絶対守護領域の礫帝 ~人間ごときが魔王軍四天王を名乗るなと追放されました。けど、魔王の娘も他の四天王もこっちについてきちゃったんですが~

龍田たると

文字の大きさ
22 / 47

▼22.三元帥、焦る。

しおりを挟む
「氷魔族が公文書で離反を突き付けてきただと!?」

 三元帥の定例会議にて。
 海魔元帥はその報告を聞くと、思わず席を立って叫んだ。

「おお、その通りよ。アストリアを脅した『誰かさん』のせいでな」

「しかも、魔王軍への離反ではないぞ。送られてきた文書は、我々の命令には従わないが、ロゼッタ個人には忠誠を誓うというものだった。海魔元帥よ、そうなったのもおぬしが安易にアストリアを縛ろうとしたからであろう。この責任、どう取るつもりだ」

 先に報告を受けていた空魔元帥と陸魔元帥が、見下す視線とともに彼を責めた。

 普段なら競争相手の失敗を喜ぶ彼らであるが、二人の声に歓喜の色はない。

 何故なら、これまでの経過をあわせ考えれば、その事実はロゼッタが自分たちに手向かう意思を明確にしたことを意味するからである。

 その文書には以下のようなことも書かれていた。
 『魔王陛下は、彼女を支える四天王たちと協力し、今回のようなことが二度と起きぬよう、中央の腐敗を正していく旨をおっしゃられた』と。

 すなわち、三元帥とロゼッタの対立は、もはやどうあっても避けようがないものとなったのである。

「何故だ……。何故こうなった……!?」

 海魔元帥は席に着くと、焦りの色を浮かべて言った。

「理由を考えても貴様の失態がなくなるわけではなかろう。それより重要なのは、次の一手をどうするかであろうが」

 空魔元帥がそれに悪態をつくと、海魔元帥は「何だと!?」と声を荒げた。

「よさんか、二人とも。今はもう我らがいがみ合っている時ではない。失敗の原因究明、今後の対策、ともに協議して、次の策を考えるべきではないのか」

「う、うむ……」

「確かに……そうではあるが……」

 陸魔元帥の言葉に、残りの二人は渋々ながらも口をつぐんだ。

 陸魔元帥はあごに手をやり、続けて言った。

「私が思うに、そもそもの失敗の始まりは、あの礫帝れきていのクロノを追放したことにあると思う。奴を追い出してから、すべてが狂い始めたような気がしてならんのだ」

「……何だと。ではお前は、あの人間に頭を下げて戻って来てもらえとでもいうのか?」

「そうではない、逆だ。今のうちに、奴の泣き所を押さえるべきだと言っているのだ」

 陸魔元帥はそこでニヤリと笑うと、その意味を説明し始めた。

「つまり、奴の大事なもの──奴が守らざるを得ないものをこちらで確保すべきということだ。奴は惰弱な人間の生まれで、この魔王軍には少数ながらも人間の兵士がいる。そこを突くのだ」

「人間……?」

「要するに……人質か」

「そうだ。とはいえ、別に人間どもを実際に捕える必要はない。『我らに従わねば、王都にいる人間がどうなっても良いのか──』、クロノに一言そう言ってやるだけで、奴は身動きが取れなくなるだろう」

「おぉ、なるほど……。同族を押さえるというのは、なかなかの策ではあるな」

「人間どもは下等種族のくせに、仲間意識だけは強いからな。確かにその手なら、かなりの効果を期待できそうだ」

 さらに陸魔元帥は、『失敗の原因』──クロノのことのみならず、それ以外の『今後の対策』についても言及する。

「現在、王都には最後の四天王、『炎帝』フレイヤが常駐している。だが、今までの四天王のように、フレイヤにロゼッタの奪還を命じることはすべきでない。むしろフレイヤが従おうと従うまいと、その身を王都に縛り付け、他の四天王と分断させるのが得策だろう」

「……そうだな。四天王が全員そろわれては厄介だ」

「うむ。奴らが一つになるというその事実だけでも、周囲への影響力は計り知れんからな。打てる手はすべて打っておくに越したことはない」

 空魔元帥、海魔元帥もうなずき合い、彼らは早速フレイヤに適当な命令を下すことで、その身柄を王都に留めようとする。

 そのためにまずは配下の者をやり、フレイヤを会議室に呼びつけようとしたのだが──

「──失礼いたします、閣下。炎帝様をこちらにお呼びせよとのご命令ですが……。あの、炎帝様は三日前から特殊任務とのことで、王都を発っておられます。当任務は、陸魔元帥直々のご命令とお聞きしておりますが……?」

「何? 何を言っている。私はそんな命令など下していないぞ」

「いえ、ですが」

「……いや、待て。それはどういう任務だ。言ってみろ」

「は。あの、何でも、人間の国にスパイを送り込むとかで……。魔王軍内の人間をすべてフレイヤ様が招集されて、ご一緒に発たれたとのことですが……。まずは準備のために礫帝様の村に寄る必要があり、そちらへ向かわれたとか……」

「……な、何だと……?」

「まさかっ……」

「しっ……しまったぁあっ!」

 彼らはそこで、ようやくフレイヤに先を越されたことに気付く。
 考えた策謀が一足遅かったことを知り、空魔元帥、海魔元帥はその場に固まり──陸魔元帥はひときわ大きな声を上げたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

追放された最強ヒーラーは、美少女令嬢たちとハーレム生活を送る ~公爵令嬢も義妹も幼馴染も俺のことを大好きらしいので一緒の風呂に入ります~

軽井広@北欧美少女 書籍化!
ファンタジー
白魔道師のクリスは、宮廷魔導師団の副団長として、王国の戦争での勝利に貢献してきた。だが、国王の非道な行いに批判的なクリスは、反逆の疑いをかけられ宮廷を追放されてしまう。 そんなクリスに与えられた国からの新たな命令は、逃亡した美少女公爵令嬢を捕らえ、処刑することだった。彼女は敵国との内通を疑われ、王太子との婚約を破棄されていた。だが、無実を訴える公爵令嬢のことを信じ、彼女を助けることに決めるクリス。 クリスは国のためではなく、自分のため、そして自分を頼る少女のために、自らの力を使うことにした。やがて、同じような境遇の少女たちを助け、クリスは彼女たちと暮らすことになる。 一方、クリスのいなくなった王国軍は、隣国との戦争に負けはじめた……。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...