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追跡者達 ルドルフ2

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「あっはっはっはっは・・・レウス司教、私は貴方を見直しましたよ。まさかこのようなユーモアセンスをお持ちであったとは」


ルドルフはそう言って高らかに笑う。
割れた眼鏡はそのままに、ただただ笑い続けるルドルフを周囲は顔を強張らせて眺めていた。ルドルフは笑ってはいるが、本当に心から笑っているわけではないことを知っているからである。
それはレウスとて同じであった。


「ど、どうやら何やら手違いがありましたようで!も、申し訳ございません!!」


レウスは顔面を蒼白にして平身低頭謝った。

皇族であるルドルフは帝国において絶大な権力を持つ。
この度招待した者の中でもとびきりのVIPだが、そのルドルフを怒らせてしまった事実にレウスは生きた心地がしなかった。


「フフフッ、いやなに・・・これはこれで楽しませてもらってるよ」


ルドルフは腕を組みながら、影像をジッと眺める。


「・・・あの?」


影像に食い入るようにしているルドルフのことを、レウスを含めた全員が怪訝な目を向ける。
少し間をおいて、ルドルフはジャッカルの方を向き口を開いた。


「元聖女達の居所は、実際のところ今はまだわかっていないと・・・そういうことになるね?」


ジャッカルは少し言葉を詰まらせながら答える。


「・・・そういうことになります。ですが、それほど遠くに離れてはおりませんでしょうから、すぐさまこれから捜査して見つけ出すことは難しくないかと」


苦し紛れに取り繕うようにジャッカルは言ったが、このとき既に言われるまでもなく『光と影』の面々はシュウ達の捜索を行っていた。だが「村を含め、近場にいる気配はない」という報告は既に上がっていたのである。故にジャッカルの言ったことはただの強がりであったが、『光と影』に属する彼とてルドルフの怒りを買うことは危険なことであることを理解していたため、どうにか宥められないかと思考を張り巡らせてつい口からそのように出てしまっていた。

実際はシュウ達はたまたま通りがかった商人の馬車に相乗りさせてもらうことが出来、村からいくらか距離を稼いでおり、『光と影』にすぐに見つかるような状況ではなかった。
ホワイトキングの居所を掴めていたことで、シュウ達を既に捕捉して仕切れていると慢心した結果、『光と影』は後手に回ることになってしまったのだ。


「いやいや、流石元聖女・・・簡単に報復をさせてすらくれぬか・・・」


ルドルフはジャッカルの言葉を聞きながらも、何やらクックッと小さく笑うのみだ。
それを見ている周囲はいよいよ怪訝な顔をする。


「いやぁ、流石だ。ますますそそられるねぇ・・・」


「え?」


唐突のルドルフの言葉に、レウスは思わず素っ頓狂な声を洩らす。
思いっきり呆れたような声になってしまって「まずい」とレウスは思ったが、ルドルフは気にしている様子はない。


「あの美しいフローラの悲しみと絶望に歪む表情が見て見たかった・・・が、やはり簡単にそれが叶ってはそれはそれでつまらないというものだね」


「はぁ・・・」


「願いはやはりたっぷり焦らされてから叶うほうがいい。そのほうが喜びもまたひとしおだろうから。それが今回のことでよくわかった。感謝しているよ。レウス司教」


「は、はぁ・・・それはどうも」


恍惚な表情でそう言うルドルフに、レウスはただドン引きするしかなかった。ルドルフの怒りを買わなかったようなのでそこだけは胸を撫でおろしたが。
サディストでありマゾヒスト・・・表の顔とは裏腹に、ディープな変態であるルドルフは、この後、自身の足でフローラの後を追うことを決めた。


「人の手を使うよりも、やはり自分で成し遂げたい。そのほうが成し遂げたときの快感も増すだろうし、失敗したらしたでまた焦らされる興奮も大きなものになるだろうから」


割れた眼鏡のまま涼しい顔でそう言ってのける皇子が衝撃的過ぎたこともあってか、この日レウスが犯した失態は招待客の面々の間でも有耶無耶になった。

こうして『光の戦士達』、『光と影』に次いで、変態皇子ルドルフがシュウ達の追跡に加わることにより、自体は波乱の模様を呈することになったのである。
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