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私の愛は狂暴です 7
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人工が多く、面積も大きい帝都では聖神教会の支部が複数存在する。
そして、その支部一つ一つも大変大きな規模を誇る。世界で一番の強国であるドレーク帝国においても、聖神教会の影響力が極めて大きいことの証であった。
レウスが治め、シュウとフローラが属する第5支部もそうだ。敷地は広く、教徒も多いために、端から端まで支部全てを把握している者は少ない。
シュウが先輩修道女から度が過ぎた虐めを受けていると知ったのも、その規模故だった。属する部が使えば顔を会わせることすらないので仕方が無かった。
シュウとフローラは全然違う場所に離れた者同士だったのである。
シュウとの初対面以来フローラは、時間さえあればそんな離れた所にいるシュウを訊訪ねた。
「シュウ様!私、クッキーを焼いたのです。一緒に食べませんか?」
理由は何でも良かった。
フローラにはシュウの元に通う理由が他にもあったが、それ以外にも何かにつけ理由をつけ、彼女はとにかくシュウの元に通い詰めた。
「ありがとうございます。では、いただくとしましょう」
シュウもそんなフローラを決して邪険にすることなく、いつでも笑顔で迎え入れた。
フローラにとって初めて気を許せる相手となったシュウに、彼女はどんどん傾倒していく。
「それではついでですフローラ。今日も少しばかりやりましょう」
「はい!」
そしてフローラは、時間があるときにはシュウに回復魔法を教わっていた。
教会では聖魔法の素質ある者は、将来聖魔法を使っての御勤めをしてもらうということもあり、半強制的に回復魔法について勉強させられることになる。だからわざわざシュウに習わなくても良いのだが、従来ならば消せないとされる傷跡を消してみせた彼の回復魔法は教師達のそれよりも群を抜いて上質であることがわかっていたし、何よりシュウと関われるまたとない機会なのでフローラが頼み込んだのだ。
シュウの教育法はフローラが教わっている教師のそれとは全然違っていた。
「・・・」
目を閉じて、少しばかり間を置くと、フローラの手から白い光が浮かび上がる。
光はやがてこぶし大ほどの球体に形作られ、ふわふわとフローラの手の上で浮遊した。
この光の球体は聖魔法の『素』である。
『治療』『防壁』果ては『攻撃』など様々な目的に合わせて、この『素』を形や性質を変化させるのが聖魔法だ。
「出せましたか。ではそれを半分ほどに絞り込んでください」
シュウが言うと、フローラは僅かに表情を強張らせながら言う通りに『素』の球体をゆっくりとだが、シュウの言った通り半分程度に縮めて行く。
たったこれだけのことだが、微細なコントロールが必要な技であった。コントロールが乱れれば球体は形を崩し、あっと言う間に四散して姿を散らしてしまうのだ。
ちなみに小さくなっても『素』の量は変わっていない。半分の大きさまで『凝縮』するのだ。当然、小さくすればするほどそれだけ難しいコントロールが必要となる。
これがシュウがフローラに課している回復魔法の鍛錬法の一つだ。
フローラが教会から教わっており、世間一般に広まっている回復魔法は極端に言うと単純に癒しの属性を持たせた聖魔法を駄々流しにして大雑把に患部に当てて傷を癒すものだ。
これに対して『素』を正確にコントールすることで無駄な魔力の消耗を防ぐとともに、例えば治療ならば患部を効率的に回復させるよう点当たりに的を絞って魔法をかけるように出来るようにする・・・これがシュウ流の回復魔法である。
これによって、シュウは魔力が少ないながらも無駄のない精度の高い回復魔法を使うことが出来ている。フローラの傷跡を治すことが出来たのも、このシュウ流回復魔法が極めて上質であるが故であった。
「上達しましたね。では、今度はそれの半分で」
顔を強張らせるフローラとは対照的に、シュウは満足そうに笑みを浮かべながらそう言った。
あっさり言ってのけているが、シュウの出した課題は中々に厳しいものであった。
『素』を半分に縮めるには、それまでの倍以上の集中力を必要とする。
「はい」
フローラはそう返事をし、さらに集中する。
「・・・っ」
冷や汗を流し、肩を震わせながら集中するフローラ。
それをニコニコと楽しそうに見ているシュウ。傍目には何かしら虐めを行っているようにも見えるような光景だった。
「ほぉ・・・」
シュウが元より細い目を更に細めて、感嘆の声を上げる。
フローラは苦しい表情を浮かべながらも、シュウが注文した通りの小ささにまで『素』の球体を調整してみせたのだ。
「あっ・・・」
そこで気が抜けてしまったのか、フローラが展開していた聖魔法の『素』はそこで散り散りなり消え去った。
だがシュウは嬉しそうに声を弾ませて言った。
「素晴らしい。まさかここまで出来るようになっているとは思いませんでした」
汗だくの顔で唖然とするフローラの頭に、シュウが手を伸ばして優しく撫でる。
フローラは目を細めてされるがままになっていた。
フローラはシュウに聖魔法の制御の訓練法を教わってからというもの、時間さえあれば訓練に明け暮れるようになっていた。全てはシュウに認められるために、である。
日々の鍛錬のお陰もあって、フローラはシュウが想定するよりもずっと速い上達を見せていた。
