元Sランク冒険者のお爺さんの残した遺品は、物凄い宝の詰まった指輪でした。

第一章 始まりの数々

始まりのとき

10歳を迎えたユウマは、9月から王立学園に入学する為、試験を受ける事になっていた。三男のユウマには、家督を継ぐ権利は無く自分の道を切り開かねばならない。最も冒険者になる事が夢だから、都合が良いのだ。

祖父がなくなり2ケ月が経とうとしていた7 月に王立学園の入学試験がある。卒業と同時に冒険者登録の出来る12歳を迎えるはずだ。

あれから、アイテムボックスに入っていた、開くだけで覚える魔導書（各属性）、ステータスアップドリンク、詠唱破棄の古文書等と相手のステータスに合わせて各ステータス能力が増大するダンジョン産のランクCの鉄の剣で稽古を積み迎えた本番。

メイド長のシルビアの選んだ服に着替え、執事のセバスチャンが馬を用意する。

「みっともない成績を出すなよ。おまえの兄達は、Aクラスに入っているのだから！」

ラインハルトが不機嫌そうにユウマに伝える。今まで祖父に可愛がられてきたユウマが気に入らないのだろう。

「ま～、お前は、家を出ていくのだから適当でも構わぬが伯爵家の名に泥を塗るなよ！」

「畏まりました。」

ユウマは、軽く会釈すると馬車に乗り込む。御者は、セバスチャンが務めるようだ。軽く進んた頃、セバスチャンが切り出す。

「ユウマ様は、ヒョッとしてガロン様の能力を受け継いで要られるのでしょうか？」

「さて、なんの事だ？」

外をぼんやり見ながら、軽く流す。

「ホッホッホッ。いえ、ただの爺の勘でございます。」

然程、離れてない学園には、すぐに着いた。

受験票を渡し、各試験を行っていく。座学=呆れるほど簡単だった。
魔法試験に至っては、的に当てるだけで威力が判る石版に、初級火炎魔法すら完全詠唱で当てる事の出来ない受験生が多い中、中級火炎魔法ファイヤーアローを無詠唱で叩き込み、この試験一番となる500点の威力を出した。剣術では、平民・貴族合わせ200人抜きを果たし1位を決める。最後の総合評価を待たずして入学が決まり首席となった。

「どうだった？」
既に結果を聞き及んでいる、ラインハルトが渋い顔で聞いてくる。

「ご希望通り、名に恥じぬ結果が出たと思います。」

「ふん。いけ好かない野郎だ…。学園に入れば入寮して通え！」

「畏まりました。」

周りを見渡すと、如何にも趣味の悪い壺や絵画の装飾品が増え、母上に至っては、宝石で身を固め、最早歩く鉱石となっている。

部屋に戻り、従魔（テイム）の腕輪と精霊のネックレス、神獣の杖を出し、各代表に相続の挨拶を行う。勿論、部屋に入る大きさで出て来る。

従魔の腕輪からでてきたのは、隻眼の少年だった。名を千年竜王ガイアと名乗りガロンの相棒だったと云う。精霊のネックレスからは炎の大精霊サラマンダーが、神獣の杖からは、フェンリルのルディスが現れた。

「初めての召喚で、こんな事を言うのも申し訳ないが祖父のガロンから受け継ぎ、俺の配下になってもらう」

単刀直入に話すユウマに各代表が異議を唱える。

「ガロンの子孫だろうが俺達を配下に置く事が出来るとでも思っているのか？しっかりと実力を示し課題をクリアした者が適切な契約を結ぶべきである。」

千年竜王ガイヤが抗議したところで、ユウマは溜息をつき魔力の波動を放つ。

各代表が千年竜王ガイアですら驚嘆する程の魔力波動。
「まだ、全開では、無いけど納得してもらえると思う。正直、家を壊したくないし、君達を危険な目に合わせたくない。」
笑顔を向けるユウマに

「「わかりました。取り敢えず魔力を抑えてください。お願いします。」」
3者一斉に嘆願する。

「ガロン様の子孫がこれ程とは…………末恐ろしいな。他の配下には、俺達からよく言い聞かせておきます。新しい主よ！」

神獣のルディスが答えると他の代表も頷く。

「後、卒業までは呼ばない積りで居るけれど、もし、万が一の時は協力を頼むね。」

ユウマは、軽く笑い召喚を解いた。

「少しやり過ぎたかな？」
ステータスを見ながら、詳しくよく読んで見る。
「【魔眼（極）】遺伝なのか？生まれ持っての資質なのか？これがあれば、ある程度は、自力で辿り着けたかもだけど、お祖父様の残してくれた数々のアイテム…。これが無ければ開花も遅かったに違いない。」
目に魔力を集める。周囲を確認しながら更に続けると紅く光る右目。【魔眼（極）】唯一、他人から認識されてしまうがユウマが持つ最高の能力である…。

しばらく軽く微笑みながら紅茶を飲み、身の回りの確認だけで、森の中へと【転移】して行く。日課として慣れた狩りの時間であった。

耐物理・耐魔法・耐汚泥の付与されたコートを羽織り、右目には、片眼鏡の魔力感知・魔物登録･判別機能付レンズをつける。
勿論、お祖父様のアイテムなので殆どの魔獣が登録されている。

「居た居た。ビッグベアーにフォレストウルフか」

獲得職業経験値100倍、昇格必要職業経験値100分の1の指輪を装備して、腰には鉄の剣を挿して目的の場所に移動すると、サンダーボルトを念じる。
薄青い光が一瞬でフォレストウルフ7 匹とビッグベアー2匹を穿く。

ステータス画面には、魔術師レベル12→48の文字が…。

「うん中々！今日は、魔術師を100位上げておこうか。解体は、出来ないからマジックボックスに仕舞っておいて、次を索敵。」

その後、オーク・ゴブリン・アースドラゴン等の魔物を狩り部屋へ戻る。

「お祖父様は、700でSクラスって言っていたな。それも、秘密があると言っていたし大変な苦労をしたんだろう。各国にS級が居ないことを考えると、何らかの条件の元で昇級かな？集めてくれたアイテムで必ずᏚ級に辿り着くだろうけど気を抜かずに行こう」

ピコ！…。

「ん？ステータスアップかな？鑑定！」

【女神の使徒に選ばれました。再度、連絡致しますがご承知おき下さい。】

「えっ？女神の使徒って…確か勇者として邪竜や魔王と戦い、戦乱が起これば平定を行わなければならない使徒？…。」


頭を抱えるユウマ。楽しいはずの冒険者生活が…世界旅行が…

その夜は、何も手につかず窓から星を見つめ9月からの学園生活だけを夢見るのであった。