今日? うん、なんかね、ちくちくささくれ立ってるっていうかそんな感じなだけで、吐き気は少なめなの。うん、ちょっとちくちくしてる」
この体になってから、機嫌も日替わり、時間替わりでころころと変わりやすい。
んで、今日の僕は……なんとなく、なんにでもつんつんしたくなるんだ。
【そっかー】
【わかるわかる】
【女の子だもん、そういう日もあるよね】
【だから……配信、しよっか……?】
【お姉ちゃんとの電話もそれはそれでいいけど……配信、しようね?】
【あと全部会話が筒抜けなのは良いのかなこはねちゃん】
【「どうせあとで編集カットされるから良いや」って思ってそう】
【それだ】
【ああ、メン限+α配信→やらかしをカットしてのディレクターズカット動画の流れが染みついて……】
【俺たちへは良いのか……いや、どうせもう何もかもさらけ出して恥じらいなどないもんな……保護者だもんな……保護者相手に恥ずかしがる子供なんていないもんな……】
【草】
【草】
【どうしよう、めっちゃ和んできた】
【奇遇だな……私もだよ】
【これが……これが、保護者の気持ち……!】
【準介護班は常に新人を募集しています 条件を満たしたら介護班への昇格も可能です】
【よし……昇格試験、受けるか……】
【草】
【(こはねちゃんがお電話に夢中だから言うけどさ お姉ちゃんの声とかいろいろ、ぶっちゃけもうロリ声=ボイチェンっていう設定がないなってるよな)】
【(それな)】
【(まぁそれでも安定してるっぽいし)】
【(いざとなれば第二第三のエスコート作戦があるからな!)】
【(安心するよね)】
【(ちょうちょ)】
【(本当に……おい誰だ今の)】
【(脳が……よわよわになる……)】
【(脳のしわが増えて進化してそう)】
【(なにそれすごい)】
【(進化したら環境適応で見かけ上は退化してそう)】
【(かわいくはなるよ?)】
【(草)】
◇
「……まったく、優花も心配性だよなぁ……えっと? どこまで……ああそうだった」
どうやら、ただヒマだっただけらしい優花に付き合わされ、彼女の休み時間をまるまる会話に付き合わされた僕。
「コメント欄の人たち、怒って……ないね。良かった」
なんだか話の流れがわからない感じになってるけども、とりあえず怒っている雰囲気はない。
【おかえり】
【ただいま】
【↑お前は誰なんだよ】
【草】
【雑談が捗ったから、これはこれで】
【とりあえず俺たちの総意としては、こはねちゃんはエターナルロリキャラとしてがんばってほしいってところ】
「どんな流れでそうなった……!? まぁいいや」
こんな平日の昼間に配信なんか見てる人たちだ、優花と同じくヒマなんだろうし。
「えーっと……あ、そうだ。モテたいって相談だったけど……そもそもさっきの人、まだ居るの……?」
【居るよ】
【居るぞ!】
【居るわよ!】
【居ましてよ!】
「うわっ……居た……そして増えてる……まるでじとじとした日にふと見てみたら部屋の隅で動いてる……くぴっ」
僕はお酒を飲む。
やつらは天敵なんだ。
【草】
【悲報・俺たち、G扱い】
【朗報・俺たち、G扱い】
【えぇ……】
【わかる】
【興奮するよね】
【本気でおぞましいものを見る目で怯えられたいんだ】
【えぇ……】
「……思わず気持ち悪かったからって言いすぎたって思ったけど、もういいや……喜んでるんなら……」
うん、まあ、気持ちはわかる。
かわいい声でけなされると……いけないいけない、ぞくぞくしたら危ないんだ。
「……とにかく。僕はさ、『今』は顔が良くとも、それでも学校を中退して引きこもってニート三昧して家族に迷惑掛けて荷物になってゴミになってるような存在なんだぞ? 顔だけが良くったって何の意味もないんだ。そりゃあ、外に出たらプラスには働くけど……出ないなら、何の意味もないよね? 顔なんか、さ。誰にも見られないんだから」
