TSよわよわVtuberはバズっても外には出ません ~かわいくなったら余計他人が怖くなったんだけど!~

あずももも

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10章 「綾瀬直羽/こはね」

123話 【悲報・こはねちゃん、お外に出たら大ピンチ】

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「うぅ……みんなにけがされた……」

「こはねさん」
「むりやりねじこまれた……」

「こはねちゃんさん!」
「やめてっていったのにやめてくれなかった……」

【草】
【草】
【言い方ぁ!】
【ふぅ……】
【\50000】
【感謝】
【お前ら……】

僕はもうだめだ。

「よってたかってよくぼうのはけぐちになった……」

「……と、当初の予定の3割でおしまいですから!」
「やくそくがちがう……やめてっていったのにやめてくれなかった……」

【草】
【マジで落ち込んでて草】
【もしかして:幼児退行するほど】

【いや、レッサーパンダになれば逆に楽なはず……ここに居るのはレッサーパンダになって現実逃避もできなかった、なまじ精神を保ってしまったばっかりに哀れなこはねちゃんだ……】

【草】
【草】
【それはそう】
【しかしワードのチョイスがムーチューブ的にやばいんだが】

【それほどショックなんだろうなぁ】
【着せ替えが?】
【着せ替えが】
【まぁ本人の精神面は成人男性らしいしなぁ】

僕の前には、たくさんの服。
実にたくさんの服がそろっている。

「これだけあれば次のシーズンまでは持ちますね」
「ほんとはもっとたくさん選びたかったんですけど……」

「また、こはねさんの気が乗ったときに来てもらえば……投げ銭が収入として入ってくれば、それを使って経費としてお着替えさせられますし」

「はぁ……」

げんなり。
僕はすごくげんなりしているんだ。

みんなはきゃっきゃと紙袋の中の服たちをトロフィーのごとくにかざしていても、僕にとってそれは羞恥を強制されるアイテムでしかないんだ。

【おいたわしやこはねちゃん……】
【ちょっと気分が乗ったばかりに……】
【そもそも駐車場の時点で後悔するほどハイな気分は続かなかったか】
【草】

【こはねさんさんのメンタルは完全に俺たち男だしな】
【男が着せ替えされるのは確かに辛い】
【分かる】

【母親とか彼女とか奥さんとかの女性に頼めば自分に似合うものを選んではもらえるんだけど、これでもないあれでもないって数時間立ちっぱで疲れるんだよなぁ】

【分かる】
【分かる】
【しかも最終的に「顔と髪型と体型が悪い」っていちゃもんつけられるしな】
【草】
【どうしようもねぇじゃねぇか草】

【けどそんな存在はママンしか居ない視聴者への配慮を怠らないでください】

【ファッションに興味ないしこはねちゃんの気持ちが分かる女性リスナーへのマナー違反です】

【草】
【こはねちゃん、マナー講師嫌いっつってっただろうが草】
【そういやそうだったわ】
【配慮しつつも正直なのがこはねちゃんの良いところだからね】

「はぁ……」

何度目のため息をついた僕は、通路に居る僕を反射してくる全身鏡を眺める。

――タグを切ったばっかりの服に着られた女の子。

落ち着いたシャツにニットのセーター、長めのスカートにタイツに優花の学校指定のによく似た靴。

首元にはマフラー――じゃなくってもっと薄いやつ――僕は横文字はだめなんだ――を任され、耳たぶを挟むイヤリングをぶら下げさせられ、頭にはまん丸な帽子までと、これでもかと執拗にとめどなく僕を包んでくる小物の数々。

しかも高そうな小さなカバン――小さいのに、どれもなぜか男物のリュックとかより高いんだ――を腰にセットさせられるわ、もこもことした上着まで羽織らされてるわ。

「こはねさん、やはり素材が抜群でしたね……はぁ……」
「生きたお人形さんですねぇ……ふぅ……」

「こういう姿を見ると娘がほしくなりますね……まぁ今の私はまだ仕事とげろげろの方に興味がありますが……」

そんな僕の周りに集まってきて、とろんとした目で見てくる女の子たち。

こういうとき、「ああ、肉体は同じ女性でも脳みそとか魂とかは何もかも別の種族なんだな」って感じるよね。

げっそりしてる僕と対照的に、優花もひより先生も如月先生もつやっつやしてるもん。
僕は今日、3人に生気を吸われたんだ。

【ひよりママの最新絵柄と技法を駆使した立ち絵のお顔へ、リアルタイムで提供されて視聴者投票で決めた服装にアクセを着せたこはねちゃんがマジでかわいい】

【\10000 今回のは女子sの持ち出しって言ってたけど足しにして】
【\5000】
【\7000 ちょっとでも着せ替えを満喫できた代】
【\10000 嫌がるこはねちゃんへ無理やりぐへへってひん剥いて着せられた興奮に】

