勇者の処分いたします

はにわ

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キラの去勢

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どこにいても、どこへ行っても、何をしても、何をしようとしても、いつでもどこでも敵意のある視線を浴び、態度をぶつけられる。
そんなことが毎日続いて、耐えられるほどキラは図太くはなかった。

もう王都にはいられない。キラはそう結論を下し、王都を出ることを決意した。

ではどこへ行こうか。どうすればいいだろう。
気を取り直し、これからのことを考えようとしたが、ここでキラは思考を停止させてしまった。

・・・どこへ行けば良いのだろう。 何も思い浮かばない。

・・・どうすればいいのだろう。  何も思い浮かばない。

王都を出るにしても、どこへ行き、何をするつもりでいるのかが何故か全く頭に浮かんでこなかった。

そう、キラはこういった大まかな『目標決め』すら、マリア頼みだったのである。


「そういう事は私が考えるよ」


「ちょっと待って、どうすれば一番いいか考えるわ」


「キラは戦いのことだけに集中して。他のことは私がやるわ」


そう、戦い以外の全てにキラはマリアに依存していた。そして、これまでそれが全てうまくいっていたので、であると疑問にも思わなかった。
故に、をキラは考えたことがなかった。

これからは全部自分で考えなければならない。
目的地も、そこで何を中心に頑張るのかも。情報収集などを円滑にするため、勇者認定に一歩でも近づくための人脈作りの仕方も何もかも一から考えなければならない。

マリアのときのようにうまくできるのか?失敗はしないか?
自分の決断は間違っていないか?本当にこれで合っているのか?


キラは何もかもを手探りでやらなければならない状況に置かれたことに、言いようのない漠然とした恐怖が自分に襲い掛かってくるのを感じた。
それはまるでこれまで見えていたはずの目が曇り出し、聞こえていた音が聞きとりづらくなったような感覚だった。

不安だ・・・
心細い・・・


嫌だ・・・
自分ではできない・・・



これまでマリアの深い献身にどっぷり浸かってしまっていたキラには、もうマリア無しではろくに動けないようになってしまっていた。
マリアの長年に渡るドロドロの愛情は、既にキラを冒険者として去勢してしまっていたのだ。
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