話を強引に戻す。
だって、黒くてかさかさするアレの話題になりそうだったから。
【草】
【それはそう】
【とうとう自分のかわいいを認めたか】
【まぁ表に出ないんなら見た目は関係ないわなぁ】
【TSっ子だから、元の男の子と今の女の子のギャップがあるんだよ】
【そうか】
【なるほど】
【裏切り者、お前……】
【こいつがBANされない不思議】
【こいつ、暴言しかしないのにこはねちゃんが吐かないなんて……】
「そいつは子供だから良いの。吐き気もしないし……ともかく、僕の顔のことは置いといて、だ。……モテたいって言った人。なんでモテたいの?」
【男だからモテたい それじゃダメ?】
「納得しかしない主張だから良いけど……でもさ。冷静になってみようよ。それ、具体的に誰からモテたいの?」
僕は人生で一度も――嘘ついた、ちょっとしかそうは思ったことがない。
それは、今から言うような考えがあるから。
……ちょっとこじらせてるとは思うけどね。
「モテたい。ハーレムしたい――なるほど、それは男の夢だ。ロマンだ。男の本能だ。それには文句つけることもない。ここに居るみんなも同じだと思うけどさ? ……誰にモテたいの? 具体的に居るの? 好きな子とか」
【え】
【いや、特に……】
【かわいい子とおっぱいな子とおっぱいな子へは目が引かれるけど】
【草】
【正直でよろしい】
【かわいいとおっぱいには勝てないよな!】
【男子サイテー】
【仕方ないよ、男だもん】
【男はな、生まれてから死ぬまでおっぱいには敵わないんだ】
【女子だっておっぱいとふとももには負けるからしょうがないね】
「うんうん、男だからね。おっぱいには勝てない。現に優花も大きいせいで、会話する男子の視線が胸元にしか来ないから困るっていつも愚痴ってきて……あ、電話。今度は何?」
【草】
【草】
【こはねちゃん!! 個人情報!!】
【まぁ気持ちはわかる】
【あのおっぱいはなぁ】
【※こはねちゃんをハグしてるとき、こはねちゃんの顔がすっぽり……ふぅ……】
【草】
【あのサイズが良いんだ】
【わかる】
【こはねちゃんのひんぬーもお姉ちゃんのおっぱいも好き 男だもん】
【あの 昼間っから猥談になってるんですけど】
【だってこはねちゃんがそういうの、ある程度OKなんだもん……】
「おこられた……ぐす……くぴ」
電話口の優花は、さっきとは全然違って怒ってた。
「こわかった……ぐす……くぴくぴ……」
とっとっとっ。
酒瓶の中で、気泡が浮かんでいく。
【(OKこのへんでやめておこう)】
【(了解した)】
【(常にこはねちゃんのメンタルを気にする必要がある配信)】
【(まるで子育てだね)】
【(小学生までのな!)】
【(草)】
優花って、怒ると怖いんだ。
男のときならへっちゃらでも、今の僕だとおなかがきゅってなるんだ。
「……ふぅ。なんか落ち込んできたからさっさと終わらせるとさ」
【うわぁぁぁぁ急に戻るなぁ!?】
【草】
【こはねちゃんってテンションの乱高下激しいよね……】
【子供と同じだね 数秒でコロコロ変わるんだ】
【女心よりも不安定で俊敏で手に負えないのが子供の機嫌だぞ】
【ママぁ……】
「……モテたい子相手にモテれば良いだけだから、モテたいんならその子たちについて調べて、その子たちが喜びそうな見た目とか趣味とかをがんばれば良いんじゃないかなって。女の子全員にモテたいとかさ、さっき話したイケメンさんじゃなきゃまず無理だしさ。そもそも正直趣味じゃないけど女子だから振り向かせたいだけの子とか居るだろうけど、そういう子にモテても、ずっと付き合うのは……ねぇ?」
【なるほど】
【確かに】
【思ったよりまともな意見だった】
【普通だけど大切よね】
【女子全員にモテる そら無理だわな】
【思ったり妄想する分には良いんだがな】