【草】
【もう投票のときとっくに購入額の倍以上投げただろ! そろそろやめとけ!】
【だって、こういうときしかお金使うことってないし……】
【ぶわっ】

【もっと自分の身なりにお金つかってもろて?】
【整える見た目がないんだ】
【どうせ独り身だし……こはねちゃんがかわいければ、それでいいやって】
【ぶわっ】

僕を囲みながら、きゃいきゃいとはしゃいでいる3人。

「………………………………」

とてつもなく疲れたし男としての尊厳とか破壊されたし……な、お出かけではあったけども。

……普段面倒を見てもらっている分くらいは、お返し、できたかな。

こういうのは恥ずかしいから絶対直接言うことはないけども、せめて行動で示したい――そういう理由もあって、今日は着せ替え人形になったんだ。

まぁとっても疲れたしとっても疲れたしとっても疲れたけども。

「……?」

脱力しきった僕は、ふと「何階か下――3階下で、怒鳴り声が聞こえる」気がして、なんとなくでエスカレーターの先を眺める。

【介護班より緊急入電】

【炎上系配信者多数襲来】
【やつら、メン限配信しながら連携して突撃してきやがった】
【すぐにげて】

「……なんですって!? す、すぐに車へ……」

「いえ、駄目です! 地下の駐車場にも多数確認って……車自体は抑えられていなくても、どこに行っても居るみたいで」
「ど、どうして!? 介護班の人たちがこはねちゃんさんを困らせるはずなんてないのに……!?」

「?」

みんなが慌てている。
なんでだろう……だめだ、服を着せ替えられた代償で頭が働かない。

【何が起きたんだ】
【分からん】
【炎上系?】
【いや、場所分からんだろ】

【今、捕縛もとい穏便に話の付いた末端から話を聞いた  やつら、頭脳派だった  まず、俺たちに裏切り者は居ない  それは安心してくれ】

【!?】
【くわしく】
【報いを受けされるのは後で良いから情報を】
【俺たちから漏れたわけじゃないってことか?】

【そうだ  やつらは複数人でこはねちゃんさんの配信を……ご丁寧にも最初の方から数十人単位で手分けして発言だけ切り抜いて精査して、その日その時刻の天気とか気温の発言とか、窓の外を通った街宣車の声とか、こはねちゃんさんが反応した地震とかからエリアを完全に絞り込んでいた】

【えっ】
【あっ……それ、女性Vがかなりやられてるやつ……】
【そうなの?】
【うん、発言とかから結構住んでる場所が分かるらしい】
【リアル特定はやつらの得意分野だからなぁ】
【配信者だと実写映像に反射で映った窓の外の風景とかで分かるとか】
【ひぇぇ】

【宅配便で分かったり、ときには自分がムーマーイーツで運んで特定したやつも居るらしい  ……まさかこはねちゃんがそのターゲットになるとは】

【ひぇっ】
【こわいよー】
【その執念が怖い】
【アイドル売りしてると、男性配信者の家にもある日突然に視聴者がピンポン来るらしいからなぁ】
【じょばばばば】
【本名どころか本籍地までどうやってか特定したり、ご家族すら……】
【その情熱と技術をもっと有効に……いや、やつらにとってはそれが有効なのか……】

【それで、前々からこはねちゃんを狙っていたらしい  ギャン泣き配信で目をつけてうかがってたらマジ泣き配信で一瞬だけど顔バレしたろ? あのとき配信に居たやつらは介護班のネットワークで即座に特定して介護班にしたが】

【ひぇっ】
【え?】
【草】
【さりげなく言ってるけどそっちもこえーよ!?】
【こ、こはねちゃんのためだから……】
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