勇者の処分いたします

はにわ

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魅了スキル その1

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ラバース国王家直属王室調査室。その職務は多岐に渡る。多岐に渡り過ぎて「城内のなんでも屋」という皮肉さえ出始めるレベルである。




「・・・ということなのです。私は魅了状態になっていただけなのです」


王室調査室に属するシンの本日の職務内容は「魅了スキル被害者相談」である。
他者に魅了スキルをかけられたことによって惑わされ、婚約者とは別の女性を好いてしまい暴走した挙句、婚約破棄になり自身は社会的地位を失ってしまったという伯爵令息からの相談であった。

本来ならばこのような案件はまずは弁護士に相談してほしいと言いたいところなのだが、ここで「魅了スキル」の被害者というのがポイントになってくる。「魅了スキル」による事件というのは法的にも取り扱いが難しく、現状のラバース国の法律では弁護士に出来ることがほとんどない。そこである程度力を持つ貴族は王家や高位貴族の力を借りてトラブル相手との仲介を依頼してくるのだが、そこでたらい回しにされる先が王室調査室・・・通称王調であった。
で、王調とてこのような案件、出来る事などあろうはずもない。なにしろ魅了スキル案件に対しては法整備が進んでいないのだ。弁護士が匙を投げるなら、王調にだって出来る仕事などあるはずもない。
あえて言うなら、話を聞き、そして事実を突きつけ、納得してもらうことだけが出来ることである。

まぁそれが中々難しいのだが。


「なるほど、状況はわかりました。それで、貴方様としてはどういったことをお望みでしょうか?」


ひとしきり話終えた伯爵令息に対しシンは問う。


「私と婚約者との復縁を取り持ってもらいたいのです。私は魅了状態に陥っていたと、正気ではなかったと、それを証言してなんとか王家のほうから復縁を持ち掛けるようにしていただきたい」


力強くそう言う令息の言葉を聞いて、シンは内心溜め息をつきたいのを堪える。
やっぱりこうなるか、これから不毛な時間が始まるのだ・・・シンはこれから起こることに予想がつくだけに口が重くなる。


「残念ながら、王家としても、国家としてもお力になれることがありません」


だが、それでも言わねばならないのがシンの職務である。


「魅了されたからといって、不貞やそれに準ずる行為によって引き起こされた婚約破棄や賠償金の免責にはなりません。裁判になればまぁいくらか事情を汲んでくれる場合もある可能性もありますが、まぁ大きく結果が変わったという事例はありません」


「え?だって、私は自我が無かったようなものなんだ。操られていたんだ。正気じゃなかった。それなのに私が悪いのか?」


「はい、そういうことです」


「それじゃあ、魅了にかかったら問答無用で人生が終わるってことじゃないか。私は悪くないのに誰も私を守ってくれない。いくらなんでも理不尽じゃないか!」


「そうです。おっしゃる通りです」


淡々というシンに対し、伯爵令息の顔が怒りで歪みだした。
それを見てシンはドッと体が重くなった。これから面倒くさくなるぞ・・・今日は厄日だと運命を呪ったのであった。
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