「そうそう。モテたいって言っても、それを実行しないと何の意味もないんだ。イケメンさんならともかく、僕たちみたいなのは女の子から言い寄られるだけの……ましてや僕たちが好きって思うレベルの子からすれば道ばたの石ころなんだからさ、石ころなら石ころなりに自分を磨いてみなきゃダメなんじゃないかなって。まずはアピって目に留めてもらわないと。良い感じの雰囲気を醸し出してる、磨かれてすべすべになってて、石ころの中でもちょっとは見所がある石ころだって」
【それはそう】
【めっちゃそう】
【でも石ころ連呼は草】
【草】
【そんなに石ころが好きなの? こはねちゃん】
【(もしかして、こはねちゃんって実はかしこい?)】
【(賢かったよ? ちょっと前までは)】
【(今は?)】
【(かわいいけど?)】
【(草)】
僕は、かつての学生時代を回顧しながら話す。
「男女ってのはさ、やっぱ男からアプローチするもので、女はアプローチを待つものなんだよ。それはどの時代どこの地域でも、僕たちの祖先とかと同じ動物だってそうじゃん? メスはオスより魅力的で、オスはみんな一生懸命にアピール合戦して……勝ったオスだけが。そういう仕組みなの。今の時代は必ずしもアピールに負ける=敗残者じゃないってだけで、すっごく恵まれてる方なの」
例えば僕みたいにね。
男として女にアピールしたこともなくって、モテたこともなくって――最後は男としての本懐を果たす前に男ですらなくなったってので。
「んで、メスもまた本能的に、同じメス同士で人気があるオスになびくし、他のオスに尊敬されてるオスにもなびく。だから、なにもしないでいるとコミュ力とか運動神経とかバイタリティーとか顔とか背丈とか、そういう外から見ても分かるし自慢になる素質を持ってる男しかモテない。少なくとも本能だとそうなるよね」
【悲報・こはねちゃんがガチ】
【これはかしこい成人男性】
【こはねちゃんさんの思考回路って現実的よねぇ】
【このへんは配信初期から変わらないなぁ】
【そうなの?】
【っアーカイブ何百】
【っ×2時間~8時間コースずつ】
【それはちょっと……】
【草】
【それはそう】
【なまじ積み重ねがあるから追うのが大変なんだよなぁ】
【切り抜き師が全力でカット版作成してくれてはいるけど、全然追いつかないんだよなぁ】
「だから、モテたいってだけ思いながら悲しい生活するんじゃなくって、モテるための生活にしてみたら良いんじゃないかなって。見た目をそれっぽくしてさ、トークも今どきはそういう講座とか……ムーチューブでも優しい人が無料でとか、有料でも1回数千円からマンツーマンの指導とかあるしさ。君が今、学生さんなのか社会人なのか僕みたいなプー太郎なのかはともかく、周りに女性は居るだろうし、彼女たちの中で興味がある人が居たら……って、そんな感じ。モテたい人が居たら、その人に向けてアピールしないと、いつまで経ってもモテないままなんじゃないかなってさ」
ぷはっ。
思ったよりも口が回った気がする。
やっぱり得意分野――僕の思ってることを吐き出すだけの独壇場――なら饒舌になれるんだね。
【わかった】
【本当にありがとう】
【誰にモテたい――好かれたいか】
【もう一度、考えてみる】
【\40000】
【えらい】
【感動した】
【これは良い話】
【これで彼女できたらガチで投げ銭分の価値はある】
【言ってるのがよわよわなこはねちゃんだからこそ……ね】
【まぁ準でも介護班な時点で入れ込んでるわけだし】
【推しから十数分も真剣に考えてもらったら嬉しいよなぁ】
【しかも割と本人には届いたらしい話がな】
【ぶわっ】
「うぇ、よんまん……!? そ、そこまで投げなくても……や、嬉しいけど、みんな、自分の懐具合には気をつけてね……? お金は本当に大事だって、1円も稼いでない僕だからこそはっきり言っとくからね……?」
