追放の破戒僧は女難から逃げられない

はにわ

文字の大きさ
70 / 503

私の愛は狂暴です 7

しおりを挟む
人工が多く、面積も大きい帝都では聖神教会の支部が複数存在する。
そして、その支部一つ一つも大変大きな規模を誇る。世界で一番の強国であるドレーク帝国においても、聖神教会の影響力が極めて大きいことの証であった。

レウスが治め、シュウとフローラが属する第5支部もそうだ。敷地は広く、教徒も多いために、端から端まで支部全てを把握している者は少ない。
シュウが先輩修道女から度が過ぎた虐めを受けていると知ったのも、その規模故だった。属する部が使えば顔を会わせることすらないので仕方が無かった。
シュウとフローラは全然違う場所に離れた者同士だったのである。

シュウとの初対面以来フローラは、時間さえあればそんな離れた所にいるシュウを訊訪ねた。


「シュウ様!私、クッキーを焼いたのです。一緒に食べませんか?」


理由は何でも良かった。
フローラにはシュウの元に通う理由が他にもあったが、それ以外にも何かにつけ理由をつけ、彼女はとにかくシュウの元に通い詰めた。


「ありがとうございます。では、いただくとしましょう」


シュウもそんなフローラを決して邪険にすることなく、いつでも笑顔で迎え入れた。
フローラにとって初めて気を許せる相手となったシュウに、彼女はどんどん傾倒していく。


「それではついでですフローラ。今日も少しばかり


「はい!」


そしてフローラは、時間があるときにはシュウに回復魔法を教わっていた。

教会では聖魔法の素質ある者は、将来聖魔法を使っての御勤めをしてもらうということもあり、半強制的に回復魔法について勉強させられることになる。だからわざわざシュウに習わなくても良いのだが、従来ならば消せないとされる傷跡を消してみせた彼の回復魔法は教師達のそれよりも群を抜いて上質であることがわかっていたし、何よりシュウと関われるまたとない機会なのでフローラが頼み込んだのだ。

シュウの教育法はフローラが教わっている教師のそれとは全然違っていた。


「・・・」


目を閉じて、少しばかり間を置くと、フローラの手から白い光が浮かび上がる。
光はやがてこぶし大ほどの球体に形作られ、ふわふわとフローラの手の上で浮遊した。
この光の球体は聖魔法の『素』である。
『治療』『防壁』果ては『攻撃』など様々な目的に合わせて、この『素』を形や性質を変化させるのが聖魔法だ。


「出せましたか。ではそれを半分ほどに絞り込んでください」


シュウが言うと、フローラは僅かに表情を強張らせながら言う通りに『素』の球体をゆっくりとだが、シュウの言った通り半分程度に縮めて行く。
たったこれだけのことだが、微細なコントロールが必要な技であった。コントロールが乱れれば球体は形を崩し、あっと言う間に四散して姿を散らしてしまうのだ。

ちなみに小さくなっても『素』の量は変わっていない。半分の大きさまで『凝縮』するのだ。当然、小さくすればするほどそれだけ難しいコントロールが必要となる。
これがシュウがフローラに課している回復魔法の鍛錬法の一つだ。

フローラが教会から教わっており、世間一般に広まっている回復魔法は極端に言うと単純に癒しの属性を持たせた聖魔法を駄々流しにして大雑把に患部に当てて傷を癒すものだ。

これに対して『素』を正確にコントールすることで無駄な魔力の消耗を防ぐとともに、例えば治療ならば患部を効率的に回復させるよう点当たりに的を絞って魔法をかけるように出来るようにする・・・これがシュウ流の回復魔法である。

これによって、シュウは魔力が少ないながらも無駄のない精度の高い回復魔法を使うことが出来ている。フローラの傷跡を治すことが出来たのも、このシュウ流回復魔法が極めて上質であるが故であった。


「上達しましたね。では、今度はそれの半分で」


顔を強張らせるフローラとは対照的に、シュウは満足そうに笑みを浮かべながらそう言った。
あっさり言ってのけているが、シュウの出した課題は中々に厳しいものであった。
『素』を半分に縮めるには、それまでの倍以上の集中力を必要とする。


「はい」


フローラはそう返事をし、さらに集中する。


「・・・っ」


冷や汗を流し、肩を震わせながら集中するフローラ。
それをニコニコと楽しそうに見ているシュウ。傍目には何かしら虐めを行っているようにも見えるような光景だった。


「ほぉ・・・」


シュウが元より細い目を更に細めて、感嘆の声を上げる。
フローラは苦しい表情を浮かべながらも、シュウが注文した通りの小ささにまで『素』の球体を調整してみせたのだ。


「あっ・・・」


そこで気が抜けてしまったのか、フローラが展開していた聖魔法の『素』はそこで散り散りなり消え去った。
だがシュウは嬉しそうに声を弾ませて言った。


「素晴らしい。まさかここまで出来るようになっているとは思いませんでした」


汗だくの顔で唖然とするフローラの頭に、シュウが手を伸ばして優しく撫でる。
フローラは目を細めてされるがままになっていた。
フローラはシュウに聖魔法の制御の訓練法を教わってからというもの、時間さえあれば訓練に明け暮れるようになっていた。全てはシュウに認められるために、である。
日々の鍛錬のお陰もあって、フローラはシュウが想定するよりもずっと速い上達を見せていた。

フローラはシュウに褒められたくて、回復魔法の腕をみるみると上達させていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...