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41.-させてください!
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怜は泣きそうな顔で俺を見下ろしている。
「な、なんで泣いてんの!?」
「だっ、て……。」
思わず頭を撫でかけた手を、引っ込めてしまった。怜はそれに気がついたのか、瞳からぽろぽろと涙をこぼした。
「あ、れ、怜……」
「っだ、乃希っ……なんで、撫でて、くれないんだよ……っ。」
「な、撫でてくれないんだよって、そんな……だって、彼女が居るじゃんか。」
「し、知らないよ、んなのっ……別に、そんくらい、いいじゃん……!」
怜に泣かれるとは思わなくて、俺は慌てて抱きしめてしまった。あったかくて、胸がいっぱいになった。
「……怜、俺は、どうしたらいいか分かんないんだよ。……怜もいのりも、同じくらい大事にできる気がしないんだ。いのりを大切にしたら、怜は疎かになりそうだし、怜を重視すれば、いのりは疎かになってしまいそうなんだ。」
「……僕は、紗華も乃希も、一生懸命に愛す。」
あ、愛すって……。
「……紗華と、キスとかしたことない。」
うん……?
「……キスってどんな?」
「うーん……?」
「……どんなかなぁ……。」
なんだよ、それ。
「……怜は、ちゃんと恋人しなかったこと後悔してんの?」
「してる。」
そ、即答……。
「……よし。」
怜は俺から離れた。
「仲直りしよ。」
「ん。」
「ごめんね、乃希。」
「うん……ごめん。」
もうなんで喧嘩してたのかも、よく分からなくなってしまった。怜は携帯を取り出して、何かを始めた。
「……紗華、まだ起きてるかな。」
「なんで?」
「……うーん。」
彼女と話したくなったのかな。なんで、ズキッてしてしまうんだろう。まだ、諦めきれていないのかなぁ……怜のことは、本当に好きだったんだなぁ。
「あ、もしもし?ごめん、こんな時間に。」
怜は急に電話を始めた。相手は多分、瑞木さん。声のトーンで分かる。やけに優しい声色で話す。俺には厳しいこと言うくせに。
「うん、ね。あ、それでさ……あの、すごく、最悪なお願いさせてほしい。……一旦、浮気させてください!」
……は!?どうしたどうした!?
「あの、その……乃希と。」
……うん!?
「うん、あの、あと25時間だけでいいから。うん……うん、そう……うん、うん……ごめんね。」
電話を切る。
「ぇ……あの、う、浮気すんの?」
「うん。小鳥遊さんには断っとかなくていい?まぁ多分、紗華が言ってくれるけど。」
……紗華って呼んでんだよな。
「……いいよそんな、浮気なんて。」
「ううん、僕がしたい。ちゃんと、けじめつける。明日が終わるまでに、心が満たされるまで乃希と一緒に居て、もうこんな事ないようにしたい。もう誰も傷つけたくない。紗華も乃希も、嫌な気持ちになんないようにしたい。」
ため息が出た。こんな綺麗な心は一体どうやったら生まれるんだろう。怜は俺を抱きしめた。
「……乃希離れなんて、多分できないよ。一生できない。でも、紗華の彼氏である以上、僕は紗華のことを幸せにしないといけないし、もちろん幸せにしたいんだ。僕の笑顔が素敵で好きだって言ってくれて、優しくて、温かくて、頼りになって、紗華のことが好きなんだ。……でもさぁ、長くずっと、乃希と居たから、乃希は好きだし、一緒に居たらホッとする。離れようとするから、不安になるんだ。明日は、一日中、一緒に居よ。それで、もう寂しくないように。これからは、お互いが一番大事な"友達"になれるように。今日は浮気する。紗華が許してくれたから。」
やけに優しい声色で、怜はそう語った。そうなんだ。俺たちは、俺たちが恋愛対象なわけではない。でも、一緒に居るのが当たり前で、一緒に居ると安心できるから、一緒に居たいと思う。それはつまり、お互いのことが大好きだってことなんだ。家族みたいなものなんだよな。
「……怜、いい匂いする。」
「そ?風呂上がりだからね。」
「……雨に濡れちゃったね。」
「うん。でも、もう乾きそう。」
怜は俺の頭を撫でた。
「……乃希は可愛いね。」
「ご、お……そ、それはさすがに照れる。」
「今は浮気中だから、言う。」
「……そ、そうですか。」
「乃希は?普段思ってること。」
「き、綺麗な顔だなこのやろー!」
怜から離れて、肩をぽかぽかする。
「顔しか褒めないじゃんね。」
「顔は普段褒めないじゃん。」
「たしかにね~。乃希、今日は泊まりなよ。」
「うん。」
「あ、明日はデートとかは無い?」
「無い。」
「嘘だろ」
「なんでだよ」
「……忘れてんの?」
「な、何が?」
「いや……忘れてんならいいけど。」
……?何がだ?俺たちは歯磨きをするために洗面所に向かった。今日は父さんと母さんは、ばあちゃん家に行っていて居ないし、俺がどこで寝ようが構わない。怜の家族は、俺がいるもんだからちょっぴりびっくりしていた。そういえば、風の音は気にならなかった。怜と居るって大事だ。
To be continued…
「な、なんで泣いてんの!?」
「だっ、て……。」
思わず頭を撫でかけた手を、引っ込めてしまった。怜はそれに気がついたのか、瞳からぽろぽろと涙をこぼした。
「あ、れ、怜……」
「っだ、乃希っ……なんで、撫でて、くれないんだよ……っ。」
「な、撫でてくれないんだよって、そんな……だって、彼女が居るじゃんか。」
「し、知らないよ、んなのっ……別に、そんくらい、いいじゃん……!」
怜に泣かれるとは思わなくて、俺は慌てて抱きしめてしまった。あったかくて、胸がいっぱいになった。
「……怜、俺は、どうしたらいいか分かんないんだよ。……怜もいのりも、同じくらい大事にできる気がしないんだ。いのりを大切にしたら、怜は疎かになりそうだし、怜を重視すれば、いのりは疎かになってしまいそうなんだ。」
「……僕は、紗華も乃希も、一生懸命に愛す。」
あ、愛すって……。
「……紗華と、キスとかしたことない。」
うん……?