【草】
【草】
【オチで草】
【こはねちゃん?? もう稼いでるでしょ??】
「良いか? ――配信者はね、こうやって幸運にも投げ銭とかメンバーシップとか受け取れるようになってもね? ……やつらは常に何割かを抜いてくるし、抜き取ったのも3ヶ月とか待たせてから渡してくるんだ。つまり現状ではあいかわらず僕はただのニートで、1円どころか1銭も稼いでないって寸法なんだよ」
悲しいね。
でもそれがプラットフォームってのに乗っかってるありんこの宿命だから。
【草】
【かわいそう】
【あー】
【こはねちゃん……ファンボ、お姉ちゃんに頼んだって】
【あっちなら1ヶ月おきに受け取れるとか割が良いとか】
【なるほど】
【限定コンテンツはよ】
【R-18はありますか?】
「無いよバカ。……ふぅ」
ぎしっとも言わないイスさんの背もたれで、ほっとひと息。
……僕は男で、男からおごられたりプレゼントされたり貢がれたりする女子の生態的感覚を持ち合わせていない。
だから……こうやって、感謝されるお返しにお金ってのには……未だに慣れないんだ。
配信中の電話……優花だ。
「もしもし? 優花? 何? え、配信? ちゃんと始める前に連絡したでしょ? 約束は守ってるんだから文句は受け付けないよ」
【草】
【速報・お姉ちゃんのお電話】
【配信中にお姉ちゃんから電話で心配されるこはねちゃん】
【保護者からの電話で中断される配信とか斬新すぎる】
【斬新どころか前代未聞だと思うよ】
【ぶっちゃけ保護者同伴配信ってだけで話題かっさらえそう】
【それはそう】
【多少はあるにしても、この前みたくギャン泣きを通り越したガチ泣き配信にお姉ちゃんが駆けつける配信とかは確かに前代未聞】
【さらには有志が爆撃しにSNSへ飛び立ったり連係プレーで保護者を送り届ける配信なんてのは正真正銘前代未聞だな!】
【草】
【草】
【改めてすごいよな、こはねちゃんは】
【ああ……よわよわさっぷりがな!】
【こはねちゃんはね、みんなの大切なかわいいものだからね】
【かわいいね】
【かわいいね】
【ママになりたくなるね】
【お前がママに……あ、こはねちゃんはかよわすぎるからNGね】
【こはねちゃんは永遠の子供だからね】
【永遠のロリ……それはメンタル面も含めてな】
【これが25の姿だと思うと興奮するね】
【よわよわすぎて、俺たち私たちがママになるしかない存在だからね】
【草】
【ひでぇ】
「心配しすぎだって。え? 今日? うん、なんかね、ちくちくささくれ立ってるっていうかそんな感じなだけで、吐き気は少なめなの。うん、ちょっとちくちくしてる」
この体になってから、機嫌も日替わり、時間替わりでころころと変わりやすい。
んで、今日の僕は……なんとなく、なんにでもつんつんしたくなるんだ。
【そっかー】
【わかるわかる】
【女の子だもん、そういう日もあるよね】
【だから……配信、しよっか……?】
【お姉ちゃんとの電話もそれはそれでいいけど……配信、しようね?】
【あと全部会話が筒抜けなのは良いのかなこはねちゃん】
【「どうせあとで編集カットされるから良いや」って思ってそう】
【それだ】
【ああ、メン限+α配信→やらかしをカットしてのディレクターズカット動画の流れが染みついて……】
【俺たちへは良いのか……いや、どうせもう何もかもさらけ出して恥じらいなどないもんな……保護者だもんな……保護者相手に恥ずかしがる子供なんていないもんな……】
【草】
【草】
【どうしよう、めっちゃ和んできた】
【奇遇だな……私もだよ】
【これが……これが、保護者の気持ち……!】
【準介護班は常に新人を募集しています 条件を満たしたら介護班への昇格も可能です】
【よし……昇格試験、受けるか……】
【草】
【(こはねちゃんがお電話に夢中だから言うけどさ お姉ちゃんの声とかいろいろ、ぶっちゃけもうロリ声=ボイチェンっていう設定がないなってるよな)】