フローラはシュウに褒められたくて、回復魔法の腕をみるみると上達させていった。
そして、その支部一つ一つも大変大きな規模を誇る。世界で一番の強国であるドレーク帝国においても、聖神教会の影響力が極めて大きいことの証であった。
レウスが治め、シュウとフローラが属する第5支部もそうだ。敷地は広く、教徒も多いために、端から端まで支部全てを把握している者は少ない。
シュウが先輩修道女から度が過ぎた虐めを受けていると知ったのも、その規模故だった。属する部が使えば顔を会わせることすらないので仕方が無かった。
シュウとフローラは全然違う場所に離れた者同士だったのである。
シュウとの初対面以来フローラは、時間さえあればそんな離れた所にいるシュウを訊訪ねた。
「シュウ様!私、クッキーを焼いたのです。一緒に食べませんか?」
理由は何でも良かった。
フローラにはシュウの元に通う理由が他にもあったが、それ以外にも何かにつけ理由をつけ、彼女はとにかくシュウの元に通い詰めた。
「ありがとうございます。では、いただくとしましょう」
シュウもそんなフローラを決して邪険にすることなく、いつでも笑顔で迎え入れた。
フローラにとって初めて気を許せる相手となったシュウに、彼女はどんどん傾倒していく。
「それではついでですフローラ。今日も少しばかりやりましょう」
「はい!」
そしてフローラは、時間があるときにはシュウに回復魔法を教わっていた。
教会では聖魔法の素質ある者は、将来聖魔法を使っての御勤めをしてもらうということもあり、半強制的に回復魔法について勉強させられることになる。だからわざわざシュウに習わなくても良いのだが、従来ならば消せないとされる傷跡を消してみせた彼の回復魔法は教師達のそれよりも群を抜いて上質であることがわかっていたし、何よりシュウと関われるまたとない機会なのでフローラが頼み込んだのだ。
シュウの教育法はフローラが教わっている教師のそれとは全然違っていた。
「・・・」
目を閉じて、少しばかり間を置くと、フローラの手から白い光が浮かび上がる。
光はやがてこぶし大ほどの球体に形作られ、ふわふわとフローラの手の上で浮遊した。
この光の球体は聖魔法の『素』である。
『治療』『防壁』果ては『攻撃』など様々な目的に合わせて、この『素』を形や性質を変化させるのが聖魔法だ。
「出せましたか。ではそれを半分ほどに絞り込んでください」
シュウが言うと、フローラは僅かに表情を強張らせながら言う通りに『素』の球体をゆっくりとだが、シュウの言った通り半分程度に縮めて行く。
たったこれだけのことだが、微細なコントロールが必要な技であった。コントロールが乱れれば球体は形を崩し、あっと言う間に四散して姿を散らしてしまうのだ。
ちなみに小さくなっても『素』の量は変わっていない。半分の大きさまで『凝縮』するのだ。当然、小さくすればするほどそれだけ難しいコントロールが必要となる。
これがシュウがフローラに課している回復魔法の鍛錬法の一つだ。
フローラが教会から教わっており、世間一般に広まっている回復魔法は極端に言うと単純に癒しの属性を持たせた聖魔法を駄々流しにして大雑把に患部に当てて傷を癒すものだ。
これに対して『素』を正確にコントールすることで無駄な魔力の消耗を防ぐとともに、例えば治療ならば患部を効率的に回復させるよう点当たりに的を絞って魔法をかけるように出来るようにする・・・これがシュウ流の回復魔法である。
これによって、シュウは魔力が少ないながらも無駄のない精度の高い回復魔法を使うことが出来ている。フローラの傷跡を治すことが出来たのも、このシュウ流回復魔法が極めて上質であるが故であった。
「上達しましたね。では、今度はそれの半分で」
顔を強張らせるフローラとは対照的に、シュウは満足そうに笑みを浮かべながらそう言った。
あっさり言ってのけているが、シュウの出した課題は中々に厳しいものであった。
『素』を半分に縮めるには、それまでの倍以上の集中力を必要とする。
「はい」
フローラはそう返事をし、さらに集中する。
「・・・っ」
冷や汗を流し、肩を震わせながら集中するフローラ。
それをニコニコと楽しそうに見ているシュウ。傍目には何かしら虐めを行っているようにも見えるような光景だった。
「ほぉ・・・」
シュウが元より細い目を更に細めて、感嘆の声を上げる。
フローラは苦しい表情を浮かべながらも、シュウが注文した通りの小ささにまで『素』の球体を調整してみせたのだ。
「あっ・・・」
そこで気が抜けてしまったのか、フローラが展開していた聖魔法の『素』はそこで散り散りなり消え去った。
だがシュウは嬉しそうに声を弾ませて言った。
「素晴らしい。まさかここまで出来るようになっているとは思いませんでした」
汗だくの顔で唖然とするフローラの頭に、シュウが手を伸ばして優しく撫でる。
フローラは目を細めてされるがままになっていた。
フローラはシュウに聖魔法の制御の訓練法を教わってからというもの、時間さえあれば訓練に明け暮れるようになっていた。全てはシュウに認められるために、である。
日々の鍛錬のお陰もあって、フローラはシュウが想定するよりもずっと速い上達を見せていた。
フローラはシュウに褒められたくて、回復魔法の腕をみるみると上達させていった。
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