「……キスってどんな?」
「うーん……?」
「……どんなかなぁ……。」
なんだよ、それ。
「……怜は、ちゃんと恋人しなかったこと後悔してんの?」
「してる。」
そ、即答……。
「……よし。」
怜は俺から離れた。
「仲直りしよ。」
「ん。」
「ごめんね、乃希。」
「うん……ごめん。」
もうなんで喧嘩してたのかも、よく分からなくなってしまった。怜は携帯を取り出して、何かを始めた。
「……紗華、まだ起きてるかな。」
「なんで?」
「……うーん。」
彼女と話したくなったのかな。なんで、ズキッてしてしまうんだろう。まだ、諦めきれていないのかなぁ……怜のことは、本当に好きだったんだなぁ。
「あ、もしもし?ごめん、こんな時間に。」
怜は急に電話を始めた。相手は多分、瑞木さん。声のトーンで分かる。やけに優しい声色で話す。俺には厳しいこと言うくせに。
「うん、ね。あ、それでさ……あの、すごく、最悪なお願いさせてほしい。……一旦、浮気させてください!」
……は!?どうしたどうした!?
「あの、その……乃希と。」
……うん!?
「うん、あの、あと25時間だけでいいから。うん……うん、そう……うん、うん……ごめんね。」
電話を切る。
「ぇ……あの、う、浮気すんの?」
「うん。小鳥遊さんには断っとかなくていい?まぁ多分、紗華が言ってくれるけど。」
……紗華って呼んでんだよな。
「……いいよそんな、浮気なんて。」
「ううん、僕がしたい。ちゃんと、けじめつける。明日が終わるまでに、心が満たされるまで乃希と一緒に居て、もうこんな事ないようにしたい。もう誰も傷つけたくない。紗華も乃希も、嫌な気持ちになんないようにしたい。」
ため息が出た。こんな綺麗な心は一体どうやったら生まれるんだろう。怜は俺を抱きしめた。
「……乃希離れなんて、多分できないよ。一生できない。でも、紗華の彼氏である以上、僕は紗華のことを幸せにしないといけないし、もちろん幸せにしたいんだ。僕の笑顔が素敵で好きだって言ってくれて、優しくて、温かくて、頼りになって、紗華のことが好きなんだ。……でもさぁ、長くずっと、乃希と居たから、乃希は好きだし、一緒に居たらホッとする。離れようとするから、不安になるんだ。明日は、一日中、一緒に居よ。それで、もう寂しくないように。これからは、お互いが一番大事な"友達"になれるように。今日は浮気する。紗華が許してくれたから。」
やけに優しい声色で、怜はそう語った。そうなんだ。俺たちは、俺たちが恋愛対象なわけではない。でも、一緒に居るのが当たり前で、一緒に居ると安心できるから、一緒に居たいと思う。それはつまり、お互いのことが大好きだってことなんだ。家族みたいなものなんだよな。
「……怜、いい匂いする。」
「そ?風呂上がりだからね。」
「……雨に濡れちゃったね。」
「うん。でも、もう乾きそう。」
怜は俺の頭を撫でた。
「……乃希は可愛いね。」
「ご、お……そ、それはさすがに照れる。」
「今は浮気中だから、言う。」
「……そ、そうですか。」
「乃希は?普段思ってること。」
「き、綺麗な顔だなこのやろー!」
怜から離れて、肩をぽかぽかする。
「顔しか褒めないじゃんね。」
「顔は普段褒めないじゃん。」
「たしかにね~。乃希、今日は泊まりなよ。」
「うん。」
「あ、明日はデートとかは無い?」
「無い。」
「嘘だろ」
「なんでだよ」
「……忘れてんの?」
「な、何が?」
「いや……忘れてんならいいけど。」
……?何がだ?俺たちは歯磨きをするために洗面所に向かった。今日は父さんと母さんは、ばあちゃん家に行っていて居ないし、俺がどこで寝ようが構わない。怜の家族は、俺がいるもんだからちょっぴりびっくりしていた。そういえば、風の音は気にならなかった。怜と居るって大事だ。
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