【(それな)】
【(まぁそれでも安定してるっぽいし)】
【(いざとなれば第二第三のエスコート作戦があるからな!)】
【(安心するよね)】
【(ちょうちょ)】
【(本当に……おい誰だ今の)】
【(脳が……よわよわになる……)】
【(脳のしわが増えて進化してそう)】
【(なにそれすごい)】
【(進化したら環境適応で見かけ上は退化してそう)】
【(かわいくはなるよ?)】
【(草)】
◇
「……まったく、優花も心配性だよなぁ……えっと? どこまで……ああそうだった」
どうやら、ただヒマだっただけらしい優花に付き合わされ、彼女の休み時間をまるまる会話に付き合わされた僕。
「コメント欄の人たち、怒って……ないね。良かった」
なんだか話の流れがわからない感じになってるけども、とりあえず怒っている雰囲気はない。
【おかえり】
【ただいま】
【↑お前は誰なんだよ】
【草】
【雑談が捗ったから、これはこれで】
【とりあえず俺たちの総意としては、こはねちゃんはエターナルロリキャラとしてがんばってほしいってところ】
「どんな流れでそうなった……!? まぁいいや」
こんな平日の昼間に配信なんか見てる人たちだ、優花と同じくヒマなんだろうし。
「えーっと……あ、そうだ。モテたいって相談だったけど……そもそもさっきの人、まだ居るの……?」
【居るよ】
【居るぞ!】
【居るわよ!】
【居ましてよ!】
「うわっ……居た……そして増えてる……まるでじとじとした日にふと見てみたら部屋の隅で動いてる……くぴっ」
僕はお酒を飲む。
やつらは天敵なんだ。
【草】
【悲報・俺たち、G扱い】
【朗報・俺たち、G扱い】
【えぇ……】
【わかる】
【興奮するよね】
【本気でおぞましいものを見る目で怯えられたいんだ】
【えぇ……】
「……思わず気持ち悪かったからって言いすぎたって思ったけど、もういいや……喜んでるんなら……」
うん、まあ、気持ちはわかる。
かわいい声でけなされると……いけないいけない、ぞくぞくしたら危ないんだ。
「……とにかく。僕はさ、『今』は顔が良くとも、それでも学校を中退して引きこもってニート三昧して家族に迷惑掛けて荷物になってゴミになってるような存在なんだぞ? 顔だけが良くったって何の意味もないんだ。そりゃあ、外に出たらプラスには働くけど……出ないなら、何の意味もないよね? 顔なんか、さ。誰にも見られないんだから」
話を強引に戻す。
だって、黒くてかさかさするアレの話題になりそうだったから。
【草】
【それはそう】
【とうとう自分のかわいいを認めたか】
【まぁ表に出ないんなら見た目は関係ないわなぁ】
【TSっ子だから、元の男の子と今の女の子のギャップがあるんだよ】
【そうか】
【なるほど】
【裏切り者、お前……】
【こいつがBANされない不思議】
【こいつ、暴言しかしないのにこはねちゃんが吐かないなんて……】
「そいつは子供だから良いの。吐き気もしないし……ともかく、僕の顔のことは置いといて、だ。……モテたいって言った人。なんでモテたいの?」
【男だからモテたい それじゃダメ?】
「納得しかしない主張だから良いけど……でもさ。冷静になってみようよ。それ、具体的に誰からモテたいの?」
僕は人生で一度も――嘘ついた、ちょっとしかそうは思ったことがない。
それは、今から言うような考えがあるから。
……ちょっとこじらせてるとは思うけどね。
「モテたい。ハーレムしたい――なるほど、それは男の夢だ。ロマンだ。男の本能だ。それには文句つけることもない。ここに居るみんなも同じだと思うけどさ? ……誰にモテたいの? 具体的に居るの? 好きな子とか」
【え】
【いや、特に……】
【かわいい子とおっぱいな子とおっぱいな子へは目が引かれるけど】
【草】
【正直でよろしい】
【かわいいとおっぱいには勝てないよな!】
【男子サイテー】
【仕方ないよ、男だもん】
【男はな、生まれてから死ぬまでおっぱいには敵わないんだ】
【女子だっておっぱいとふとももには負けるからしょうがないね】
「うんうん、男だからね。おっぱいには勝てない。現に優花も大きいせいで、会話する男子の視線が胸元にしか来ないから困るっていつも愚痴ってきて……あ、電話。今度は何?」
【草】
【草】
【こはねちゃん!! 個人情報!!】
【まぁ気持ちはわかる】
【あのおっぱいはなぁ】
【※こはねちゃんをハグしてるとき、こはねちゃんの顔がすっぽり……ふぅ……】
【草】
【あのサイズが良いんだ】
【わかる】
【こはねちゃんのひんぬーもお姉ちゃんのおっぱいも好き 男だもん】
【あの 昼間っから猥談になってるんですけど】
【だってこはねちゃんがそういうの、ある程度OKなんだもん……】
「おこられた……ぐす……くぴ」
電話口の優花は、さっきとは全然違って怒ってた。
「こわかった……ぐす……くぴくぴ……」
とっとっとっ。
酒瓶の中で、気泡が浮かんでいく。
【(OKこのへんでやめておこう)】
【(了解した)】
【(常にこはねちゃんのメンタルを気にする必要がある配信)】
【(まるで子育てだね)】
【(小学生までのな!)】
【(草)】
優花って、怒ると怖いんだ。
男のときならへっちゃらでも、今の僕だとおなかがきゅってなるんだ。
「……ふぅ。なんか落ち込んできたからさっさと終わらせるとさ」
【うわぁぁぁぁ急に戻るなぁ!?】
【草】
【こはねちゃんってテンションの乱高下激しいよね……】
【子供と同じだね 数秒でコロコロ変わるんだ】
【女心よりも不安定で俊敏で手に負えないのが子供の機嫌だぞ】
【ママぁ……】
「……モテたい子相手にモテれば良いだけだから、モテたいんならその子たちについて調べて、その子たちが喜びそうな見た目とか趣味とかをがんばれば良いんじゃないかなって。女の子全員にモテたいとかさ、さっき話したイケメンさんじゃなきゃまず無理だしさ。そもそも正直趣味じゃないけど女子だから振り向かせたいだけの子とか居るだろうけど、そういう子にモテても、ずっと付き合うのは……ねぇ?」
【なるほど】
【確かに】
【思ったよりまともな意見だった】
【普通だけど大切よね】
【女子全員にモテる そら無理だわな】
【思ったり妄想する分には良いんだがな】
「そうそう。モテたいって言っても、それを実行しないと何の意味もないんだ。イケメンさんならともかく、僕たちみたいなのは女の子から言い寄られるだけの……ましてや僕たちが好きって思うレベルの子からすれば道ばたの石ころなんだからさ、石ころなら石ころなりに自分を磨いてみなきゃダメなんじゃないかなって。まずはアピって目に留めてもらわないと。良い感じの雰囲気を醸し出してる、磨かれてすべすべになってて、石ころの中でもちょっとは見所がある石ころだって」
【それはそう】
【めっちゃそう】
【でも石ころ連呼は草】
【草】
【そんなに石ころが好きなの? こはねちゃん】
【(もしかして、こはねちゃんって実はかしこい?)】
【(賢かったよ? ちょっと前までは)】
【(今は?)】
【(かわいいけど?)】
【(草)】
僕は、かつての学生時代を回顧しながら話す。
「男女ってのはさ、やっぱ男からアプローチするもので、女はアプローチを待つものなんだよ。それはどの時代どこの地域でも、僕たちの祖先とかと同じ動物だってそうじゃん? メスはオスより魅力的で、オスはみんな一生懸命にアピール合戦して……勝ったオスだけが。そういう仕組みなの。今の時代は必ずしもアピールに負ける=敗残者じゃないってだけで、すっごく恵まれてる方なの」
例えば僕みたいにね。
男として女にアピールしたこともなくって、モテたこともなくって――最後は男としての本懐を果たす前に男ですらなくなったってので。
「んで、メスもまた本能的に、同じメス同士で人気があるオスになびくし、他のオスに尊敬されてるオスにもなびく。だから、なにもしないでいるとコミュ力とか運動神経とかバイタリティーとか顔とか背丈とか、そういう外から見ても分かるし自慢になる素質を持ってる男しかモテない。少なくとも本能だとそうなるよね」
【悲報・こはねちゃんがガチ】
【これはかしこい成人男性】
【こはねちゃんさんの思考回路って現実的よねぇ】
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【そうなの?】
【っアーカイブ何百】
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【それはちょっと……】
【草】
【それはそう】
【なまじ積み重ねがあるから追うのが大変なんだよなぁ】
【切り抜き師が全力でカット版作成してくれてはいるけど、全然追いつかないんだよなぁ】
「だから、モテたいってだけ思いながら悲しい生活するんじゃなくって、モテるための生活にしてみたら良いんじゃないかなって。見た目をそれっぽくしてさ、トークも今どきはそういう講座とか……ムーチューブでも優しい人が無料でとか、有料でも1回数千円からマンツーマンの指導とかあるしさ。君が今、学生さんなのか社会人なのか僕みたいなプー太郎なのかはともかく、周りに女性は居るだろうし、彼女たちの中で興味がある人が居たら……って、そんな感じ。モテたい人が居たら、その人に向けてアピールしないと、いつまで経ってもモテないままなんじゃないかなってさ」
ぷはっ。
思ったよりも口が回った気がする。
やっぱり得意分野――僕の思ってることを吐き出すだけの独壇場――なら饒舌になれるんだね。
【わかった】
【本当にありがとう】
【誰にモテたい――好かれたいか】
【もう一度、考えてみる】
【\40000】
【えらい】
【感動した】
【これは良い話】
【これで彼女できたらガチで投げ銭分の価値はある】
【言ってるのがよわよわなこはねちゃんだからこそ……ね】
【まぁ準でも介護班な時点で入れ込んでるわけだし】
【推しから十数分も真剣に考えてもらったら嬉しいよなぁ】
【しかも割と本人には届いたらしい話がな】
【ぶわっ】
「うぇ、よんまん……!? そ、そこまで投げなくても……や、嬉しいけど、みんな、自分の懐具合には気をつけてね……? お金は本当に大事だって、1円も稼いでない僕だからこそはっきり言っとくからね……?」
【草】
【草】
【オチで草】
【こはねちゃん?? もう稼いでるでしょ??】
「良いか? ――配信者はね、こうやって幸運にも投げ銭とかメンバーシップとか受け取れるようになってもね? ……やつらは常に何割かを抜いてくるし、抜き取ったのも3ヶ月とか待たせてから渡してくるんだ。つまり現状ではあいかわらず僕はただのニートで、1円どころか1銭も稼いでないって寸法なんだよ」
悲しいね。
でもそれがプラットフォームってのに乗っかってるありんこの宿命だから。
【草】
【かわいそう】
【あー】
【こはねちゃん……ファンボ、お姉ちゃんに頼んだって】
【あっちなら1ヶ月おきに受け取れるとか割が良いとか】
【なるほど】
【限定コンテンツはよ】
【R-18はありますか?】
「無いよバカ。……ふぅ」
ぎしっとも言わないイスさんの背もたれで、ほっとひと息。
……僕は男で、男からおごられたりプレゼントされたり貢がれたりする女子の生態的感覚を持ち合わせていない。
だから……こうやって、感謝されるお返しにお金ってのには……未だに慣れないんだ。
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